フランス放送フィルハーモニー管弦楽団 + ミッコ・フランク

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    Schloss Grafenegg Auditorium 2018年8月30日 19時15分〜21時45分

    Orchestre Philharmonique de Radio France
    バイオリン Hilary Hahn
    指揮 Mikko Franck

    Maurice Ravel (1875-1937)
     Le tombeau de Couperin (1919)
    Jean Sibelius (1865-1957)
     Konzert für Violine und Orchester d-Moll op. 47 (1903-04/1905)
    Ludwig van Beethoven (1770-1827)
     Symphonie Nr. 5 c-Moll op. 67 (1803/04-08)

    木・金・土・日とグラーフェネックなの、と言ったら
    何処に泊まるの?と返されてひっくり返ったのだが
    毎日、往復140キロを元気に車ですっ飛ばしています f^_^;

    東京都庁からの距離だと
    直線距離で秩父とか深谷市とか香取市とか館林とか
    そういう感じなので、まぁ、それ程の距離とは・・・
    交通渋滞なしで高速道路飛ばしたら、片道40分から1時間くらいだし。

    木曜日や金曜日の19時15分からのグラーフェネックのコンサートなんて
    仕事していたら、絶対に来られない時間なので
    引退2年目が嬉しい ♡

    フランス放送フィルハーモニー管弦楽団と
    首席指揮者、フィンランド出身のミッコ・フランクに
    バイオリンのソリストはヒラリー・ハーンという豪華キャスト。

    私はミッコ・フランクが好き(断言)
    数は少ないけれど、ウィーン・フィルの指揮台に立った時の見事な演奏と
    バレエでリヒャルト・シュトラウスのヨゼフの伝説を
    ウィーン国立オペラ座のオーケストラ・ピットで振った時の
    バレエなんかどうでも良い、音楽ステキ!というクオリティに圧倒された。

    指揮台の上に椅子が乗っているが
    ミッコ・フランク、座って指揮するんだろうか?

    登場したミッコ・フランク・・・
    衣装が・・・ 

    光る黒のピラピラした上着で
    前の左右の分かれ目から赤が覗いてる。
    ルイージさまの白い上着にも仰け反ったが
    ミッコ・フランクも
    クルレンツィスの幼稚園スモックにも負けないユニークな衣装だわ。

    椅子に座る・・・かと思いきや
    音楽始まったとたんにそのまま立って
    指揮台に乗らず、下手(しもて)のチェロやビオラのところまで迫って
    結構な勢いで動いているんだけど・・・

    ラヴェルのクープランの墓。
    オーケストラの真上という悲しい貧乏席なので
    音量がかなり大きく聴こえては来るものの

    うわ、オーボエ、巧い。
    ちょっと饒舌すぎの感はあるけれど
    木管軍団のアンサンブルが素晴らしい。
    しかも、音楽作りが、これだけの音量(席が悪い)にも拘らず
    とても正確なのに繊細。
    なんだか、最初からものすごく楽しい。

    続いてシベリウスのバイオリン協奏曲。
    プログラム構成が
    フランスのオーケストラだからラヴェル
    フィンランドの指揮者だからシベリウス
    オーストリアの公演でドイツのバイオリニストだからベートーベン
    ・・・って、そういう配慮のもとかどうかはわからないけれど
    見事なバリエーションになっているのは確か。

    その分、オーケストラや指揮者の実力がバッチリ見えるプログラムでもある。

    いつもながら、真っ白な美肌で
    どう見てもフランス人形というヒラリー・ハーンと登場した指揮者は
    指揮台の上にあった椅子を
    自分で降ろして、下手(しもて)側の指揮台の横に置いちゃった。

    ヒラリー・ハーンのバイオリンの音って
    一点の曇りもなく澄んでいて
    清純で濁りがなくて、ため息が出る程なんだけど
    そんな美しい音色で
    ダイナミックにシベリウスを演奏されちゃうと
    悶絶する。

    第1楽章も素晴らしかったけれど
    第2楽章の低音からの入りが、なんというイケメンな演奏。
    オーケストラも低弦がバッチリ効いていて
    透明感あるのに厚みがあって素晴らしい。

    ミッコ・フランクは時々椅子に座りながら
    でも、ほとんどは立って
    なんだか時々、ソリストを指揮しているように見えるのだが・・・
    (だって第1バイオリン、そこ演奏するところじゃないよね?
     なのに、ソリストが立っている第1バイオリン向いて指揮してるんだもん)

    バイオリン苦手だし
    シベリウスのバイオリン協奏曲も苦手だった筈なのに
    なんだか、この演奏、むちゃくちゃ萌える。
    透明な美と多彩なダイナミックの見事な融合。
    あ〜、もう、単純に、すかっと爽やかで気持ちが良い。

    見た目も音もこの上なく美しいハーンが
    アンコールを大サービスで2曲。ああああ、悶える。

    後半、ベートーベンの交響曲5番。
    ベートーベンの交響曲5番と言えば
    どちらかと言うと有名過ぎて
    意外にナマで聴く機会は少ない。
    (頻繁に演奏されるのは3番と7番だと思う)

    指揮者によってバッチリ違う5番だが

    おおお、ミッコ・フランクの5番
    意外と伝統的。
    ピリオド奏法でもなく、あくまでもモダン・オーケストラで
    かっ飛ばしテンポではなく
    かと言って遅いわけでもない
    中庸で正統的な感じで攻めてくる。

