ウィーン劇場 El Juez

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    Theater an der Wien 2016年7月2日 19時〜22時

    EL JUEZ - LOS NIÑNOS PERDIDOS
    Der Richter - die verlorenen Kinder

    Oper in vier Akten (2014)
    Musik von Christian Kolonovits
    Libretto von Angelika Messner

    指揮 David Giménez
    演出 Emilio Sagi
    舞台 Daniel Bianco
    衣装 Pepa Ojanguren
    照明 Eduardo Bravo

    Federico Ribas : José Carreras
    Alberto García : Josê Luis Sola
    Paula : Sabina Puértolas
    Dr. Felix Morales : Carlo Colombara
    Äbtissin : Ana Ibarra
    Maria : Maria José Suárez
    Zweite Nonne : Itziar de Unda
    Paco : Manel Esteve
    Eine alte Frau : Milagros Martin
    Vier Männer : Julian Henao Gonzales, Thomas David Birch
    Ben Conner, Stefan Cerny
    Erste/zweite/alte Frauen : Birgit Völker, Generose Sehr, Katja Scheibenpflug
    Alter Mann : Marcell Attila Krokovay
    Ein Kind : Lana Matic

    ORF Radio-Symphonieorchester Wien
    Arnold Schoenberg Chor

    一世を風靡したスター・テノール
    ホセ・カレーラスも、今年で69歳。

    3大テノールとして名を馳せたもう1人の
    プラシド・ドミンゴはバリトンに変わったとは言え
    75歳でまだ歌ってるし

    この年代の人たちは強い・・・

    ウィーン劇場とカレーラスで
    最後にオペラの役をウィーン劇場で歌いたいという
    カレーラスの要望があったそうで
    (と劇場支配人は言っていた)

    オーストリア、ブルゲンラント出身の作曲家
    クリスティアン・コロノヴィッツと
    オーストリア、ブルゲンラント出身のリブレティストの
    アンゲリカ・メスナーが
    カレーラスのために作曲したオペラの上演となった。

    ただ、この作品、初演ではなくて
    既にビルバオとかで上演されているらしい。
    (プログラムの何処かに書いてあったのに見つからない(汗))

    比較的早くこのプロダクションを見つけたので
    貧民席だが(それでも50ユーロ近い!!!)何とかチケット確保。
    ウィーン中にホセ・カレーラスの顔だけのポスターが
    貼られる前だったので、気がついてラッキーだった。

    さて、ここから先は
    ホセ・カレーラスのファンの方は
    どうぞお引き取り下さいませ(本気)

    いや、往年の輝きと甘い声の片鱗は伺わせるし
    69歳で、あれだけ歌えるというのは凄いし
    姿も美しいし、イケメンだし

    で、これ以上は
    カレーラス・ファンの方にお引き取り願ってから・・・(笑)

    音楽は面白い。
    かなり賑やかで、現代音楽というよりは
    時々ミュージカルのパクリになっているし

    アリア(ラブソング)は甘くて美しく
    さすがに映画音楽作曲出身の人で
    聴かせどころをしっかりと掴んでいる。

    オーケストレーションがかなり厚くて
    最初は辟易したけれど
    カレーラス出てくるところは抑えるだろ、と思っていたら
    その通りで、ちょっと笑ってしまった。

    さて、お話は、フランコ独裁政権の頃にあった
    子供をさらって売り買いする話で
    主人公のシンガー・ソング・ライターは
    母の死に際に、実は兄が居たという事を知らされる。

    裁判官のフェデリコは
    両親が子供の誘拐に拘っていたレジスタンスで殺されて
    修道院で育ったと思い込んでいるので
    教会にある攫われた子供のファイルを秘密にする書類に
    秘密警察からサインをしろ、と言われてサインしてしまう。

    ところがどっこい
    実は、この裁判官がシンガー・ソング・ライターの兄で
    それがわかる寸前に
    シンガー・ソング・ライターは銃弾を喰らって
    死ぬ直前に兄である事を知らされる。

    ・・・なんか、かなりご都合主義(笑)
    まぁ、そういうのがオペラ独特のリアリティなんだろうたぶん。

    シンガー・ソング・ライターのアルベルト役はテノール。
    声はかなり細くて高い。
    高音もしっかり出る(後半はかなり疲れが目立ったが)
    対する恋人役のジャーナリスト、パウラのソプラノも声量がある。

    ウィーン劇場って、それ程大きくないし
    ギャラリーの貧民席は一番音響が良いのでラッキー ♡

    秘密警察の悪役モラーレス役のバスも美声でなかなか良い。
    ウィーン劇場って、本当に良い歌手を集めるなぁ。

    さて、次のシーンでホセ・カレーラス登場。
    オーケストラの音量が突然小さくなって
    カレーラスの声をしっかり聴かせるように構築されている。

    さすがにもう声量は衰えてはいるものの
    一部のフォルテでは、かなりしっかり出ていたし
    声量のなさを逆手に取ったピアニッシモもちゃんと出ていて
    アルベルト役のテノールよりも
    声はずっと甘い美声だった。

    さすが腐っても鯛・・・っとっとっと失言しました。

    ただ、全体を見て思ったのだが
    ホセ・カレーラスって、やっぱり古い世代のスターで
    歌う時に、大昔のオペラ歌手そのままに
    演技無視で、手を広げて歌うんですよね。

    今や声量あって美声でも演技力がなければ
    オペラの舞台には上がって来ないので
    カレーラスの舞台上での演技(もどき)を見ると
    ああ、昔はこれでも良かったのか、と感慨深い。

    ノーブルなお顔立ちで
    今でも充分に魅力的なのだが
    顔にもほとんど表情ないし。

    スタイルは良いので立っているだけで絵にはなるのだが
    さすがにお歳を召して、最後は歩くのもしんどそうだった。

    でもこの作品の中で
    最も印象的で素晴らしかったのは
    修道院長である(断言)

    攫った子供のフェデリコを愛情を持って育て
    更に、子供を育てるという楽しみは
    神さまが自分に与えてくれた最大の幸福だった、という
    叫ぶような告白が真に迫っている。

    非常に強いメゾ・ソプラノで
    声量だけではなく、強靭な声で
    意志の強い修道院長の悲しみを余すところなく伝えて来て
    いや、この歌手、スゴイです。

    ナヨナヨしたフェデリコや
    甲高い声のシンガー・ソング・ライターよりも
    舞台上で、とんでもない存在感を放っていた。

    アルベルト役のテノールは
    後半になると、かなり高い音域での絶叫風が多くて
    それでも、張りのある声で頑張っていたが
    さすがにあの音域になると、声のニュアンスは出難いな。

    最後は銃弾に倒れたアルベルトを
    パウラが抱いて
    例の「死ぬ前のラブソング延々」というのをやるのだが

    兄のフェデリコは、その間、隣に木偶の坊のように突っ立っていて
    え〜い、早いところ兄だ、と告白せんかいっ!

    離れたところから、ラブソングの後に
    やっぱり木偶の坊で立ったまま
    僕がお兄さんだよ、と告白すると

    ああ、これで天国の母親に報告できる・・・と
    アルベルトが目を見開いて、ガックリ死んで

    兄のフェデリコが
    記録は公開されなければならないとか
    ごにょごにょ言って

    修道院長が強い声で
    こういう事は繰り返されてはなりません!!!

    と叫んだところで幕が閉じていれば
    ドラマチックな幕切れになっただろうに

    その後、主役級の歌手たちが
    何重唱かで
    (この時はカレーラスも一緒に歌っていたが
     やっぱりオーケストラが大きい中で
     他の歌手と一緒に歌うと、全然声は聴こえて来ない)
    何だか延々と、こういう事は繰り返してはならない云々歌って

    それで終わりかと思ったら
    その後に、またもやオーケストラが
    長い長いフレーズをずっと演奏していて

    やっと幕・・・

    ううう、最後が長かったよ。

    まぁ、ホセ・カレーラスの花道という意味でのオペラだから
    69歳で、あれだけ歌ってくれれば
    文句は付けようがないだろうし
    歌手も揃っていたから
    そこそこ面白い仕上がりにはなっていて楽しめた。

    秘密警察の部下の4人の男性のうち
    1人の深いバスに聞き覚えがある、と思ったら
    フォルクス・オーパーでよく歌っている
    私の大好きなステファン・チェルニーだった(笑)

    さすがに2回聴く気はないし
    第一、ウィーン劇場のチケットは高いので
    これにて、2016年前半のコンサート、オペラ、バレエは終わり。

    さて、7月は本当に書く事がないかも・・・と
    焦っている私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



    Im Puls Tanz には行く予定なのだが
    今年はちょっとチケット確保が出遅れているので
    焦っている・・・けど、いくつかの演目は絶対に行くつもり!!!






    ウィーン劇場 ヴァインベルク「女旅客」

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      Theater an der Wien 2016年5月20日 19時30分〜22時30分

      Die Passagierin
      Oper in zwei Akten, acht Bildern und einem Eiplog
      von Mieczław Weinberg
      Libretto von Alexander Medwedew
      nach dem Roman “Die Passagierin” von Zafia Posmysz

      指揮 Christoph Gedschold
      演出 Anselm Weber
      舞台 Katja Haß
      衣装 Bettina Walter
      照明 Olaf Winter
      ビデオ Bibi Abel
      ドラマツルギー Norbert Abels
      振付 Alan Barnes

      Lisa : Tanja Ariane Baumgartner
      Walter : Peter Marsh
      Marta : Sara Jakubiak
      Tadeusz : Brian Mulligan
      Katja : Anne Ryberg
      Krystina : Maria Pantiukhova
      Vlasta : Jenny Carlstedt
      Hannah : Judita Nagyová
      Yvette : Nora Friedrichs
      Bronka : Joanna Krasuska-Motulewicz
      Alte : Barbara Zechmeister
      Erster SS-Mann : Dietrich Volle
      Zweiter SS-Mann : Magunús Baldvinsson
      Dritter SS-Mann : Hans-Jürgen Lazar
      Steward : Michael McCown
      Passagier : Thomas Faulkner
      Oberaufseherin : Margit Neubauer
      Kapo : Friederike Schreiber

      Orchster : Frankfurter Opern- und Museumsorchester
      Chor : Chor der Oper Frankfurt
      Statisten : Statisterie der Oper Frankfurt

      かなり前に観劇したものだが
      色々な理由で本日、やっと感想が書けたのでアップ。

      フランクフルト歌劇場の公演「女旅客」
      ウィーン芸術週間の一環で、ウィーン劇場で上演。

      実は前の日にちょっとワイン飲み過ぎて
      あまり良い体調でなかったのは認める。
      でもって、オペラ3時間、しかも
      ほとんどが女声というのもちょっとキツイ。

      話はズレるが
      ワインに関しては
      やっと長年憧れ続けた?「神の雫」全44巻
      新品で入手に成功して読み出したものの

      なんかこのコミックで使われているワインに関する表現が謎で・・・

      前の日に飲んだ2005年のピノ・ノワールを
      このコミック風に表現しようとすると

      深い森を歩む白いネグリジェを来た乙女。
      (身長170センチ、体重45キロくらい)
      秋の枯れ葉の上を静かに踏みながら歩いていくと
      おお、そこには曇り空の下に
      美しく流れる澄んだ小川。
      小川のほとりの小石に佇めば
      そこに現れるキュートなカマキリが乙女にすり寄う。