    最近、変わったベートーベン解釈も多いので
    こういう、あくまでも端正で正統的な演奏って
    却って新鮮に聴こえてくる。

    それに、低音がバッチリ効いていて
    スタッカート続きの流れの後ろに
    しっかり継続するメロディ・ラインが出来ていて
    あくまでも音楽的。
    ダイナミックでワイルドなのに、エレガンスを失っていない。

    テンポ設定が絶妙で
    ダイナミックさと音楽性とが
    ちょうどソコでぴったり合う、というこの上ないバランス。

    オーケストラ、木管が巧いのはそれまでの演奏でわかっていたが
    ビオラのアンサンブルと音色の温かさが群を抜いてる。
    チェロとコントラバスの低弦の厚みのある響きもチャーミング。

    こうやって舞台のオーケストラを真上から見ながら
    (いやあの、いつもは全くオーケストラ見えない席ばっかりだし)
    楽器編成や、どこで何の楽器が演奏しているかを見ながら聴くと
    ベートーベンの5番って、音色のレンジがむちゃくちゃ広い事に驚く。
    (クラシック・オタクの皆さまは、何をいまさら、という感じでしょうけど)

    ミッコ・フランクは、自分で床に置いた椅子を無視しまくって
    無駄な動きはないのに
    実に情熱的に振りまくっている。
    いや、この人、こんなに熱い指揮者でしたか?

    考えてみれば、このオーケストラ
    チョン・ミョンフンが首席だった頃に
    何回かウィーンでも聴いていて
    その度に、う〜ん、巧いオーケストラだ、と感心してたっけ。

    チョン・ミョンフンの指揮のおかげかと思っていたら
    ミッコ・フランクの指揮棒でも、同じように巧い。

    なんか、こんなに素直に
    しかも、むちゃくちゃダイナミックに
    粗くならずに音楽的に演奏された5番って
    すごいかもしれない。

    掛け値なしにチャーミングで情熱的で音楽的で
    ナマ音に飢えていた、というのはあるかもしれないけれど
    素直に感激できる、すごく魅力的な演奏だった。

    指揮台の上のベートーベンの下に
    他の楽譜が見えたので
    私の強力望遠鏡で真上から見たら
    シベリウスの悲しきワルツだった。

    ミッコ・フランク、拍手に応えて出て来て
    指揮者の譜面台からベートーベンの5番を閉じて
    その下のシベリウスを取り出し

    客席に向かって、スコアを見せて
    このスコア、いったい何?という素振りを見せて
    シベリウス ワルツ・トリステ とアナウンス。

    ミッコ・フランク、自分でキャラ作ってないか?(爆笑)

    ワルツ・トリステはパーヴォ・ヤルヴィお得意の1曲なので
    かなり何回もパーヴォ・ヤルヴィの指揮では聴いたけれど
    ミッコ・フランクの音創りの方が
    素直で正統的に聴こえる。
    (パーヴォさんはワタクシ的感覚だと非常にモダン)

    あ〜、このミッコ・フランクという指揮者
    音楽的センス抜群で
    スコアの読みも完璧なのに
    加えて、僕、音楽好き好き好きという
    何ともチャーミングな情熱が伝わってくる。

    相変わらず見た目はパタリロそのもので
    (註 私は鉄壁のパタリロ・ファンである!!!悪口ではない)
    しかも光沢のあるピラピラの黒いゆったりしたシャツに
    赤の裏地?がチラチラという不思議な衣装の指揮者だが
    音楽に関しては、最も音楽的な指揮者の一人と言えるかもしれない。

    あ〜、ホントに木曜日にグラーフェネックに来られる身分?になって
    私は嬉しい \(^o^)/

    むちゃくちゃ高揚して楽しい気分で
    雨の高速道路を70キロ走って帰って来た私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



    せっかく作ったロゴなので、もう1回使わせて下さい(笑)
    今日はあちこちで車の事故が多くて
    渋滞が凄かったけれど、時間に余裕を持って来たので間に合った。
    午後、ちょっと走ったら、高速道路への入り口が事故で閉鎖されていて
    その渋滞に巻き込まれてえらい目にあったけど。
    ウィーン市内、車で走るもんじゃないですね。どこも渋滞で東京と変わらんわ。

    カール・チェルニー

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      あっ、そこのピアノ習っているお嬢さん
      タイトル見ただけで逃げないで下さい・・・

      訳あって、カール・チェルニーの研究書とか読む羽目になって
      読んでみたら、ちょっとハマってしまって f^_^;)
      チェルニーの墓参りをして来た。

      ツィッターには挙げたのだが
      改めてここで・・・カール・チェルニーのお墓。



      チェルニーが亡くなった時には
      まだ中央墓地はなかったので
      後で、栄誉墓地に移されたのだが
      お花でも・・・・と思ったら
      花屋さんが閉まっていて
      隣の蝋燭屋さんで、蓋付き(外に置くから)の蝋燭を買って
      感謝を込めて立てて来た。

      カール・チェルニーについての
      スタンダードな研究書としては
      ドイツ・ケルンのピアニストのグレーテ・ヴェーマイヤーのものがある。



      1983年に出版されたこの本の19ページ曰く

      Czerny war als Lehrer gewiß kein Sadist, seine Empfehlungen für das
      Unterricht sind ausgesprochen human und gütig.

      教師としてのチェルニーがサディストではなかったのは間違いない。
      彼の教育のアドバイスは非常に人間的で良きものであった。
      (意訳です。文責なしね!)

      ・・・研究者に「サディストじゃない」とか
      わざわざ言われなければならないチェルニーって
      なんてかわいそう(涙)

      結婚もせず、まるで隠遁生活をするかのように
      静かに生きたカール・チェルニーは
      1857年、ウィーンのステファン寺院近くの住居で亡くなっている。

      死の数年前に書かれた
      Erinnerungen aus meinem Leben (私の人生の思い出)
      という文章は

      あ〜、もう、涙なしには読めません。

      ボヘミアの小さな村に生まれたお父さんは
      音楽の教師として質素に生きて来て
      チェルニーの才能に気がついて
      でも、お金がなくて、10歳でベートーベンの元に弟子入りさせた。

      それまでの教育も、レッスン費用を払う余裕のない学生から
      ピアノ・レッスンの代わりに、イタリア語やフランス語を
      教えてもらっていたという。

      1802年にベートーベンが交響曲1番と2番のコンサートをした際に
      11歳にして、オーケストレーションがどうなっているか興味を持ち
      自分でオーケストラ・スコアを起こしたという天才である。

      チェルニーは13歳頃から、既にお父さんを手伝って
      ピアノ教師として仕事をしていた。
      自分のピアノには、旅するヴィルトゥオーゾのような華やかさはない、と
      1806年(17歳!)からピアノ教師に専念。

      ここら辺、本当に何というか、堅実で正直で慎ましやかで
      自慢っぽいところが一切なくて
      淡々と書いているのが、もうハートにキュンキュン来る。

      朝8時から夜の8時まで、20年以上にわたり
      45歳で教師を辞めるまで、そういう生活をしていた。

      しかもこの部分だって

      Etwa 15 Jahre war ich alt, als ich (1806) anfing, selber Unterricht zu geben,
      und der Zufall wollte, daß ich bald einige talentvolle Schüler erhielt […].
      Diese verschaffte mit gleich in den ersten Jahren meiner Laufbahn
      als Lehrer einen bedeutenden Ruf,
      und bald waren alle Tagesstunden besetzt […].

      ・・・これ、何と謙遜した書き方なんですか!!!
      普通だったら、俺の教え方が上手くて、生徒が上達して、とか書くところを
      偶然にも、何人か才能ある生徒が来て・・・・って。
      (あ〜、すみません、面倒なので翻訳しませんが f^_^;)

      しかも、このお金は、生活費として
      すべて、お世話になった親に渡していたのだそうだ。

      ベートーベンと出会った時の印象とか
      フランツ・リストを生徒として取った時の事とか
      簡素なドイツ語で、淡々と綴られる回想記は
      チェルニーの、奢らない誠実な人柄を伝えて来る。

      晩年は病気のために閉じこもりきりになり
      亡くなった後の財産は、家政婦とその兄弟に一部を譲り
      後は、すべて寄付したと言う。

      別の研究書にある肖像画は
      1845年頃に描かれたウィーン楽友協会所蔵の絵。



      すみません、ワタシ、本当にメガネ男子に弱いんです。
      ・・・って、あんまり関係ないか。

      何を言いたかったか、自分でもわからないのだが
      カール・チェルニーの練習曲って
      誰でも子供の頃に、げっそりしながら演奏させられるじゃないですか。

      私も小学校の頃は大嫌いだったんだけど
      大人になって、もう一度紐解いてみると
      実に目的に適った、よく出来た曲が多くて
      ちょっと驚いているところ。

      まぁ、本当に実際に会ってみたら
      ファザコン・マザコンの鬼教師だったのかもしれないけれど(笑)

      チェルニーに悶えてます、と言うと
      危ない人を見るような目つきで見られて
      この人大丈夫?と思われる誤解を解きたくて
      ついつい、こんな記事を書いちゃいました
      という私に
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      へへへ、ちょっとオリジナルを作成してみました (^^)v

      DR放送交響楽団 + ファビオ・ルイージ

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        Schloss Grafenegg Wolkenturm 2018年8月26日 19時30分〜21時40分

        Danish National Symphony Orchestra
        ピアノ Rudolf Buchbinder
        指揮 Fabio Luisi

        Bent Sørensen (*1958)
         „Evening Land“ (2017)
        Ludwig van Beethoven (1770-1827)
         Konzert für Klavier und Orchester Nr. 3 c-Moll op. 37 (1800-03)
        Carl Nielsen (1865-1931)
         Symphonie Nr. 4 „Das Unauslöschliche“ (1914-16)

        デンマーク、コペンハーゲンに本拠を持つ
        DR放送交響楽団は初聴きだが
        2017年から首席になったのはファビオ・ルイージ。

        あああああああ、ルイージさま ♡
        お久し振りでございます。
        振り返ってみれば、2005年〜2013年に
        ウィーン交響楽団の首席だった時に
        私が、どんなにルイージさまのファンだったか・・・(感涙)

        最後のシーズンに
        メトロポリタン歌劇場優先で
        ウィーン交響楽団のマーラーをクリスティアン・アルミンクに押し付けて
        逃げた事は、まだ忘れてません。
        (あっ、イヤミになっちゃった f^_^;))

        2013年以降、ほとんどウィーンでお見かけしなかったのだが
        (チューリヒでは振っていたようだが)
        2017年からDR放送交響楽団首席になったのは目出度い(たぶん)

        ブッフビンダーがこのオーケストラを呼んだのも
        ルイージ繋がりだろうと推測する。

        さて、数日前まで猛暑だったウィーンは
        突然、気温が下がり
        晴れてはいるけれど、こんな気温で
        どこでコンサートするんだろう、と
        一応、コートは用意して行ったら
        やっぱり野外音楽堂だった。

        到着時19時には気温16℃。
        コンサートの最中にどんどん下がって
        最後は気温13℃になって

        トレンチ・コートだけじゃむちゃくちゃ寒いです。
        用意の良い観客たちは
        みんな、ダウンコートや毛布を持参。
        あ〜、私も見た目に拘らず毛布を持ってくるべきだった。