      ・・・って、全然美味しくなさそうなワインじゃん!!!(才能ゼロ)
      (で、この「神の雫」というコミックは
       ワインの表現が、全部、こういう感じなの。
       しかも、飲む度に、おおお、とか、あああ、とか言うし(笑))

      ワインのアロマとかタンニン分とか
      古いか新しいか、出来たシーズンは暑かったか寒かったか
      その位はわかるけれど
      景色なんか見えないぞ・・・というのは
      ワインの専門家の彼氏モドキの、即就寝前の一言である。

      こほん、それはそれとして

      このオペラ、題材が重い・・・
      アウシュビッツ強制収容所の話である。

      アウシュヴィッツ強制収容所で監視人として仕事をしていた
      ナチの女性が
      新婚旅行で乗った船で
      アウシュヴィッツにいたユダヤ人のマルタに似た女性を見かけて

      そこから過去の記憶と
      現在が微妙に入り交じって
      アウシュヴィッツでの愛の物語が語られる。

      アウシュヴィッツで監視人をしていた頃の記憶に振り回されて
      新婚旅行でありながら、ご主人との仲がどんどんおかしくなっていく話と
      回転舞台を巧く利用して
      過去と現在が行き来する演出。

      ヴァインベルクの音楽が素晴らしい。
      トナールなのだが
      ジャズやエンターテイメント音楽の要素も入り
      現代音楽の要素も入って
      夢か現実かの間を行ったり来たりするのだが
      言葉のニュアンスと、ぴったり合った音楽作りで
      ともかく、音楽は素晴らしい。

      歌手はセリフが入ったり
      ドイツ語やポーランド語や英語が入り交じるのだが
      マルタを歌ったソプラノが素晴らしかった。

      ただ、素晴らし過ぎて
      途中で、故郷の民謡とか歌うのに
      声がワーグナー張りになっていて
      おいおいおい、強制収容所で衰弱しているのに
      そのワーグナーの声はちょっと・・・

      強制収容所内のシーンも船のシーンも
      俳優さんやコーラスを適度に動かしてはいるものの
      これ、演出するの、ものすごく難しいわ。
      動きのあるようなシーンが出て来ないのだ。
      (ナチが出たり入ったりはするけれど)

      タデウスとマルタの
      逆境における愛が力強く語られると同時に
      監視人だったリザが、タデウスに便宜を計ってやろうとして
      拒否されて傷つくシーンもあるのだけれど

      う〜ん・・・こういう扱いって難しいわ。
      タデウスは、これは何かの罠だろうと先読みしてしまうし
      リザは、自分が厚意でやってやろうとしている事を拒否されて
      それが理解できなくて、勝手に自己嫌悪に陥っているし。

      でも、立場から考えると
      タデウスが拒否したのも当たり前だし
      リザが傷ついたのもよくわかる。

      それだけ、信頼と言うものが全くなくなった世界での
      それぞれの立場での行いだけに
      こういうシーンを、どうやって噛み砕けば良いのか困惑する。

      リザが途中で
      「だって、私は良きドイツ人として
       自分の義務を果たしただけなのよ」と叫ぶシーンがある。

      うううううう(悩)

      実はオーストリアのマウトハウゼン強制収容所などに行って
      いつも思うのだが
      平和な世界にあって
      自分はどんな状況にあっても正しい事ができる、と
      断言できる人はスゴイなぁ、と思ってしまうわけで

      私自身が、万が一、犠牲者の位置ではなく
      あの時代にナチの一員にならざるを得なかったら
      やっぱり義務を果たすというか
      いや、もっと能率的に云々、キャリア・アップをどうしたら良いかとか
      人道的な考えとか、平和主義とかって
      ある程度残酷な事をしない限り
      自分の命が危ないと思ったら
      やっぱり、自分は保身に走るだろう・・・というのが
      はっきり見えてしまう訳で

      その意味で、強制収容所跡を見学した時に
      初めて、キリスト教の主の祈りの
      「私を試みにあわせず」の意味がわかったような次第。

      犠牲者の立ち位置から、過去を振り返るのは
      自分たちは犠牲者よ、ほら、同情しなさい、と
      まぁ、簡単に言っちゃえば、それで世間は許すから楽なのだが

      加害者になった、あるいは自分の保身のために
      加害者にならざるを得なかった、普通の人間って
      そこから一生、罪の意識を持ちつつ
      すみません、ごめんなさい、ごめんなさい、と
      自己の肯定を一切せずに人生を送る、と言うのが正しいのか
      かと言って、それがイヤだから、と
      変な自己正当化をするのも、何だか違うし・・・

      人に罪の意識を与えてコントロールしようとする人間は
      実は何人か周囲に居るので
      その犠牲にならないようにする事に
      かなりの力を費やして来たから
      (そこまで悪い事をして来たのか、と言われると
       言葉もないんですけどね(笑))

      こういうストーリーを提示されると
      実はかなりへこむのだ、ワタシは。

      過去と決別する事はできない訳で
      歴史に、そういう時代があったという事実は
      冷静に受け止めなければならないし

      外国人や移民や難民をスケープ・ゴートにして
      楽して金が稼げないのは
      外国人のせいだ、と単純に考えるのは
      アホとしか言いようがないのだけれど

      でも、スケープ・ゴートの考え方は
      実は最も楽な逃げ道なのだ。
      だって、自分は悪くないんだもん。
      努力もせず、教育も受けず
      それで、社会が悪い、政治家が悪い
      外国人が悪い、難民が悪い、と言っていれば
      単純に自己正当化ができるんだから
      こんなに楽な事はない。

      それが、当時はユダヤ人や
      社会に溶け込めない人たちへの迫害に通じてしまった訳で・・・

      いや、確かに、外国人の流入で犯罪率が高くなったとか
      色々とあるのだろうが
      犯罪を犯すのは、別に外国人だけじゃないですから。

      もっとも、この間のニュースで
      外国人の受刑者のすごい数を聞いて
      いや、悪いけど、そういう人たち、本国に返して
      我々の税金で生活の面倒を見なくても・・・とか思ったのは事実。
      (ちなみに、その「本国」は既に戦争地帯ではなくなっている)

      バランスの問題だとは思う。
      外国人が外国人のゲットーを作ってしまい
      住んでいる国の文化への理解を全く示そうとしないケースも
      多々あるのは確かだし

      時々は、どっちもどっちだよなぁ、とか思う事もあるのだけれど
      本国人だって
      健康なのに失業保険やら生活保護やらを山ほど受けて
      私より数倍、贅沢な暮らしをしている人も結構居るわけで
      でも、本当に困窮した状態で
      生活保護がないと暮らして行けない人もいるので

      オーストリアの政治について
      外国国籍の私が何か言える訳でもないですし・・・
      (日本の選挙にはちゃんと投票しております、念の為)

      いやちょっと音楽とかけ離れたテーマになってしまって
      ごめんなさい。
      (実は今、ヴァルトフィアテルで買って来た
       グリューナー・フェルトリーナー飲んでいて
       これが、また美味いのである。
       若いワインだから、果実臭も豊かで、蜂蜜や草のニュアンスが強くて
       グリップが効いていて、酸味と糖分のバランスが絶妙で
       後味が長くて、ミネラル分がしっかり効いたフルボディの厚みあるワイン。
       ・・・でも「神の雫」みたいな、景色は見えて来ません(笑))

      音楽的には素晴らしい作品なので
      これ、演出とか要らないから
      音楽だけでコンサート形式で聴いてみたい。

      今回はオペラとして上演されたけれど
      音楽的な味わいをもっと深めるのであれば
      視覚的な要素は取り払って
      音楽だけで聴いてみたら
      もっと妄想の世界に浸れるのではないかと・・・

      多少酔っ払って来たし
      簡単に考えると
      あぁ、あのナチの時代に生きていなくて良かった・・・と
      つくづく自分の幸運に感謝してしまう私に
      どうぞ1クリックをお恵み下さい。



      真剣に向き合わねばならないテーマだとは思ってはいるが
      正義の味方を気取るだけの自信はないので
      ついつい、考え込んでしまって結論が出ないんです(悩)


      カプリッチオ ウィーン劇場 3回目

      0
        Theater an der Wien 2016年4月29日 19時〜21時30分

        CAPRICCIO
        Konversationsstück für Musik in einem Aufzug (1942)
        Musik von Richard Strauss
        Libretto von Stefan Zweig, Joseph Gregor, Richard Strauss,
        Clemens Krauss, Hans Swarowsky

        指揮 Bertrand de Billy
        演出 Tatjana Gürbaca
        舞台 Henrik Ahr
        衣装Barbara Drosihn
        照明 Stefan Bolliger
        ドラマツルギー Bettina Auer

        伯爵令嬢 Maria Bengtsson
        伯爵 Andrè Shuen
        フラマン Daniel Behle
        オリヴィエ Daniel Schmutzhard
        ラ・ロッシュ Lars Woldt
        クレロン Tanja Ariane Baumgartner
        ムシュー・トープ Erik Årman
        イタリアの女性歌手 Elena Galitskaya
        イタリアの男性歌手 Jörg Schneider
        侍従 Christoph Seidl
        ダンサー Agnes Guk
        召使い Angelo Pollak, Max von Lütgendorff, Thomas David Birch
        Juan Sebastián Acosta, Marcell Attila Krokovay, Richard Helm
        Florian Köfler, Stefan Dolinar
        音楽家 バイオリン Rémy Ballott, チェロ Jörgen Fog
        チェンバロ Johannes Maria Bogner
        オーケストラ Wiener Symphoniker

        リヒャルト・シュトラウスが
        ナチでとんでもない愛国主義者のユダヤ人殺しの
        極悪人で
        カプリッチオはその思想の最たるもの

        ・・・という彼氏モドキの激しい主張を聞いて
        ついでに、今回の演出家も同じような事を思ったらしく
        第三帝国だのナチだの戦争だのの中に
        このカプリッチオの世界を描こうとしたらしい。

        ワタクシ的には
        どこが偏った愛国主義者のナチなのか
        どうもよくわからんので
        舞台が見えない席に陣取って
        ほとんど頭の中に入っているけれど
        もう一度、台詞をじっくりと噛み締めながら聴いてみた。

        今日は始まる前に
        またもや劇場支配人がマイクを持って
        誰だかがアレルギーだか何かで声が出ないけれど
        最善を尽くします、というスピーチがあったのだが

        この間も同じスピーチがあった
        メゾソプラノのクレロン役なのか
        他の人なのかわからず

        でも、ラロッシュ役の声が
        あまり出て来ない上に、かなり不安定な部分があったのだが
        (声の色がコロコロ変わるのである)
        今日はロジェより天井桟敷で音響が良いので
        もしかしたら、聴こえ方が違うだけなのかもしれない。

        さて、その台詞をじっくり聴いてみれば
        ラロッシュのモノローグが、きっと問題なのであろう。

        でも、ラロッシュのモノローグ
        至極真っ当な事を言ってると思うんだけどなぁ。

        昔の良い作品を守り、新しい作品を待つ
        どこに民衆の心に響き、民衆の魂を表現するような
        新しい作品があるのだ?
        神で作ったような英雄ではなく
        我々に似た、同じ言葉を話し
        その悩みや歓びを我々が感じるような
        そういう人間を舞台で活躍させたい
        (省略入りの意訳。文責なし)