        久し振りのルイージさまは

        ・・・・何故に白い上着??????(ズボンは黒)

        どう見ても、1930年代のアメリカのビッグバンドのマスターっぽい。
        いや、別に衣装云々は音楽と関係ないのだが
        黒い背広と黒の衣装のオーケストラ・メンバーの前に
        白い上着で立つと、ものすごく目立つ。

        最初の曲はデンマークの作曲家のベント・ソレンセンが
        2017年にニューヨーク・フィルの委嘱作品として作曲したもの。
        自分が子供の頃に見た田舎の景色と
        ニューヨークの景色をイメージしているらしい。

        バイオリンの、この上なく繊細なピアニッシモのソロから
        弦楽のトゥッティに移行して
        オーケストラの様々な楽器が
        トナールとアトナールの間を揺蕩いながら
        ものすごい色彩感を持って
        夢の中の柔らかい輪郭の風景を
        オーケストラがパステル色でペインティングしているような感じ。

        ブッフビンダーのベートーベン、ピアノ協奏曲3番は
        まぁ、鉄壁だわね。
        今日も風向きのせいか(寒いのにしっかり風も吹いていてもっと寒い)
        昨日のホールでの大音響の耳慣れのせいか
        あまりオーケストラの音が響いて来なくて
        ちょっと霞かかったような音色になっているのだが
        (ピアノはスタインウエイのフルコンサートグランドなんだけど)
        端正でクリアなピアノの音だという事はよくわかる。

        いつもはアンコールしないブッフビンダーは
        グラーフェネックは特別なのか
        今回も洒落たアンコールを1曲。これは楽しかった。
        シューベルトっぽかったけど、何だったんだろう?

        日が暮れて、ますます寒くはなったけれど
        風は止んだ状態で
        後半は、私が大好きなのに
        滅多にウィーンで演奏されないカール・ニールセン
        しかも交響曲4番「不滅」である!!!!

        うわあああ、デンマーク万歳(自分でも何言ってるかわからん)
        というか、ニールセンの交響曲を演奏してくれて、ありがとう!!!

        この曲、ウィーンの聴衆にはあまり評判が良くないのは
        既に楽友協会でも経験しているけれど
        今回も比較的あちこちで小声でのお喋りが・・・(涙)

        まぁ、野外音楽堂で
        オーケストラ・メンバーが楽譜を捲って
        譜面台に固定するたびに、譜面台の金属の鳴る音が
        盛大に曲の最中に響き渡っていたから
        多少の小声のお喋りくらい、我慢すべきなんだろうけど
        (でも納得いかん)

        ルイージさまの振った出だしが
        かなりの高速テンポ。
        うわあああ、この曲って、こんなに速かったっけ。

        出だしも好きだけど
        途中の木管のアンサンブルの素朴な味が、すごく好き。
        さすがにこの曲、自分たちの国の曲だし
        木管のアンサンブルは完璧。
        あ〜、この訥々とした感じ、ほっこりするわ。
        (その後に弦のアンサンブルによる悲鳴っぽい章が来るし)

        弦のトゥッティの後の最終楽章での白眉は
        もちろん、2台のティンパニ ♡
        もう、この部分聴くだけで
        身体が勝手に動き出すくらい好き。

        ティンパニスト2名
        力を入れすぎず、如何にも自然に
        「僕たち、完璧な職人だからね〜」って言う
        職業意識バリバリのクールな感じがたまらん(独断・偏見・妄想)
        聴くたびに思うんだけど
        この曲、本当にカッコいいというか、ドラマチックでクール。

        この後の、余計なところは削ぎ落とした完璧な5番も好きだけど
        ちょっと熱いところがある4番の方が人間くさい感じがする。

        ルイージさまの指揮の動きも
        昔と同じくキレが良くて清々しい。
        白い上着は、最後まで違和感あったけど(笑)

        白髪は増えたものの
        以前と同じルイージさまの面目躍如で
        熱いけれど、明確な指示でオーケストラを引っ張って行く。

        あくまでも風向きと席のせいで
        ホールだったら、もっと細かい部分の音響が良かったんだろうなぁ、と
        野外だったのが、非常に非常に非常に残念だったが

        職人芸バリバリの
        デンマークらしい(←妄想)キレのあるニールソン聴けて
        凍えたけれど、とても楽しかった。

        ルイージさまの指揮姿を、遠くからだけど
        久し振りに見られたのも嬉しい。

        来週は、また数日、夏が戻って来るらしいのだが
        ともかく寒くて凍えて
        車の暖房をガンガン入れて
        満月が煌々と輝く高速道路を走って来た私に
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        このオーケストラのコンサート・ミストレスと
        チェロのトップが、アジア系の美人で
        どこの国の出身だろう、と調べてみたら、韓国出身で
        しかも、名前からすると姉妹っぽい。
        迫力の美人姉妹(しかも演奏も巧い!!!)だった。


        トーンキュンストラー + 佐渡裕

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          Schloss Grafenegg Auditorium 2018年8月25日 19時30分〜22時30分

          Tonkünstler-Orchester Niederösterreich
          ソプラノ Patricia Petibon
          メゾソプラノ Elisabeth Kulman
          テノール Peter Kirk
          チェロ Leonard Elschenbroich
          司会 Christoph Wagner-Trenkwitz
          指揮 Yutaka Sado

          Leonard Bernstein (1918-1990)

          Ouvertüre zur Operette „Candide“ (1956)

          „On the Waterfront“ Symphonische Suite für Orchester (1955)

          „Three Meditaions“ aus „Mass“ (1971)

          Drei Tanzepisoden aus dem Musical „On the Town“ (1944)
          Nr. 1 „The Great Lover Displays Himself“

          „I can cook, too“ aus dem Musical „On the Town“

          „Lucky to be me“ aus dem Musical „On the Town“

          Drei Tanzepisoden aus dem Musical „On the Town“
          Nr. 2 „Lonely Town“

          „Oh happy we“ aus de Operette „Candide“

          „I am easily assimilated (Old Lady’s Tango)“ aus der Operette „Candide“

          „Glitter and be gay“ Arie der Cunegonde aus der Operette „Candide“

          „Waltz“ aus dem Divertimento für Orchester (1980)

          „Ohio“ aus dem Musical „Wonderful Town“ (1953)

          Konzert Suite Nr. 1 für Sopran, Tenor und Orchester
          aus dem Musical „West Side Story“ (1957/1992)
          „Maria“, „One Hand, one Heart“, „Somewhere“, „Balcony Scene“

          ハッピー・バースディ レオナード・バーンスタイン

          ・・・とか言っても、私、個人的にバーンスタイン知らんし
          私がウィーンに来てからだって
          バーンスタイン指揮のコンサートってあった筈なんだけど
          こちらに来てから15年くらいは
          ともかく仕事・仕事・仕事でコンサートとか全然行ってなかったし(汗)

          バーンスタインの愛弟子の佐渡裕氏にとっては
          特別なコンサートなんだろうなぁ、感慨深いだろう。

          ウエスト・サイド・ストーリーはワタシも好き。
          バーンスタインの交響曲は、ナマで何回か聴いてはいるし
          バーンスタインのミサだって
          センパー・デポでとんでもない演出で観たし聴いた(面白かった)
          キャンディードはフォルクス・オーパーでコンサート形式で聴いた。

          ・・・とは言え、そう頻繁に演奏されるワケではない。

          キャンディード序曲・・・いや、この曲知ってるけど
          佐渡裕氏の指揮から出てくるオーケストラの音は
          力一杯の大音量で
          あ〜、こういう音だったら
          室内のオーディトリウムじゃなくて
          野外音楽堂で演奏されたら、絶対にウケたのに。

          天候悪くてホールで残念と思ったのは初めてかもしれない。

          クリストフ・ワーグナー=トレンクヴィッツが司会。
          ともかく、この人、話が面白い(昔からいつも面白い)
          バーンスタインの話を
          バーンスタインはニューヨーカーで
          それはベートーベンとかマーラーがウィーンっ子というのと同じ(爆笑)とか
          オペラ座のプラーヴィーとのエピソード絡みで聞かせたり
          プラーヴィー知ってる世代には楽しい話。
          (観客が、ほとんど私以上のご年配なので・・・)

          Mass のチェロのソロ弾いた若いチェリスト
          レオナルト・エルシェンブロイヒのチェロの音が美しい・・・

          後半、トレンクヴィッツの解説付きで
          On the Town からの曲。

          最初の I can cook, too はエリザベト・クルマン登場。
          ミュージカルなのでマイク付きだが

          あ〜〜〜〜〜
          クルマンのメゾソプラノ、ご存知の通り
          ものすごい美声なの。
          クラシック的な発声法が生来のごとく自然に美声が出て
          ビロードのような厚みのある温かい手触りの声が

          ミュージカルに全然合ってないんですけどっ!!!!

          マイク付けても、声があまりに美しすぎて
          大音量のオーケストラにモロに埋もれてるし
          喉開いて鼻に抜けるクラシック発声で、声が浮いてるし

          ミュージカルのしかもアルトのパートって
          私の独断・偏見で言っちゃえば
          多少ハスキーな地声で、クラシックみたいに声を被せず
          マイク通してガリガリ聴こえてくるような感じが好みなので
          こんなにクラシックに歌われても・・・

          こういう感じで
          テノールのカークもソプラノのペティボンも歌ったら
          ど、ど、ど、どうしよう・・・(不安)

          ところが、やっぱりマイク付けて出てきたイギリスのテノール。
          あらま、この人、ミュージカルでも違和感のない声だわ。
          声量はどうなのかは不明だが(マイク付いてるから)
          高音もしっかり出して、しかも英語の発音キレイだし。

          次のキャンディードでは一番有名な曲(だろうと思う)のデュエット。
          出て来たパトリシア・ペティボン
          ・・・すごいカッコしてる。ヘンなメガネかけて
          何だか最初から役にすっぽりハマっている上

          ペティボン、マイク付けてない・・・
          相手のテノールはマイク付き。

          ちょっと待て、ペティボンってクラシックのソプラノだよね?
          声量すごいだけじゃなくて
          クラシックの発声から
          ミュージカル的な地声っぽいアニメ声まで
          すべての声の色を使い分けていて

          しかも、声だけじゃなくて、全身で演技していて
          テノールとの掛け合いもユーモラス。
          テノールもミュージカル経験ありそうで
          ノリノリで演技していて、掛け合い漫才みたい。

          だから、と言ったら失礼なのだが
          その後の、美声のクルマンのオールド・レディス・タンゴが
          声が美しすぎてオーケストラに埋もれて浮きまくっている上に
          オーケストラ独奏の時のクルマンの動きって
          タンゴじゃなくて・・・ハワイのフラダンスっぽい・・・
          いや、オールド・レディだから、それで良いんだろうか(疑)