        ・・・って、どこがナチですか?
        民衆とか、「同じ言葉」とか言うのがいけないのかなぁ。

        しかし、同じ言葉を話し、と言うのがダメなら
        モーツァルトの「魔笛」やら「後宮からの脱走」もダメじゃん(極論)

        この劇場支配人のラロッシュという奴
        見事に俗物で
        ウケる作品を狙っていて
        自我自賛も、まぁ、見事にスゴイし
        なのに、言う事はむちゃくちゃ偉そうなので
        よく聞けば、矛盾したパーソナリティ。

        その徹底的な功利主義に
        言う事は、理想主義っぽい仮面を被っているので
        かなりの曲者とは思うけれど
        だからと言ってナチとは別に思わないが
        深読みすれば、そういう第三帝国バンザイになるのかもしれない。

        それ以外の登場人物と言えば
        2人の男性から熱烈な告白を受けて迷っている
        優柔不断の貴族のお嬢さまと
        女漁り(しかも有名人限定)に精を出すそのお兄ちゃんと
        単純な詩人に作曲家
        加えて、庶民代表の召使いに、至極冷静な執事。
        忘れ去られたプロンプターで
        ラロッシュ以外に、何か問題があるようには思えない。

        ・・・私もかなり毒されてるな。
        これからまだリヒャルト・シュトラウスの
        英雄の生涯を演奏するコンサート2回も行く予定なのに。

        舞台観ずに音楽と台詞だけに集中して
        ロジェの奥(音響は悪い)ではなく
        比較的音響がマシな天井桟敷に陣取っていると

        やっぱりマドレーヌ役のソプラノが、抜群 ♡
        最後のモノローグも
        ロジェで聴いている時は
        ピアニッシモがあまり聴こえて来なかったのだが
        天井桟敷で聴くと
        細く澄んだソプラノで聴こえて来て

        最後のソネットなんて
        あまりの美しさに卒倒するかと思った。

        フラマン役のテノールは
        多少平板に聴こえて来る事はあっても
        高い声まで安定して出していたし
        ドイツ語のクリアさも素晴らしい。

        オリヴィエのバリトンも良いんだけど
        ちょっと華がないというか
        個性が際立たないのは、歌手のせいか、演出のせいなのか。

        貴族のお兄ちゃんのバリトンが
        中立的で、あんな変な演出にも拘らず
        確かにコイツ、言葉だけが好きな冷たいタイプか、と
        かなり納得できる出来映え。

        イタリア歌手2人も良かった。
        ちゃんとイタリア・オペラになっていて
        声もベルカントですごく良く出ていた。

        歌手とオーケストラに関しては
        言う事がない位に素晴らしい出来なんですよ、これ。

        特に歌手に関しては
        国立オペラ座でルネ・フレミングの
        ヘタクソなドイツ語に辟易していたので
        今回のマドレーヌ役の素晴らしさには
        聴くたびに圧倒されて
        ハート・マークが百個くらい
        私の頭の上に飛び交っている。

        演出家や彼氏モドキが
        どういう解釈するかは
        それぞれの好みなのでどうでも良いし

        リヒャルト・シュトラウスが極悪人であろうが
        やっぱりカプリッチオという作品
        どうしても好き ♡ という
        懲りない私に
        どうぞ1クリックをお恵み下さい。



        最後の上演が5月3日にあるけれど
        この日は別の予定が入っているので行けません・・・


        カプリッチオ ウィーン劇場 2回目

        0
          Theater an der Wien 2016年4月23日 19時〜21時30分

          CAPRICCIO
          Konversationsstück für Musik in einem Aufzug (1942)
          Musik von Richard Strauss
          Libretto von Stefan Zweig, Joseph Gregor, Richard Strauss,
          Clemens Krauss, Hans Swarowsky

          指揮 Bertrand de Billy
          演出 Tatjana Gürbaca
          舞台 Henrik Ahr
          衣装Barbara Drosihn
          照明 Stefan Bolliger
          ドラマツルギー Bettina Auer

          伯爵令嬢 Maria Bengtsson
          伯爵 Andrè Shuen
          フラマン Daniel Behle
          オリヴィエ Daniel Schmutzhard
          ラ・ロッシュ Lars Woldt
          クレロン Tanja Ariane Baumgartner
          ムシュー・トープ Erik Årman
          イタリアの女性歌手 Elena Galitskaya
          イタリアの男性歌手 Jörg Schneider
          侍従 Christoph Seidl
          ダンサー Agnes Guk
          召使い Angelo Pollak, Max von Lütgendorff, Thomas David Birch
          Juan Sebastián Acosta, Marcell Attila Krokovay, Richard Helm
          Florian Köfler, Stefan Dolinar
          音楽家 バイオリン Rémy Ballott, チェロ Jörgen Fog
          チェンバロ Johannes Maria Bogner
          オーケストラ Wiener Symphoniker

          ウィーン劇場、演出最悪のカプリッチオ2回目。

          ウィーン劇場のチケットは高い。
          ・・・というより
          キャパシティの問題もあって
          安い席がないという方が正しい。
          (国立オペラ座だってチケットは高いが
           キャパシティがあるから、むちゃ安い席もある。
           ただし舞台は見えないが(笑))

          カプリッチオがこんな演出だと知らなかったので
          1回目も2回目も
          ちょっとだけ舞台が見える46ユーロの席。

          本日はオーケストラのすぐ横。
          照明器具があって
          舞台全体は見えず、左がかなり欠ける代わりに
          オーケストラ・ピットは全部見えるし
          指揮者のベルトラン・ド・ビリーもしっかり見える。

          舞台見えなくてラッキーとか思うって
          私の経験だと
          フォルクス・オーパーでの
          ダルベールの「低地」くらいか。
          (舞台が工場の中で、みんな給食のオバサンみたいな
           白い帽子被って出てきて、音楽が美しいだけに舞台最悪だった)

          今回もかなり酷い。
          戦争をテーマにしたとか
          人物が血だらけとか
          その位はまだ許すけれど

          セリフと動きが合ってないって
          どういう事?
          マドレーヌが、みんなに別れを告げる時も
          当該の人物と演技上、何もコンタクトがないというのは
          あまりに不自然過ぎて、全然意味わかんないんですけどっ。
          (一応、ちょっとだけ舞台は見えてしまうので・・・)

          さて、舞台も演出も完全に無視して
          できるだけオーケストラと指揮者を見て
          舞台は、歌手が前の方に出て来た時だけ視線を向けて
          演出の意味とかを考えるのは止めて

          ついでに国立オペラ座の
          あの美しいロココ趣味の舞台装置を頭の中に描いて
          (何せしつこく12回観たから、よく覚えてる(笑))
          ただ、あれを思い出すと
          ルネ・フレミングのヘタクソなドイツ語まで
          思い出してしまうのが難点だが(汗)

          いや、そうやって聴くと
          今回のウィーン劇場のカプリッチオの
          音楽的な出来は、むちゃくちゃ良い ♡

          新聞評でも、マドレーヌ役のマリア・ベングトソンは
          エリザベート・シュヴァルツコップフや
          グンドラ・ヤノヴィッツと並ぶマドレーヌ役であると
          手放しで賞賛していたが

          このスエーデンのソプラニスト
          2002年までフォルクス・オーパーで歌い
          その後、ベルリンのコーミッシェ・オーパーで歌って
          ウィーン劇場のヘンデルのメサイアでも歌っていた。
          (ヘンデルのメサイア、何回か行ったから聴いてるはず)

          実に強靭で滑らかな美声で
          ドイツ語もはっきり美しく発音されていて
          あのソプラノ苛めのマドレーヌ役を
          あれだけ美しい声と
          しかも時々、むちゃチャーミングでオキャンな娘になるし
          (だって、考えてみれば、苦労のない貴族のお嬢である)
          最後のモノローグの美しさと言ったら

          ・・・ピアニッシモ、すごくキレイなんだけど
          もう少しだけ音量上げてくれると嬉しいな(好みの問題)

          ラロッシュのラルス・ヴォルトは
          堂々たる声量に加えて
          ドイツ語のキレの良さが、もう素晴らしいの一言。

          それも、ちゃんと歌う声に合わせて
          ドイツ語の発音を構築しているので
          ドイツ・リートなんかでの扱いとはまた違っていて
          オペラの中でのドイツ語のクリアな発音というのは
          こういうものなのか、と脱帽するばかり。

          そのクリアなドイツ語で
          すごい声量で歌われるラロッシュのモノローグの迫力たるや
          イタリアのソプラノじゃなくても
          聴いてる方が涙が出てくる。
          (Mach keine Szene ! とか怒鳴られるのはワタシか(笑))

          この人、オペラ座のバラの騎士でオックスとか歌ってるし
          このカプリッチオでも、ラロッシュ歌わせれば良かったのに。
          バンクルとかより、ずっと合ってると思うぞ。
          (来年はカプリッチオはオペラ座のレパートリーに入っていない(涙))

          今回は舞台の上手に近かったので
          例の8重唱の時の
          笑っちゃうイタリアのソプラノとテノールのやり取りも
          しっかり聴こえて来たし
          (「ガエターノ、このトルテ、むちゃ美味しいわ」と言う
           他の人物が、ラロッシュを笑い飛ばしている部分で
           全く本筋に関係ない2人のセリフが可笑しいのだ)

          笑いの8重唱の前の
          ラロッシュが必死にオペラの筋を説明しようとしているところに
          何だそのアホな筋は、と
          他の人物たちがラロッシュを邪魔して喋らせないようにして
          その後の、カルタゴの筋を話そうとした後の
          怒りの8重唱に入るところも

          ああああ、ラロッシュってかわいそう。
          あれやられたら
          そりゃ、キレるわ。
          その後の、あの長大なモノローグに繋がるのが
          ものすごく納得できる。

          みんなが去った後のシーンの
          ムッシュ・トープが何か偉そうなのが
          ちょっとビックリするけど。

          普通は、情けない声のテノールが歌う役なのだが
          山高帽のブランドの背広に身を包んで
          侍従の方が圧倒されてるし
          全然「地下の住人」の弱さがなくて、堂々としていて
          まぁ、でも、自分の扱いが悪い、と文句垂れて
          侍従が、上の人なんて、みんなそうですよって
          身につまされるなぁ(笑)

          しかし、聴けば聴く程
          何てインテリなオペラなんだ(驚嘆)

          中学校の頃からひたすら聴きまくって
          私は、これでドイツ語を学びました(ウソ)
          というくらい、ひたすら聴いたオペラなのだが

          クレメンス・クラウス天才 ♡
          (いや、あの人は指揮者であってリブレティストじゃないんだけど)
          各所に皮肉や苦い味も効かせて
          内輪ネタも入って
          (みんなでオペラを、という時のアリアドネとダフネが笑える)

          ウィーン劇場のチケット高いから
          全部の公演はカバーできないけれど
          あともう1回聴きに行けるのが
          ものすごく幸せな私に
          どうぞ1クリックをお恵み下さい。



          あ、今日はオーケストラも良かった ♡
          この間のようなズレも見事になおっていたし
          最初の弦楽室内合奏も素晴らしかったし
          月夜のホルンも良い出来でした。うっふっふ。

          「カプリッチオ」ウィーン劇場1回目

          0
            Theater an der Wien 2016年4月21日 19時〜21時30分

            CAPRICCIO
            Konversationsstück für Musik in einem Aufzug (1942)
            Musik von Richard Strauss
            Libretto von Stefan Zweig, Joseph Gregor, Richard Strauss,
            Clemens Krauss, Hans Swarowsky

            指揮 Bertrand de Billy
            演出 Tatjana Gürbaca
            舞台 Henrik Ahr
            衣装Barbara Drosihn
            照明 Stefan Bolliger
            ドラマツルギー Bettina Auer

            伯爵令嬢 Maria Bengtsson
            伯爵 Andrè Shuen
            フラマン Daniel Behle
            オリヴィエ Daniel Schmutzhard
            ラ・ロッシュ Lars Woldt
            クレロン Tanja Ariane Baumgartner
            ムシュー・トープ Erik Årman
            イタリアの女性歌手 Elena Galitskaya
            イタリアの男性歌手 Jörg Schneider
            侍従 Christoph Seidl
            ダンサー Agnes Guk
            召使い Angelo Pollak, Max von Lütgendorff, Thomas David Birch
            Juan Sebastián Acosta, Marcell Attila Krokovay, Richard Helm
            Florian Köfler, Stefan Dolinar
            音楽家 バイオリン Rémy Ballott, チェロ Jörgen Fog
            チェンバロ Johannes Maria Bogner
            オーケストラ Wiener Symphoniker

            リヒャルト・シュトラウスの最後のオペラ「カプリッチオ」は
            大袈裟に言えば私の人生を徹底的に決定してしまったオペラなので
            それなりに思い入れがあって
            色々とウルサイのだが

            ウィーン劇場の新プロダクションの「カプリッチオ」
            プレミエの時はブッフビンダーのベートーベン・ソナタに浮気して
            新聞評の写真を見たとたんに


            (c) APA/HERWIG PRAMMER
            (c) APA/HERWIG PRAMMER

            ・・・あ、これ、イカンかも(汗)

            プログラムによれば
            当時は第二次世界大戦の真っ最中で
            それを舞台に取り入れた・・・らしいが

            階段状で上がかなり斜めになった舞台の
            階段の上のところに倒れて死んでいるのはフラマンで
            その下の段で死んでいるのがオリヴィエで
            一番下の溝に嵌っているのがラ・ロッシュで

            上では伯爵と伯爵令嬢が動いているのだが
            なんだこの舞台?

            違和感は最初からずっと持続する。
            歌いながら靴を脱ぐ伯爵の足は血だらけだし
            フラマンの頭には銃撃戦による穴から出血しているし
            オリヴィエのシャツは真っ赤だし

            よくわからん(悩)

            ヘルメット被ったり
            銃で脅かしたり
            洋服とヘルメットを重ねてあちこちに置いたり

            葬式の真似事しながら歌っていたり(唖然)

            でももっと悲惨だったのは
            バレエ・シーンで出てくる女性ダンサーで
            男性からセクハラ、暴力受けまくりで
            スカートは剥がされるわ
            みんなのおもちゃにされるわ

            最後は人形に変わるんだけど
            手足を捥がれて
            みんながその肉を喰らうという

            カプリッチオと何の関係が???

            新聞評にあった通り
            舞台見ずに、目を瞑って聴いた方が良かったかもしれない。

            というくらい
            舞台の悲惨さと対照的に
            音楽が、いや、歌手が良かったんです ♡

            伯爵令嬢の Maria Bengtsson は
            澄んだ力強いソプラノだが
            ドイツ語がキレイだし
            あの高さで、ちゃんとそれなりにドイツ語が聴こえて来る。

            国立オペラ座で歌った
            声はキレイだけど、あまりに酷いドイツ語だったフレミングより
            ずっと良い。素晴らしい。

            最後のモノローグの
            あの高音で、最小限まで抑えたピアニッシモには参った。
            背筋がゾクゾクした。
            (ヘンな舞台装置でヘンな演技させられてたけど(笑))

            Lars Woldt はフォルクス・オーパーでも
            確か国立オペラ座でもワーグナーを歌っていたバスなので
            すごい声量がある上に
            ドイツ語がむちゃくちゃクリアで
            (ほんの少しだけ、本当にセリフになりそうだった部分あり)
            一語一語がバッチリ聴こえて魅力的。

            現実主義のラロッシュの性格も良く出ていたけれど
            演出上、ちょっと品がなくなっていて、それは残念。
            声だけ聴いていれば、老練で現実的な劇場支配人にピッタリだっただろう。

            フラマンのテノール、素晴らしい!!!
            例のモノローグ(だからヘンな演技をさせられていて可哀相だったが)も
            語り口が見事で、声も美しく
            いったい、ウィーン劇場っていうのは
            どこでこういう優秀な歌手を見つけてくるんだろう。

            オリヴィエも美声で魅力的なんだけど
            演出上、あんまり良い役作りになっていなくて

            伯爵令嬢はフラマンには抱きつくくせに
            オリヴィエには微妙な距離を空けているので

            ああ演出家はオペラでは音楽が優先ですか(偏見)

            伯爵が意外に良くて、ちょっと驚いた。
            (演出+ヘンな演技で、多少エキセントリックな性格になっていたが)
            マジメなバリトンで、やっぱりドイツ語はあくまでクッキリ。
            目立つ役ではないのだが、重要な役なので、巧いと嬉しい。

            クレロンだが・・・
            クレロンのメゾソプラノって
            誰でもああいう歌い方をするのかね?

            私の頭に刷り込まれている CD でも
            オペラ座のキルヒシュレーガーでも
            今回の歌手でも

            あまりに歌い方、歌声とニュアンスが似ていて
            なんだろ、この役って
            歌手の個性は出ないような楽譜になってるのかしら?(まさか)

            イタリア人歌手登場の場面では
            まるでお人形のような演技で登場するが
            テノールもソプラノも優秀 ♡

            イタリア・オペラ的テノールとソプラノで
            パロディ風味たっぷりの熱唱。

            オーケストラは、うううううううう・・・
            ごめんなさい、ウィーン交響楽団、巧いんですよ
            でも
            できればビリーと長かった
            ウィーン放送交響楽団の方が良かったような気がする。

            みんな頑張っているし
            必死になってるのは、よくわかる。

            だってビリーのテンポって、かなり速めだったのに
            最後の最後、モノローグの後のインストルメンタル部分は
            遅いテンポ設定で

            オーケストラの皆さまも、2時間30分
            休みなしに弾き続けて
            そろそろトイレも行きたいだろうし
            早く帰りたいという意識もあるところに
            あのテンポじゃ
            多少、弦がズレるのも仕方ない(勝手に納得)

            多少のズレはあったものの
            (召使い6人コーラスの最初のところは
             聴いている方がちょっと冷汗だった)
            ビリーが巧くつじつま合わせて行ったので不自然にならなかった。

            音楽的には抜群のご機嫌な出来だっただけに
            あの演出はね〜(苦悩)

            それまでは血だらけの戦争状態の兵士さんたち、というのが
            ムッシュ・トープは
            何故か山高帽の紳士で登場するし
            (ムッシュ・トープこそ地下の住人だから
             あんなにお洒落な上下の灰色のブランド品に見える背広ではヘン)

            これからウィーン劇場でこの演目をご覧になる方は
            舞台はあまり見ない方が良いかもしれない。

            私が購入しているチケットは
            どちらにせよ、舞台はほとんど見えない席なので
            後2回の鑑賞は、舞台観ずに、音楽だけに集中できそう(笑)

            本日も安い席だったのだが
            色々と偶然が重なって(非常にラッキーだったのである)
            とても良い席で
            舞台もオーケストラも見えたので
            演出や舞台のスゴさもしっかり観たから

            あとは、あの素晴らしい音楽に集中しようっと。

            しかし、ワタクシ的には
            カプリッチオは
            第二次世界大戦末期に
            老人2人が田舎に閉じ篭って
            戦争という現実から
            ひたすら現実逃避するために作曲したオペラ、という印象なので

            無理やり戦争にくっ付ける事もなかったんじゃないか
            ・・・という気がして仕方がない私に
            どうぞ1クリックをお恵み下さい。


            アグリッピナ(ヘンデル)ウィーン劇場

            0
              Theater an der Wien 2016年3月31日 19時〜22時30分

              AGRIPPINA
              Oper in drei Akten (1709)
              Musik von Georg Friedrich Händel
              Libretto von Vincenzo Grimani

              指揮 Thomas Hengelbrock
              演出 Robert Carsen
              舞台 Gideon Davey
              照明 Robert Carsen & Peter van Praet
              ビデオ Ian Galloway
              ドラマツルギー Ian Burton

              Agrippina : Patricia Bardon
              Claudio : Mika Kares
              Nerone : Jake Arditti
              Poppea : Daniella de Niese
              Ottone : Filippo Mineccia
              Pallante : Damien Pass
              Narciso : Tom Verney
              Lesbo : Christoph Seidl

              オーケストラ Balthasar Neumann Ensemble

              ヘンデルのオペラ「アグリッピナ」
              ウィーン劇場のチケット異様に高いし
              設備は古いし、舞台見え難いし
              バロックのオペラ長いし
              最初は全然アンテナに引っかかって来なかったのだが

              ヘンゲルブロックの指揮?!
              ・・・なら行ってみたい、とミーハー気分でチケット購入。

              46ユーロで舞台ほとんど見えませんが(涙)

              もっともオーケストラだけは良く見える。
              ヘンゲルブロックもよく見える。

              更に、3月の激務の後、という事で
              仕事サボって、1日休みを申請していたので
              昼過ぎまで惰眠を貪ってから出かけたので
              身体の調子はえらくよろしい(笑)

              で、これがこれがこれが
              何と、むちゃくちゃ面白かったのである!!!!

              夫の皇帝クラウディオが溺れて死んだという知らせを聞いて
              アグリッピナは自分の息子(連れ子)のネロを次の皇帝にと画策。
              手下のパラスとナルシソを色気で懐柔。

              ところがクラウディオは部下のオットーに助けられて
              行きていたのが判明。
              しかも、クラウディオはオットーに感謝の印として
              次の皇帝の地位を約束してしまう。

              さて大変。
              クラウディオもオットーもネロも惚れているポッペーアを利用して
              陰謀を巡らせて、何とかネロを次の皇帝に

              という話なのだが

              現代演出で、テレビやらコンピュータやらのある社長室?と
              どこかの邸宅の居間+ベッドルームと
              真ん中にプールがあって、周囲にデッキチェアのある舞台装置で
              ハチャメチャ含みで劇は進行する。

              けど、私の席からは、ほとんど舞台が見えません(涙)

              でもでもでも、オーケストラを見ていると面白い。
              バロック・オーケストラなんだけど
              最初のドラマチックな序曲から

              おおおおおおっ
              オーケストラのメンバー、全員、踊っている。

              だって身体が動くんですよ〜
              コンマスの動きもスゴイけれど
              対抗位置のよく見えるバイオリン軍団なんか
              ボーイングだけじゃなくて
              全員が同じように身体を激しく動かすのである。

              オーボエのお姉さんも身体を揺らしながらの演奏だし
              コンマスのソロのところの頭の振り方なんか超絶だし

              でまた、ヘンゲルブロックの指揮が
              むちゃ情熱的で
              舞台見ながら歌詞を口で指示してる。

              レチタティーヴォの部分は
              チェンバロやチェロ(これが通奏低音?)や
              リュートに任せているけれど
              アリアに入る直前に
              それ、やるぞ!という感じで

              指揮者もオーケストラも
              何か、むやみやたらに楽しそうなのである。

              クラリネットのお兄さんなんかは
              自分が演奏しないところで
              舞台に水着姿のお姉ちゃんが大量に現れるところでは
              嬉しそうにジッと舞台見てたし(ナニを見てるワタシは)