          え〜い、オペラやクラシック・リートとミュージカルって
          演技もダンスも、発声法も違うんだよ〜〜〜(たぶん)
          いくら大物でキャッチ・アイとは言え
          ちょっとクルマン、浮きまくり。

          しかもその後のクネゴンデのアリアで出てきたペティボンが
          小物を使って、コンサート・マスターをしつこく弄くり回し

          マイクなしで、しかもアニメ声で
          更に、このアリア、クラシック的なソプラノ部分も多いのに
          見事に声を自然に使い分けて

          アリアで語り、表情(泣いて笑って)がスゴイし
          声がまたスゴイし、あまりに見事なアリア。

          コンサート・マスター、ソロの途中に
          ペティボンに膝に乗られたり、抱きつかれたり
          頭に王冠置かれたりでお疲れ様です(笑)

          しかしすごいな、ペティボン・・・

          ワンダフル・タウンの「オハイオ」でペティボンとクルマンのデュエット。
          その後、お待ちかね、ウエスト・サイド・ストーリーからの名曲の数々。

          テノールのカークのマリアが・・・巧かった。
          これはリリック・テノールとしてはたまらん曲だろうが
          切々と、熱い喜びを持って、高音まで神経に触らず歌い上げたのは見事。
          短い曲だかソプラノの Somewhere は
          ワタクシ的には最も名曲だと思っているので、胸がジーン・・・

          アンコールで、やっぱりウエスト・サイド・ストーリーの
          シンフォニック・ダンスだろう・・・と思っていたら
          いやいや、しっかりキャンディードからの曲で
          しかも、また歌手3人出てきて歌ってる。
          (すごいサービス精神)

          歌手がまだ舞台に居る状態で
          テノールが足だけで踊りながら
          指揮者に「ほら、あれをやりなよ」みたいな合図を送って
          最後は、もちろんながら、マンボで終わり(笑)

          マンボの間、テノールは踊りまくり
          ペティボンも踊っている横で
          クルマンが戸惑った様子で立っていたのが
          かわいそうと言えばかわいそうだったんだけど。

          トレンクヴィッツの解説が長めだったのも原因ながら
          22時30分まで、たっぷりバーンスタインの
          オペレッタやミュージカルを堪能させてもらって
          ノリノリで実に面白かった。

          こういうコンサートなら野外音楽堂の方が良かったかも。
          とは言え、ここ数日は夏も終わりで
          雨もパラパラ降って、気温も20℃切っていて
          夏の後には、すぐに冬が来るヨーロッパ(笑)

          佐渡裕氏が、ご自分とバーンスタインについて語ったビデオが
          トーンキュンストラーの Youtube サイトにある。
          (音声はドイツ語が被るので聞きにくいかも・・・)
          ご興味ある方はどうぞ → ここ

          トレンクヴィッツの解説の中で

          バーンスタインは孤独だった
          孤独すぎて、周囲に人がいないと耐えられないほどだった

          というエピソードを聞いて
          いつも大物と一緒の人懐っこいバーンスタイン像の後ろに
          そういう救いようのない孤独があったんだなぁ、と
          なんとなく、ストンと心に落ちた私に
          どうぞ1クリックをお恵み下さい。


          バンベルク交響楽団 + ヤクブ・フルシャ

          0
            Schloss Grafenegg Auditorium 2018年8月24日 19時30分〜21時50分

            Bamberger Symphoniker
            バイオリン Nikolaj Szeps-Znaider
            指揮 Jakub Hrůša

            Johannes Brahms (1833-1897)
             Konzert für Violine und Orchester D-Dur op. 77 (1878)

            Bedřich Smetana (1824-1884)
             „Má vlast“ / „Mein Vaterland“
               1. Vyšehrad (1874)
               2. Vltava / Die Moldau (1874)
               3. Šárka (1875)
               4. Z českých luhů a hájů / Aus Böhmens Hain und Flur (1875)

            バンベルク交響楽団と
            2016年から首席指揮者になったヤクブ・フルシャのコンサート。

            バイオリニストにデンマーク出身のバイオリニスト
            ニコライ・ズナイダーが出たのだが
            ・・・なんか、名前が変わっているんだけど?
            ズナイダーの前に Szeps とくっ付いているのだが
            結婚でもしたのか、どこかの養子になったのか
            個人的な事は別に興味ないんだけど、ちょっと気になる。

            名前に見知らぬ語がくっ付いていても
            ズナイダーは、やっぱりガタイがデカくて立派。
            持っているバイオリンが小さく見える。
            フルシャと並ぶとかなりの身長差だろう、と推測は出来るが

            本日の席は、舞台の真上で
            ほとんど、頭からしか見られない高所恐怖症は座れない席なので
            実際のところ、どうだったのかはわかりません。

            そうなの、やっと待ちに待った悪天候で
            野外音楽堂ではなく、オーディトリウム・ホールでのコンサート!!!
            オートバイや飛行機の雑音や
            コオロギや駆け回る子供の叫び声に煩わされずにオーケストラが聞ける!!!

            バンベルク交響楽団の音が骨太で厚みがあって
            ブラームスがずっしり、心に触れてくるのだが
            久しぶりに屋内のホールでオーケストラを聴いたからかもしれない。
            それに、たぶん、このオーケストラの音量とかバランスとか
            もともと野外音楽堂の音響を念頭に置いていたために
            ホールでは、かなり豊かに響く結果になった、という可能性はある。

            ズナイダーのバイオリンの音色
            出だしが割にガリガリ聴こえて来たものの
            テクニックは盤石だし
            すごく男性的(とか言い出すとジェンダー・スタディの人から文句出そう)で
            マッチョというよりは
            ちょっと垢抜けない田舎のワイルド・ボーイという感じ。

            感情たっぷりでダイナミックに聴かせるけれど
            きちんと節度があって
            オーケストラの音色と、骨太な素朴感がむちゃくちゃ合ってる。
            変に洗練され過ぎない、ワイルドで情熱的なブラームス。

            第2楽章は、バイオリンよりも、最初のあのオーボエのソロがメインだが
            (あ〜、すみません、勝手な解釈です)
            オーボイストのソロが、もう、絶妙で
            澄んだ音色で、情緒たっぷりに歌って歌って歌って
            ・・・あれは、バイオリニストは弾きにくいだろう(爆笑)

            いやもう、むちゃくちゃ良い感じ。
            ブラームス万歳。私、実はブラームス好きなんです。
            多少ワイルドでガリガリしても
            音楽的にものすごく夢中にさせる演奏で
            心にポッと灯りがついたようで、すごく嬉しい気分。

            アンコールにバッハの無伴奏。
            (何でみんな、アンコールだとバッハの無伴奏なんだ?!)

            後半は、スメタナの「我が祖国」から最初の4曲。

            うはははは、さすがフルシャ、スメタナは暗譜ですか(笑)
            そりゃ、チェコ人だもんねぇ。
            スメタナの我が祖国と言えば、やっぱりチェコ魂が燃えるんだろう。

            これが熱演で・・・
            フルシャの指揮も、見てくれ構わず
            指揮棒を振るわ、震わせるわ
            指揮台でジャンプはするわ(笑)

            最初のハープのソロの美しさから
            バンベルク交響楽団の金管の輝かしい響きに
            弦のうねり、ダイナミックさがものすごい。
            本当に物語を語られているような雄弁さ。

            モルダウは、もう誰でも知っている曲なのだが
            こういう名曲こそ
            通俗的にせずに、如何に名曲として聴かせるかは
            指揮者の腕の見せ所だろう。

            いや〜ん、ブラームスのオーボエに続いて
            フルートの掛け合いも素晴らしいじゃないの。

            オーストリアやハンガリーがドナウなら
            チェコはヴルタヴァだもんね。
            もっとも、スメタナの生誕地のリトミシュルも
            フルシャの出身地のブルノも、ヴルタヴァは流れていないが。

            水源がボヘミアにあるから、あの出だしが音楽になるわけで
            ドナウ川の水源は現在のドイツだから、水源の音楽表現をしたら
            ドイツの曲になってしまう・・・などと
            ついついくだらない事を考えたりして
            ヴルタヴァの流れのキラキラに身を任せた。

            最初のダイナミックさが、ここでも充分に発揮されていて楽しい。
            このダイナミックさは、第3曲のシャールカで最大限の効果を出してくる。
            (これもくだらない話だが、シャールカの話って
             聖書のユーディットと似てるわ。女性って強い・・・)

            ボヘミアの森と草原から、の鬱蒼とした森の感じや
            多様されるチェコの民族舞踊のメロディなど
            クリアでダイナミックで明るくて
            郷土愛に満ち溢れている感じが、すごくチャーミング。

            この曲、割に苦手だったんだけど(全曲演奏されるとむやみに長い)
            ここまでバッチリ聴かせてくれると魅了されてしまう。
            全く退屈しなかったの、初めてかもしれない。

            フルシャ、すごく良いじゃないの。
            オーケストラとの相性もとても良さそう。
            オーケストラの管楽器は名人揃いだし
            弦の厚みのある暖かい響きも、とても素晴らしい。

            スメタナを聴きながら
            最近、チェコに行っていないなぁ・・・と
            (昔はルネッサンス追っかけで、週末になると行っていた時期がある)
            ブルノもリトミッシュル(ルネッサンスのお城がある!)
            また行きたい気分になって来た私に
            どうぞ1クリックをお恵み下さい。



            この後、レイト・ナイト・セッションがあったようだが
            来る時も、途中でものすごい豪雨で、15分くらい高速道路を
            時速30キロで走らざるを得ないような状況だったし
            帰りも、豪雨ではないけれど、雨が降っていて
            交通状況がどうなるかわからないので、さっさと帰って来ちゃいました、すみません。

            ヨーロピアン・ユニオン・ユース・オーケストラ + ノセダ

            0
              Schloss Grafenegg Wolkenturm 2018年8月23日 19時30分〜21時50分

              European Union Youth Orchestra
              ピアノ Rudolf Buchbinder
              指揮 Gianandrea Noseda

              Edvard Grieg (1843-1907)
               Konzert für Klavier und Orchester a-Moll op. 16 (1868)
              Pjotr Iljitsch Tschaikowski (1840-1893)
               Symphonie Nr. 5 e-Moll op. 64 (1888)

              ヨーロッパ・ユニオン・ユース・オーケストラの
              グラーフェネックでの最終公演は
              指揮者にジャナンドレア・ノセダを迎え
              ピアノはグラーフェネック音楽祭の芸術監督で
              いつも花束持って、美人のソリストとほっぺにチューしている
              ルドルフ・ブッフビンダー。

              まだまだ暑いので、野外音楽堂でのコンサートである。
              この間は、音響悪くない・・・と思っていたけれど
              席の位置のせいか
              あるいは風向きなのか
              何だか今日は音が飛んで来ない感じがする。

              しかも雑音がものすごく気になる。
              外のオートバイの爆音、時々飛ぶプライベートな飛行機の音に加えて
              なにせこの音楽祭、芝生チケットというものがあって
              ピクニック気分で来られるので
              今日は子供二人が、向こうの芝生の上を
              コンサートの最中、駆けずり回って
              時々、奇声をあげている・・・(絶句)← 親はコンサートを聴いているらしい。