              演奏していないパートの人たちも
              時々、音楽に合わせて身体が揺れている。
              ついでに、たぶん、私も席のところで
              多少なりとも身体揺らして踊っていたと思う。

              だって、だって、だって
              ヘンデルの音楽、むちゃくちゃご機嫌で
              ドラマチックで、新鮮な部分が目一杯たくさんあって
              ええええっ、その音の扱い方ってアリですか〜
              と驚く部分と
              うわ〜、アリアの楽器の使い方が巧い・・・と
              度肝を抜かれる部分のテンコ盛り。

              ああああ、そうなんですよね。
              バロック音楽って
              ついつい、器楽ばっかり聞いていると
              何かつまらん、と思うんだけど

              当時は器楽の音楽は
              ミサの音楽でなければ
              ただの BGM であって(極論)
              本来は、オペラなんですよ、オペラ。

              しかも娯楽のなかった当時は
              オペラと言えば、テレビ・ドラマか映画か、という役割で
              現代のように、「高尚」なものではなかったのだ。

              (今だってイタリア・オペラの愛憎劇なんかは
               どう考えたって下世話なソープ・ドラマであって
               どこが高尚だよ、と言いたくなるけど(笑))

              見ているだけで楽しい指揮者とオーケストラ・メンバーに加えて
              ウィーン劇場ならではの、歌手がまた見事。

              もっともこのオペラ
              アグリッピナがソプラノ
              ネロがカウンター・テノール(しかもソプラノ)
              ナルシソがカウンター・テノール
              オットーがカウンター・テノール
              ポッペアがソプラノで

              注意して聞かないと
              (いや、注意していても舞台が見えないと)
              誰が歌っているのか、全くわからなくなってしまう。

              ネロとオットーが比較的小柄な男性なので
              (よく聴けば、ネロの声の方が高いけど)
              最初は気をつけないと混乱する。

              いやしかし、どこからこんなに大量の
              カウンター・テノールを集めたんだよ・・・(驚嘆)

              そこらへんのパンクなコワモテのお兄ちゃんが
              口を開けて歌い出すと妙なるソプラノ、という違和感は
              最初の驚きさえ越えてしまえば、全然平気(笑)

              オーケストラの切れ味が抜群だし
              アリアの超絶技巧の聴きどころは大量にあるし

              アグリッピナのソプラノも良かったけれど
              ポッペアを歌ったダニエラ・デ・ニーセは
              何回かウィーン劇場のバロック・オペラで聴いているけれど
              演技は巧いし、声域広くて
              しかも声の色を時々バッチリ変えて
              実に表現力(声と演技=身体)が巧いソプラノだ。

              ついでだが
              筋肉隆々の男性が脱ぐシーンも多く(女性サービス)
              水着姿の若いお姉ちゃんたちが
              キャピキャピ言いながらクラウディオにまとわりつくシーンとか
              (これは男性サービス)

              舞台さえ見えれば、それなりに目でも楽しめると思う(笑)
              出演している俳優さん女優さん
              歌手も男性・女性揃って(比較的)美男美女で絵になってる。

              イタリアのファシズムのモジリもあるし
              現在のマスコミへの皮肉もあるし
              演出的にも全然退屈しない(舞台が見えれば)プロダクションで
              繰り返すけれど

              オーケストラと音楽がむちゃくちゃ素敵 ♡♡♡

              ただ、ウィーン劇場のあのチケットの高さは
              何とかなりませんかね・・・(悩)
              (チケット安かったら、数回でも観たい作品である(本気))

              久し振りのバロック・オペラだったけれど
              行って良かった〜 ♡ と感激している私に
              どうぞ1クリックをお恵み下さい。



              イースター過ぎたら突然暑くなって
              コート要りません、みたいなシーズンに突入。
              本当に気候の移り変わりが激しい。

              三文オペラ ウィーン劇場

              0
                Theater an der Wien 2016年1月23日 19時〜21時50分

                DIE DREIGROSCHENOPER
                Ein Stück mit Musik (1928)
                Musik von Kurt Weill
                Text von Bertold brecht

                指揮 Johannes Kalitzke
                演出 Keith Warner
                舞台 Boris Kudlička
                衣装 Kasper Glarner
                振付 Anthony van Laast
                照明 Bruno Poet

                マッキー・メッサー Tobias Moretti
                ピーチャム Florian Boesch
                ミス・ピーチャム Angelika Kirchschlager
                ポリー Nina Bernsteiner
                ジェニー Anne Sofie von Otter
                ブラウン Markus Butter
                ルーシー Gan-ya Ben-Gur Akselrod
                スミス Martin Berger
                フィルチ Benjamin Plautz
                ワルター Michael Schusser
                ヤコブ Florian Stanek
                マティアス Nikolaus Firmkranz
                ネッド Juliusz M. Kubiak
                ドリー Isabell Pannegl
                ヴィクセン Nahoko Fort-Nishigami
                ベッティ Elisabeth Kanettis
                ギャング・娼婦 Johannes Kemetter, Viktor Saxinger, Salomé Ritterband
                Susanne Grundsky, Christian Garland, Benedek Nagy, Philipp Tod

                オーケストラ Klangforum Wien
                コーラス Arnold Schoenberg Chor

                ベルトルド・ブレヒトとクルト・ヴァイルの
                三文オペラは
                ドイツ語関係者であればあまりに有名な作品。

                なのだが
                これ、別にオペラってワケじゃないよね?!

                国立オペラ座でクルト・ヴァイルの作品
                Aufstieg und Fall der Stadt Mahagonny が
                上演されたのが2012年。
                (調べてみたら2012年2月2日に鑑賞している)

                あの時も、演劇だよね〜と思っていたし
                このブログに引っ越す前(記録は消えました(涙))に
                フォルクス・テアーターで
                俳優さんたちによる三文オペラも観た事がある。

                今回はウィーン劇場で取り上げるというので
                あんまり興味なかったのだが

                何か、トビアス・モレッティが出演している上に
                フローリアン・ボッシュとか
                アンゲリカ・キルヒシュラーガーとか
                (この人、クルト・ヴァイルはよく歌う)
                どんどん話題になっていたので

                ただのミーハーです、どうせ(開き直り)

                こうやって前置きが長いのは
                どう記事書こうかと悩んでいる証拠。
                どうも書き難い・・・

                あくまでも、これは「歌付き演劇」であって
                その歌が、クラシック的オペラ歌手で歌われてしまうと
                たまに、違和感がある。

                クルト・ヴァイルの歌って
                どちらかと言えば、地声で話すようにワイルドに歌われるイメージ。
                そこらへん、巧く処理していたのが
                フローリアン・ベッシュ。

                この人、セリフの声も響くし
                クラシック的美声の持ち主なのに
                底力のある迫力タップリにピーチャムを歌うので

                ついついピーチャムの味方になってしまうじゃないか(おいっ)

                トビアス・モレッティは・・・俳優さんですね(だから何?)
                ギャングのボスみたいな貫禄はタップリあるけど
                何かちょっと貫禄あり過ぎ。

                なんだかんだ言って、この人も50歳代後半だし
                ポリーとのラブラブやら娼婦とのやり取りやら
                個人的好みから言えば、ちょっと違和感が・・・
                (モレッティ・ファンの皆さま、ごめんなさい)

                それに比べて、ブラウンを演じた
                Markus Butter はバスとしてはワタクシ的に評価は高いのだが

                そのバスを活かせる音楽ではないし
                警官の制服とか着せられているので
                警視総監というよりは
                下働きに見えてしまって、どうも迫力なくて
                (いや、イジイジと悩むところなんかはハマり役なのかも)

                ジェニーを演じたオッターって
                キレイな人だし、色気あってスゴイけれど
                あまりに美しく歌い過ぎで
                娼婦の下劣感がゼロ(すみません言いたい放題で)
                しかもモレッティと並ぶとオッターの方がデカイ(笑)

                いや、でも、さすがにウィーン劇場のプロダクションで
                様々な工夫を凝らして、よく出来た作品だと思う。

                回り舞台を充分に活かして
                舞台装置は暗いけれど(乞食の元締めとか牢獄だから(笑))
                舞台を作って
                衣装は原色で
                明と暗を充分に活用して
                退屈しない舞台作りで、楽しい事は楽しい。

                う〜ん、どうもワタクシ、モドキに影響されていて
                モドキ曰く

                 ブレヒトは当時の社会に対して
                 三文オペラで、非常に辛辣なテキストを書いているのに
                 今の演出家は当時の社会批判的な部分を活かし切っていない

                ・・・という、強固な意見をお持ちなので

                いや、そりゃ、確かに、ちゃんとテキストを聴けば
                痛烈な社会批判をしているのはわからない訳ではないが
                1928年のドイツの社会状況を学んでから作品を観ろと言われても(汗)

                筋書きは
                乞食元締めの娘が
                貧しい地区の顔役と結婚したのに親が反対し
                義理の息子を
                警視総監に、舅が袖の下を渡して捕まえて
                縛り首にしてしまおうと画策するという
                ちょっとワケわからん話だからなぁ。

                かなりコミカルな演出で、笑える部分も沢山あって
                巧く出来ているし
                ウィーン劇場という箱は、こういう室内演劇向きの大きさだから
                セリフも歌も、充分にドイツ語は聴こえて来る。

                ドイツ語の字幕(歌の時だけ)が出てくるけれど
                歌の時のドイツ語も理解には全く支障がなかったのは
                歌手、というか俳優さんというか、歌役者というか
                出演者全員が芸達者だったから。

                でも、三文オペラを演劇として観るなら
                別に超一流歌手と俳優揃えて
                ウィーン劇場(チケットの値段が高い!)で観なくても
                普通の劇場で演劇として観ても良いかも。
                (俳優さんが、地声でちょっと外れた音程で歌っても
                 音楽的に云々言わなければ、それでも良いような気がする)

                チケット高かったのに
                ロジェ(ボックス)の床が真っ直ぐではない上に
                椅子がグラグラで
                太めの人が座ったら壊れるんじゃないか、という
                ハード的には最悪なウィーン劇場だが

                ミーハーの一員としては
                話題になっているプロダクションを
                一応、観るだけ観たので(以下省略)

                ウィーンは雪が降って
                市電が故障したり、というのはあったけれど
                雪が多少(20センチくらい)振っても
                交通麻痺とかがない、というのは有り難いと
                つくづく思った私に
                どうぞ1クリックをお恵み下さい。



                来酒は舞踏会シーズンなんだか
                何なんだかわからんが
                コンサートもオペラもバレエも
                何も予定が入っていないので
                サボっていた仕事をしなくちゃ(冷汗)


                ピーター・グライムス ウィーン劇場

                0

                  Theater an der Wien 2015年12月22日 19時〜22時10分


                  PETER GRIMES

                  Oper in einem Prolog und drei Akten (1945)

                  音楽 Benjamin Britten

                  台本 Montagu Slater 

                   nach der Verseerzählung THE BOROUGH (1810) von George Crabbe


                  指揮 Cornelius Meister

                  演出 Christof Loy

                  舞台 Johannes Leiacker

                  衣装 Judith Weihrauch

                  振付 Thomas Wilhelm

                  照明 Bernd Purkrabek


                  ピーター・グライムス Joseph Kaiser

                  ジョン Gieorgij Puchalski

                  エレン・オーフォード Agneta Eichenholz

                  ボルストロード Andrew Foster-Williams

                  おばさん Hanna Schwarz

                  姪 Kiandra Howarth, Frederikke Kampmann

                  ボブ・ボウルズ Andreas Conrad

                  スワロー Stefan Cerny

                  セドリー夫人 Rosalind Plowright

                  ホレス・アダムス Erik Årman

                  ネッド・キーン Tobias Greenhalgh

                  ホブソン Lukas Jakobski


                  オーケストラ ORF Radio-Symphonieorchester Wien

                  コーラス Arnold Schoenberg Chor


                  オペラ苦手

                  ブリテンの音楽苦手

                  長い演目(2時間半以上)苦手

                  ウィーン劇場のチケット、高過ぎ


                  ・・・なのに、友人の絶賛に加えて

                  新聞評がめちゃ誉められていると

                  人に感化されやすい私は

                  ホイホイとチケット購入サイトに行ってしまう。


                  46ユーロの席で

                  舞台、全然見えません、というのも、ひどくないか?


                  最終列が入手出来たので

                  ほとんどずっと立ちっぱなしで

                  何とか舞台が見えた、という有り様。


                  だったら立ち見席でも、と思うところだが

                  ウィーン劇場の立ち見席は、一番上の脇ギリギリにしかないのである。

                  乗り出しても舞台はほとんど見えない筈だ。


                  まぁ、ウィーン劇場のクローク・ルームが

                  何と無料になっていた事は誉めてあげよう。


                  あのクローク・ルーム、狭いし人は少ないし

                  それで1ユーロ50セントとか取っていた時には

                  人が溢れて大変だったのだ。

                  (今だって人は溢れているが、少しはマシ)


                  ベンジャミン・ブリテンの音楽が苦手な理由としては

                  この人、どの伝統的な系列にも直接繋がっていない上に

                  トナールなのに不思議な響きを持っていて

                  どうも馴染みがない、というのがある。


                  それでも、イアン・ボストリッジ博士のお陰で

                  多少なりともブリテンを聴くようにはなって来ているが

                  (焼け石に水、とも言う)


                  最初の音楽から、うわ、これ、苦手かも・・・

                  舞台は舞台装置がほとんどなくて

                  全体が傾斜していて後ろの方がどんどん上がっていく方式で

                  上手のオーケストラ・ピットに飛び出して

                  ベッドが置いてある。

                  床は、ビデオ投影だろうが、海か雲のような水色。


                  ご存知の通り、このオペラは暗い話である。

                  むちゃくちゃ暗い話である(強調)


                  最初から、えらく声量のあるスワローがグライムスを責め立てる。

                  うわわ、このスワロー、すごい存在感。

                  このステファン・チェルニーという歌手は

                  ずいぶん昔にフォルクス・オーパーで

                  当時はテノールだったのだが、聴いてひっくり返った事があったが

                  その後、バリトンに声域を変えてからも

                  むちゃくちゃ声が出て、声が深くて美声で、存在感がタダモノではない。


                  対するピーター・グライムスはテノールだが

                  まだ最初は弱々しくて、大丈夫か、こいつ・・・


                  エレンを歌ったソプラノが素晴らしい。

                  清純な声で、本当にマジメな感じの歌にピッタリ合う。

                  衣装もズボンを履いた灰色のビジネス・スーツで

                  歌も演技も表情も、ともかくマジメで頑張り屋の女性教師(萌)


                  ボルストロードは、グライムスと同じような位置で扱われていて

                  この人も巧い。

                  お友達、というよりも

                  おほも達という立ち位置で扱われているので

                  歌っていない時でも、さりげなく舞台上に居る。


                  で、ピーター・グライムスだが

                  話が進むと同時に、どんどん声が出て来て

                  これは・・・ ううう、素晴らしい、スゴイ、凄まじい ♡


                  しかもこの人、バレエとかやってなかった?

                  筋肉質の身体なのだが

                  怒ってジャンプする時の高さが半端じゃないんだけど。


                  声に色があって表情があって

                  張り上げている感じは全くないのに

                  あの、惨めでちょっと人格破綻か、というグライムスの

                  ものすごく複雑な性格を、ちゃんと歌い分けてるよ、このテノール(驚愕)


                  脇役も巧い人が揃っていて

                  ホレス・アダムス司祭なんか、実に(演技含めて)巧かったし

                  ボブソンの、ちょっと崩れた不良っぽい感じにもドキドキ。

                  ボブ・ボウルズは高めのヒステリックな声が出るテノールで

                  これも役柄にピッタリだし、ネッド・キーンの不良振りも良かった。


                  ウィーン劇場って、本当にどのプロダクション取っても

                  どこでこんな良い歌手を見つけてくるの?と思う。


                  (というより、最初は、歌手の声がみんなでか過ぎて

                   ちょっと吃驚した。あの劇場は狭いので声量があり過ぎると

                   反ってうるさく響くのである)


                  このプロダクション、最初はクルト・シュトライトが

                  タイトル・ロールを歌う予定だったのだが

                  キャスト変更で、ヨゼフ・カイザーになって

                  これは本当に幸運なキャスト変更だったと思う。

                  (クルト・シュトライトの声で、この役は難しいような気がする)


                  加えて、オーケストラが巧い ♡♡♡

                  あのブリテンの不思議な音楽を

                  とことん繊細に、音響的に美しく演奏してくれて


                  途中の間奏曲とパッサカリアの美しさは

                  筆舌に尽くし難い。


                  オペラの話を追っているより

                  オーケストラの間奏曲を聴いている方が恍惚として

                  ウットリして、ブリテンの音楽の世界に誘われてしまう。


                  で、このウットリする美しい間奏曲の時に

                  舞台では、ほもほもシーンが演じられるのだが


                  あの、ほもほもシーン、全然要らないから(断言)


                  同性愛に反感を持っている訳ではないから

                  グライムスとボルストロードがイチャイチャしようが

                  ボルストロードがジョンをレイプしようとしていても

                  それはそれで演出だから良いのだけれど


                  オーケストラ演奏によるあまりに美しい間奏曲に

                  耳が集中している時に

                  舞台で、ほとんど暴力的なレイプ・シーンみたいなのが

                  嬉しそうに繰り広げられていても

                  音楽との関連性が全く欠けているので、反って気が散る。


                  友人も言っていたけれど

                  唯一、何か無理があるよなぁ、と思ったのは

                  この、ほもほも三角関係を

                  無理やり、このオペラに突っ込んでしまったところ。


                  ピーター・グライムスって

                  別にあからさまに同性愛云々を演出で押し込まなくても

                  社会と個人、噂と裁判、正義を振りかざす人間の醜さとか

                  それに押しつぶされる社会的弱者のグライムス、という観点で

                  充分オペラとして成立するじゃないの。


                  いや、そりゃ、中年過ぎたオバサンでも

                  ジョン(これは俳優さん)の、むちゃ細身の

                  これはベニスに死すの大人版か、という

                  しかも上着脱ぐと筋肉隆々という(脚はむちゃ細い)

                  髪の毛ロンゲだけど考えられないほどにサラサラで

                  更に、顔が本当に、これが美少年というのか、という

                  日本ではあり得ない美しさで♡


                  そういう青年が大人の男性の獣欲の的になるというシーンは

                  ついつい涎が・・・・あっ、何を言わせるんだ、ワタシに(汗)


                  そういうシーンはともかくとして

                  長いよなぁ、苦手だなぁこの音楽、とか思っているうちに

                  どんどん、どんどん、ブリテンの音楽の世界に

                  どっぷり浸ってしまって

                  ストーリーもワケわからんが

                  何となく、グライムスの被害者意識に染まって来て


                  最後のグライムスのモノローグが

                  ああああああああっ、何でこんなに心に響いてくるのよ、もう。


                  このモノローグで、完全に入り込んでしまった後に

                  あの最後のシーンで

                  最初に出てきた潮騒のメロディに包まれながら

                  ボルストロードから離れて

                  後ろの唯一のドアから射す光に向かって退場するグライムスのところで


                  うわ、もうダメ、心の中が号泣で洪水になりそう・・・


                  苦手な音楽の筈なのに

                  何でこんなに音楽が美しいんですか?!


                  暗いストーリーで

                  しかも社会対個人の対立とか

                  ピーター・グライムスの複雑な性格とか

                  今回は無理やりだったものの、同性愛の抑圧とか

                  (演出上は抑圧してなかったけど(笑))

                  扱っているテーマが、えらく重いくせに

                  何かもう、胸が一杯になってしまう切なさ。


                  最初は、ちっ、人の噂(=新聞批評とも言う)に釣られて

                  大枚46ユーロも出して

                  舞台の見えない席買って、3時間ってバカバカしいな

                  ・・・と思っていたのがウソのように

                  最後の方は、むちゃくちゃ感激の嵐に浸っていた。


                  ちなみに、劇場は満員(立ち見席も満杯)で

                  最後は盛大なブラボー・コールが飛び交っていたが

                  それに充分値するプロダクションだった。


                  時間を何とか無理にでも見つけて

                  行って良かった、と、つくづく思った私に

                  どうぞ1クリックをお恵み下さい。



                  残念ながら、本日が千秋楽。

                  ウィーン劇場って、本当にプロダクションが良いんですよね。

                  昔は全プロダクションに行っていたが

                  お財布の底が抜けたので、今はほとんど行ってません(笑)






                  青髯公の城・幽霊バリエーション ウィーン劇場

                  0

                    Theater an der Wien 2015年6月25日 19時30分〜22時


                    Béla Bartók / Robert Schumann

                    Kento Nagano

                    Andrea Breth


                    Herzog Blaubarts Burg

                    Geistervariationen


                    Herzog Blaubarts Burg

                    Oper in einem Akt

                    von Béla Bartók, op. 11” (1918)

                    Libretto von Béla Balázs

                    指揮 Kento Nagano

                    演出 Andrea Breth

                    舞台 Martin Zehetgruber

                    衣装 Eva Dessecker

                    照明 Alexander Koppelmann

                    青髯公 Gábor Bretz

                    ユーディット Nora Gubisch

                    舞台音楽 Mitglieder des Bühnenorchesters der Wiener Staatsoper

                    オーケストラ Gustav Mahler Jogendorchester


                    Geistervariationen

                    Thema mit Variationen in Es-Dur für Klavier von Robert Schumann, WoO 24 (1854)

                    ピアノ Markus Hinterhäuser

                    サウンド・デザイン Markus Aubrecht

                    俳優 Sona Chan, Katrin Grumeth, Heinz Heisinger, Katrin Immervoll,

                    Grant McDaniel, Erich Mondl, Johann Moser, Karl Netuschill

                    Herbert Otterndorfer, Karl Raunig, Michael Reardon, Hans Steunzer


                    ウィーン芸術週間の一環で

                    19日の初演をカレンダーで見逃していたが

                    千秋楽の日に比較的安いチケットが1枚あったので

                    急いで行って来た。


                    この演目、最初ウエブで見た時は

                    青髯公の城・幽霊バージョン、とくっついているのかと思ったが

                    よく見れば

                    青髯公の城(バルトーク作曲)

                    幽霊バリエーション(シューマン作曲)

                    という2演目だったのね・・・


                    あ、もちろんシューマンの曲名はピアノ変奏曲であって

                    幽霊変奏曲ではございません。


                    両方とも演出家、舞台、衣装、照明は同じ。


                    さて、最初の青髯公の城は、マジャール語でドイツ語の字幕付き。

                    舞台は現代風で、何か、どこかの倉庫みたいなごっつい感じ。


                    机があってワインのデキャンテに水が入っているけれど

                    動きはほとんどないし、ちょっと退屈。


                    最初のドア(拷問室)を開けると、回り舞台で

                    でも、どうみても拷問室じゃなくて

                    壁にビニール貼ってあって、工事現場みたいで

                    床に俳優さんが変な形で倒れていて

                    赤いペンキが垂れたテーブルを、他の俳優さんが拭いていて

                    ユーディットが窓から身を乗り出して歌っている時に

                    青髯公が後ろを走って

                    右にぶつかり、戻ってユーディットに躓いて左にぶつかりというのを

                    延々と繰り返している。


                    ・・・なんだこりゃ。


                    2番目の武器庫も、どう見ても倉庫なのだが

                    俳優さんが立っていて

                    手に持っているのは、一昔前の手巻きの目覚まし時計で

                    ううううう、これ、武器庫か。

                    演出家だけにわかる深淵な哲学的表現なのだろうが(以下省略)


                    私の大好きな宝物殿のところは

                    何もないただの部屋(倉庫ですらない(唖然))の机の上に

                    箱が置いてあって

                    その中に赤いネックレスが山ほど入っていて

                    ユーディットが歌いながら、それを装着して行く。


                    輝くダイヤモンドも宝石も出て来ないじゃん(不満)


                    次の部屋は庭なので

                    樹が立っていたり、床をビデオ投影で地面にして

                    ベンチに座っている老人2人が

                    一人はユリを持って、一人は地面に砂を巻いているという

                    これが、庭かよ。

                    しかも歌詞にはバラの花とか出てくるが

                    (造化の)ユリが出てくるだけ。


                    で、もっと笑っちゃうのが

                    次の景色が見える部屋なのだが

                    何故か床に岩の盛り上がりみたいなものが置いてあって

                    そこに2人で寝転がって歌う。

                    しかも周囲は暗い。


                    まぁ、そこから月だの星だのの歌手になるので

                    それはそれで良いのかもしれないが。


                    涙の部屋は、後ろに俳優さんたちが立っていて

                    後ろの壁にほんの少しだけ、波っぽい映像を投影するが

                    やっぱり倉庫みたいで、味も素っ気もない。


                    最後の部屋のドアを開けると

                    若い3人の女優さんが登場してユーディットを囲んでお終い。


                    う〜ん・・・(悩)


                    音楽があまりに圧倒的過ぎる。

                    オーケストラはミスがなかった訳ではないが

                    すごく締まった透明で元気な音を出していて

                    バルトークのあの内省的な感じよりは

                    やっぱりオペラっぽく、かなり外向的な感じで響いたけれど

                    その分、かなりゴージャスな響きで


                    あああ、いかん、この音楽、何回かコンサート形式で聴いている間に

                    様々なシーンをバルトークがあまりに具体的に音楽で描くので

                    ついつい、既に頭の中で、自分なりの景色が出来てしまっている。


                    自分のイメージの中にある

                    ハンガリーの森深い中の中世の古城の雰囲気ではなく

                    舞台の上には

                    現代の崩れかけた安普請の手抜き工事の倉庫・・・(すみません)


                    不気味な拷問部屋も

                    華やかで、ワタクシ的にはルネッサンス的な宝石の部屋も

                    華麗なる中世の庭園も

                    窓から見える広々とした自然や

                    涙でさざめく海も


                    この演出と舞台装置だと

                    限りなくケチくさくて縮こまっていて

                    貧乏たらしくて(え〜い、一応城塞なんだよ?倉庫じゃなくて)

                    音楽が、圧倒的な力強さで伝えてくる

                    エネルギーが醸し出す広大な城塞のイメージと全く違う。


                    だから、オーケストラの演奏は良かったんですってば。

                    歌手2名も、声は響いて来たし

                    ユーディット役の声がかなり深めで神経に障らなかったのは助かった。


                    バリトン歌手は若くてスマートな人で

                    声が割に細くて(声量はある)

                    青髯公の年取った内向的なイメージとは合わない。

                    (演出が全然内向的じゃないので、それで良いのかもしれない)


                    力一杯なオーケストラは、オペラちっくではあるけれど

                    バルトークが細心の注意を払って

                    そこまで入り込まないで、という人間の心理を描こうとしたのは

                    残念ながら全く見えて来ない(ともかく外向きの音楽だった)


                    うううううううん

                    この作品、コンサート形式でしか聴いた事がなかったので

                    一度、舞台で観たいとは思っていたが

                    あそこまで白黒と茶色と、衣装は水色という

                    シンプルな色使いで(もちろん血の赤は時々入るが)

                    倉庫やら工事現場っぽい舞台装置を使うんだったら

                    せめて涙の海あたりでは

                    ビデオ投影をもう少し効果的に使ってくれるとか

                    チマチマした貧乏っぽいイメージからの脱出を計って欲しかった。


                    こりゃ、後半はかなり帰る人がいるな、と思ったが

                    安い席の人たちは熱心なので、ほとんど全員が戻って来た。


                    後半の「幽霊バリエーション」って

                    何ですか、これ。

                    前衛演劇作品なのか、何なのか全くわからん。


                    舞台には歪んだ対角線が床に書かれて

                    昔の暖房器具が置いてあって

                    舞台の奥のドアからは雪が漏れていて

                    椅子やベンチに

                    若い女性3人(青髯公でゾンビ?を演じた3人)と

                    その回りに、どう診ても平均年齢70歳くらいの男優さんたちが座る。

                    (この年配の男性たちも青髯公に出演していた)


                    で、音楽もなにもなく

                    (鳥の鳴き声とか、犬の吠える声は時々聞こえる)

                    約30分にわたり

                    時々フラグメントのセリフがドイツ語で語られるのだが

                    フラグメントなので、なんかワケわからんし

                    動きは少ないし。(最初にタップダンスがあるけど)


                    そうそう、この後ろ向きでタップを踊った

                    かな〜り年配の(70歳過ぎ?)男性は

                    青髯公でもユリを数えて渡す役をやっていたが

                    すごい個性だった。


                    失礼な言い方をすれば、顔もヘンだし、スタイルもヘンなのである。

                    強烈な醜男で、百面相の遊びで何か失敗したような顔なのだが

                    これが、ものすごく強烈な個性を醸し出して

                    途中のセリフ(これは英語だった)がかなり長いモノローグで

                    この英語のセリフの声が見事に通るの。


                    この人、歳は取っているし、本当に変な顔と身体の作りだが

                    しっかり俳優の訓練と、ダンス(バレエかもしれない)を修得している。

                    しかも、演技にものすごい個性がある。


                    ああいう、醜男の俳優さんって

                    日本ではウケないだろうが

                    こちらの俳優さんって、こういう強烈な人が結構居る。

                    で、また、こういう人たちが演技やダンスが巧いと

                    すごい印象を残すのである。


                    しかしながら、この演目、ちょっと動いたり、移動したり

                    ドイツ語でちょっと喋ったり(しかも意味不明発言が多い)

                    それを延々とやられるので

                    ここで途中で立って帰った人も結構居た。

                    (私も実は帰りたくなった)


                    で、延々と30分以上、訳わからんパーフォーマンス?をした後

                    青髯公が後ろのドアのところに登場し

                    マジャール語で何か言ってドアを開けると

                    ドアの後ろから、かすかにシューマンのピアノ変奏曲が聴こえてくる。


                    ピアノ変奏曲の演奏の間は

                    登場人物は身動きもせずに固まったまま。

                    ピアノ演奏は後ろのドアの向こうからなので

                    音響は最悪だし

                    ピアノもピアニストも見えず


                    何にも見るものがないし

                    ピアノも、舞台の後ろのドアから漏れ聴こえるだけなので

                    音が小さいピアノを聴きながら寝てました。


                    こういうパーフォーマンス系の現代作品って

                    昔は面白くも思ったけれど

                    最近、増え過ぎちゃって、全然面白くない。


                    不条理劇なんて、もう大昔に流行ってから

                    それ以上の発展なんかないじゃない。


                    ウィーン芸術週間って、確かに「現代芸術」が主なので

                    パーフォーマンス的な催物が多いのは覚悟していたが

                    一応「オペラ」となっているウィーン劇場で

                    こういうパーフォーマンスに付き合わされるとは。


                    まぁ、今日が千秋楽だし

                    きっと、インテリな観衆や批評家の中では

                    若い俳優さんではなくて

                    引退したような年配ばかり集めて

                    現代社会への警告であるとか

                    哲学的に深い解釈であるとか言われているのだろうが


                    後半は完全に時間の無駄でした(きっぱり)


                    でもまぁ、バルトークの青髯公の音楽は

                    目さえ瞑って倉庫のバリエーションさえ見なければ

                    音楽的には楽しく鑑賞したから、それで良しとしよう。


                    せっかく最近、ちょっとランキングの順位も上がって来たのに

                    音楽のシーズンは今週でお終い。


                    来週から9月中旬までは、ほとんど何もなくて

                    長期ブログ休憩に入るかもしれないので

                    忘れられてしまいそう(涙)と心配している私に

                    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



                    長期ブログ休憩の時には、ちゃんと告知します。

                    オーストリア生活とか、ネタは過去ブログで語り尽くしたけれど

                    消えてしまった以前のパート2で書いたサウナネタとかもあるので

                    時々は(音楽以外の事を)書く予定ではあるので

                    どうぞお見捨てなく。



                    罪ある母 ダリウス・ミヨー (ウィーン劇場)初演

                    0

                      Theater an der Wien 2015年5月8日 19時30分〜21時45分


                      LA MÈRE COUPABLE

                      Oper in drei Akten (1966)

                      Musik von Darius Milhaud

                      Libretto von Madeleine Milhaud nach dem Stück

                      L’AUSTRE TARTUFF, OU LA MÈRE COUPABLE

                      von Pierre Augustin Caron de Beaumarchais


                      指揮 Leo Hussain

                      演出 Herbert Föttinger

                      舞台 Walter Vogelweider

                      衣装 Birgit Hutter

                      照明 Emmerich Steigberger

                      ドラマツルギー Ulrike Zemme


                      アルマヴィーヴァの妻ロジーナ Mireille Delunsch

                      フロレスティン Frederikke Kampmann

                      スザンナ Angelika Kirchschlager

                      アルマヴィーヴァ公爵 Markus Butter

                      フィガロ Aris Argiris

                      ベルガス(タルチュフ) Stephan Loges

                      レオン Andrew Owens

                      公証人 Christoph Seidl


                      俳優

                      ロジーナ Irina Mocnik

                      フロレスティン Theresia Gabriel

                      アルマヴィーヴァ公爵 Pavel Strasil

                      レオン Johannes Kemetter


                      オーケストラ ORF Radio-Symphonieorchester Wien


                      新プロダクション、ウィーン劇場での

                      ボーマルシェ3部作の最後の作品。


                      その前のセヴィリアの理髪師とフィガロの結婚は行ってません(汗)

                      悪しからず・・・


                      何故、このチケット買ったかと言うと

                      作曲家がダリウス・ミヨーだったという、その理由に尽きる。


                      だいたい、こんな知られざるオペラ「罪ある母」なんて

                      一生に1回、鑑賞できるかどうかだし。


                      指揮者は舞台が始まる前からオーケストラ・ピットで待機。

                      会場が暗くなって演奏される曲は


                      は???

                      これ、ダリウス・ミヨー?にしては

                      何か、どう聴いても辛気くさいクラシックだが???


                      舞台上は薄い幕の向こう側に、お葬式のシーン。


                      しかも、出ました、高所恐怖症には絶対に無理な

                      ウィーン劇場名物2階建て舞台装置。


                      何だこの葬式のシーンと、バロック調の音楽は?


                      ・・・と思ったら

                      プログラムに曰く


                      最初はモーツァルトの Maurerische Trauermusik KV 477 が

                      演奏されます

                      ・・・・ って、それ、詐欺に近いじゃないか!!!!(怒)


                      辛気くさいモーツァルトの埋葬行進曲の後

                      舞台の薄膜が開くと

                      スザンナが、スズメの頭のようなヘアスタイルで

                      しかも、胸がガバッと開いていて


                      上から観ると丸々した胸元が・・・(以下省略)


                      音楽はここで、あっ、ダリウス・ミヨーだ、とワクワク。

                      ワケのわからん葬式シーン

                      しかも、二階建て舞台装置の上の方で

                      俳優さんたちが、ワケのわからない動きをしていた雰囲気と

                      少なくとも音楽的な印象は全く違う ♡


                      幕間で

                      「悪い音楽とは思わないわ。

                       ただ、そうね、ベンジャミン・ブリテンみたいに

                       多少耳慣れが必要って感じだけど」

                      、誰かが相手に喋っていたが


                      ベンジャミン・ブリテンというよりは

                      モーリス・ラヴェルの「スペインの時計」に似た食感。

                      (食感というのもヘンか。でも何となく理解して下されば・・・)


                      登場するのは、結婚後20年経った

                      アルマヴィーヴァとスザンナとフィガロに

                      ベルガスと呼ばれている詐欺師?のタルチュフ。


                      アルマヴィーヴァ家には、長男が居たが死んでしまい

                      (だから最初の葬式シーン)

                      次男のレオンと

                      孤児院から引き取ったフロレスティンが居る。


                      レオンとフロレスティンは恋仲らしい。


                      ベルガスはアルマヴィーヴァ家の資産を狙っている。


                      、アルマヴィーヴァは戦争に送られて

                      そこで戦死したケルビーノと、妻のロジーナの過去を疑っている。

                      (ケルビーノ役が俳優で時々出てくるが

                       これが、薄汚れた浮浪者みたいで(←戦争中の服装?)

                       上手のソファで、俳優さん演じるロジーナとナニをしちゃうし)


                      スザンナはフィガロにレイプされそうになって

                      (どうも芝居らしいが、かなりリアル・・・おいおいおい良いのかこれ)

                      それを助けたベルガスがスザンナに言い寄ったり


                      ロジーナを疑う伯爵は

                      腕輪にケルビーノの似顔絵を描かせて夫人のロジーナに渡し

                      何も言わないので、ケルビーノとの浮気を確信し


                      ベルガスは、ロジーナの浮気を確信したアルマヴィーヴァから

                      全幅の信頼を得て、財産を渡すので守ってくれ・・・と言われて

                      アルマヴィーヴァと男性同士で抱き合って、ディープキッスしちゃうし

                      (ううう、これはバイセクシャルの話だったのか(違))


                      スザンナが持ってきた宝石箱が2重底になっていて

                      そこに隠された手紙がバラバラと落ちて

                      レオンがケルビーノとロジーナの息子だった事がばれる。


                      アルマヴィーヴァはフロレスティンに

                      結婚したい相手は誰だ?と聞くと

                      フロレスティンはレオン以外には考えられません、と答え


                      ところが、それを聞いたベルガスは

                      フロレスティンに、お前はアルマヴィーヴァ公爵の本当の子供で

                      よって、レオンと本当の兄妹なので、結婚出来ない、と断言。

                      ショックを受けるフロレスティン。


                      態度の変わったフロレスティンをみたレオンは

                      ベルガスのせいだと決闘を申し込み

                      ベルガスは、お前はフロレスティンの本当の兄だ、と暴露。


                      アルマヴィーヴァは自分の財産をフィガロに引き出させようとするが

                      フィガロは、それは公証人のところにあって

                      領収書がないと、財産の引き渡しができない、と言うので

                      アルマヴィーヴァ公爵は、ベルガスに領収書を渡す。


                      ベルガスは、敵のフィガロをやり込めた、とホクホク。


                      幕間なしで続く第2幕では

                      真ん中に垂れていた、破れた建物の養生シートみたいなものが剥がされて

                      フレンチ・ドアみたいなものを開くと

                      中がロジーナの寝室。


                      ついでだが、最初から最後まで

                      (第2幕では真ん中がロジーナの寝室になる以外は)

                      後ろはエレベータの箱になっていて

                      登場人物が出たり入ったり


                      その上が2階建てのボックスになっていて

                      下で歌手が色々と歌っている間に

                      ボックスのいくつかが開いたりして

                      そこで、俳優さんたちが

                      ワケのわからん事をやっている。


                      ワケのわからん事というのは


                      ハダカになって赤いペンキを身体中に塗ったり

                      何か持って歩き回ったり

                      ベッドに縛り付けられて悶えていたり

                      純白でお腹のところに赤いペンキをつけた

                      ウエディング・ドレスを着て

                      跪きながら悶えていて、その廻りを聖職者が取り囲んだり

                      枯れ葉?が舞う小さな部屋を何人もが荷物持って歩き回っていたり

                      黒いコートを着た男性が

                      ハダカに近い女性を脅迫?していたり


                      ・・・・などなど。ともかくワケわからん。


                      ロジーナはアルコールに溺れているが

                      スザンナが、フロレスティンの本当の父親はアルマヴィーヴァと話すと

                      ああ、浮気したのは自分だけじゃなかったのね、とホッとする。


                      スザンナは、あのベルガスという男は怪しい、と注進するのだが

                      ロジーナはアルマヴィーヴァ公爵と同じく

                      フロレスティンをベルガスと結婚させようと

                      秘密はそのままにしておく決心。


                      ベルガスは、浮気の証拠はすぐに消滅させた方が良い、と

                      ロジーナとケルビーノのラブレターを燃やす。

                      (本当に舞台の上で、バラの入った花瓶からバラを出して

                       ロウソクの火をつけて、手紙を花瓶の中で焼いている)


                      ベルガスは自分の陰謀の邪魔をしそうな

                      レオンとフィガロを追い出すように目論むのだが

                      それを知ったフィガロが

                      あの詐欺師の思い通りにさせるものか、とアリアを歌って幕。


                      ひえ〜、筋書いてるだけで疲れる(汗)


                      第3幕では、フロレスティンと結婚しようとしていたベルガスが

                      実は既婚の身の上であった事が

                      フィガロの活躍により判明。


                      フロレスティンは、これで、あのベルガスと結婚しなくて良いのね、と大喜び。


                      ロジーナはケルビーノとの浮気がばれそうになって

                      アルマヴィーヴァ公爵の横で気を失い

                      ほとんど死にそうになるのだが


                      それを見たアルマヴィーヴァは

                      やっぱりロジーナを失いたくない、と愛?を再確認。

                      (なんだそれ)


                      今度はフィガロがベルガスを騙し

                      公証人の前で、ベルガスが、アルマヴィーヴァの財産を受け取った事と

                      自分の財産を、将来の花嫁になるフロレスティンに譲るという証言をさせる。


                      だが、そこで、既婚の身を指摘され

                      悔し紛れに公爵の足下に

                      残っていたロジーナとケルビーノのラブレターをぶちまけて

                      レオンがアルマヴィーヴァ公爵の息子でない事をバラす。


                      フロレスティンはアルマヴィーヴァ公爵の実の娘だが

                      レオンはロジーナが浮気してケルビーノとの間に作った息子で

                      結局、全く血縁はないので、結婚オッケーとなり

                      (むちゃくちゃだ)


                      狙っていた財産のみならず

                      自分の財産まで奪われたベルガスは

                      このスキャンダルを世間に広めてやる、と退場。


                      何か最後はみんながドッペルゲンガーと(俳優さん)

                      悶えつつ絡まりつつ

                      大人数でエレベータの箱に集まって


                      ダリウス・ミヨーっぽい洒落っ気のある

                      「愛は勝つ」みたいなピアニッシモで

                      ちょん、という感じでお終い。

                      (あれを、それ以外の言語表現でどうやって言えと??)


                      ・・・何だったんだあれは。


                      ボーマルシェの事なので

                      時代背景とか、何か色々と深い意味はあるのだろうし

                      演出家は、その深い意味と芸術性を重視して

                      上の小部屋で、筋と関係ないだろこれ、という

                      不思議なシーンを俳優さんたちにやらせていたのだろうが


                      よ〜わからん(爆)


                      指揮者のレオ・フセインの大ファンが居たようで

                      終演後に、すごい声でブラボー・マエストロ、というのが聞こえて来た。


                      歌手は粒ぞろいで、それなりに良かったのだが

                      アルマヴィーヴァとかベルガス役は

                      セリフっぽい部分が多くて、地味だった。

                      フロレスティンは華奢で若くて、声も出ていたし、ともかく可愛い。

                      レオン役のハイテノールも、かなり良い感じ。

                      ロジーナ役のソプラノは歌えば歌う程、声が出てくるタイプ。


                      で、フィガロを歌った Aris Argiris が実に良かった。

                      ミヨーの音楽でも、フィガロってやっぱり目立つ役どころなんだね。


                      前半の途中で帰った人がかなり居たし

                      後半は、平土間でも帰って来なかった人も多く

                      バルコンなんか、半数以上が居なくなっていたみたいだが

                      (まぁ、音楽がね、耳慣れしないと不思議かも。

                       それに今日はプレミエ(初演)なので

                       興味なくて招待された客も多かったんだと思う)

                      最後まで残った人は

                      音楽的な部分には、かなりブラボー飛んでいて


                      演出には

                      ブラボー・コールと、ブーが半々くらい(爆笑)


                      良い舞台だから是非観て、とまでは言えないし

                      ダリウス・ミヨーの音楽は好き嫌いあるだろうし

                      (ほら、やっぱりああいう音楽なので

                       今ひとつ、盛り上がりには欠けて

                       何か、ダラダラダラダラ続く感じなの)


                      でも、盛り上がりなくてダラダラ続いても

                      ミヨーの音楽って、私、すごく好き ♡

                      オーケストレーションだけでも、多様な色があって楽しい。


                      確かに歌手だけだと舞台での動きは少ないだろうが

                      だからと言って、あんなに数多くの俳優さんたちに

                      ワケのわからんシーンを演じさせる必要があったのかは疑問だが。


                      休憩入れて2時間15分くらいの演目だし

                      気に入ったら、もう1回行っても良いかな、と思ってはいたが

                      音楽は好きだけど

                      舞台はワケわからんし

                      筋は(まぁ、ボーマルシェだから、時代背景とか・・・)複雑なのか単純なのか

                      無理やり都合つけてるような

                      旦那は浮気して子供作るわ

                      奥さんも浮気して子供作ってるわ

                      で、その子供同士が恋愛しちゃうって(絶句)


                      あんまり長く書いて、ぐったり疲れた私に

                      どうぞ1クリックをお恵み下さい。



                      読んで下さった方はもっと疲れた事と思う。

                      舞台写真をご覧になりたい向きは

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