              グリーグのピアノ協奏曲と言ったら
              名曲中の名曲で、誰でも知っている。

              ブッフビンダーは71歳とは言え、現役のバリバリで
              骨太で華麗なピアノの音なんだけど
              風向きのせいか、席の位置のせいかはわからないが
              何だか、オーケストラがものすごく不安定に聴こえてくる。
              あんな難曲を、安定した手のポジションでよく弾くなぁ、と
              感心して見ていたのだが
              ミスタッチとは言わないけれど、一部に当たり損ねがあったり
              いや、でも、もしかしたら、そういう曲なのか(←私のうろ覚えかも)

              このフェスティバルに来ている人は
              基本的には全員ブッフビンダーを知っていて
              多かれ少なかれファンなので

              何と、何と、何と
              いつも絶対にアンコールしないブッフビンダーが
              アンコールを2曲。

              しかも最初のアンコールが
              ヨハン・シュトラウスのパスティッチオ!!!!

              これ、確か最後に聴いたのが
              プレートルとウィーン交響楽団の最後のコンサートの時だった。
              洒脱でヴィルトゥオーゾ的要素が散りばめられていて
              なのに、人を脅かすようなものではなくて
              あくまでもウィーン風に、軽くチャーミングに
              ドイツ語で言うなら、とことんゲミュートリッヒ。

              いやもう、こういうモノを弾かせたら
              ブッフビンダーに敵うピアニストはいないだろう。

              これ聴いたら、グリーグなんて別にどうでも(失礼!)と思っちゃったけれど
              何と、その後に、もう1曲、バッハを演奏。
              右手と左手がずっと交差している面白い曲で
              これはクラシック的にバロック的に
              あくまでも正確で端正で、唸ったわ、私。
              ブッフビンダー、オーケストラとの共演じゃなくて
              リサイタルやったら、また聴きに行かなくちゃ・・・

              後半のチャイコフスキーの交響曲5番。
              これも名曲で、みんな知ってる・・・・けれど

              私の体調か、席の位置か、風向きか
              ともかくわからんのだが
              やっぱりオーケストラが不安定に聴こえてくる。

              ノセダの指揮を見ていると
              とても歌わせるイタリア人だなぁ、とは思うのだが
              時々、リズムと指揮の動きが一致しなくて
              (いや、それはそれで、そういう指揮法なのだろうが)
              ちょっと船酔いみたいにクラクラくる。

              別に私の体調、悪くない筈なんだけど
              でも、もしかしたら
              夏休みの宿題を大いにサボっているのが原因かも・・・

              将来有望な若いメンバーたちのユース・オーケストラなので
              技術的にどうのこうの、というのはなかったんだけど
              いまいち、乗り切れなかったのは
              自分が悪い。

              これ、個人的メモであって
              音楽批評でも何でもないので
              ウソを書くわけにいかないので・・・
              すみません、読者の方々はお目汚しですのでご放念下さい。

              今週は木・金・土・日と連続で
              往復約140キロのドライブをする予定の私に
              どうぞ1クリックをお恵み下さい。



              この暑さも今日が最後らしい。
              ザルツブルク郊外では豪雨で道路が閉鎖されて孤立地帯が出来たり
              何だか、本当に変な気候。

              フローリアン・ベッシュ + マルコルム・マルティヌー

              0
                Mozarteum Salzburg Grosser Saal 2018年8月20日
                19時30分〜21時15分

                バリトン Florian Boesch
                ピアノ Malcolm Martineau

                Franz Schubert (1797-1828)
                Der Wanderer D 649 (1819)
                Der Wanderer an den Mond D 870 (1826)
                An den Mond D 259 (1815)

                Gustav Mahler (1860-1911)
                Lieder eines fahrenden Gesellen (1884/85)

                Ernst Krenek (1900-1991)
                Reisebuch aus den oesterreichischen Alpen
                Liederzyklus op. 62 (1929)

                今年のザルツブルク音楽祭のチケットは
                クルレンツィスのベートーベン・チクルスも
                ベルリン・フィルも、全部外れ。
                もちろん、私のチケット予算の少なさが一番の原因ではあるが
                フローリアン・ベッシュのリーダー・アーベントは
                何とか予算内にて確保した。

                モーツァルテウムの大ホールでのコンサートは初体験。
                開演前にビュッフェでコーヒー飲んでいる時に
                庭に出たら、あ〜、昔見た「魔笛小屋」があるわ。
                仕事している時に、これ、色々とトラブったんだったっけ
                ・・・と考えると、引退して良かった、とつくづく思ったりして(笑)

                今回のテーマは見てお分かりの通り Heimat
                ドイツ語のハイマートという言葉は
                日本語に訳すとしたら「故郷」なんだけど
                いわゆるロマン派詩人たちが多用していて
                「ふるさと」よりも、もっと感情的な思い入れがある。

                う〜ん、「ふるさと」ねぇ・・・
                私の「ふるさと」=子供時代を過ごした場所と言うなら
                敢えて言えば東京なのだろうが(何回か引っ越しはしている)
                大都会東京では
                ウサギも美味しくないし(すみませんオヤジギャグです)
                小鮒も釣った事がないので、どうも「ふるさと」という感じがしない。
                (それに、とうとう人生の半分以上をウィーンで過ごしている事になってしまったし)

                まぁ、ワタクシ事はともかくとして
                前半はシューベルトの「旅人」シリーズ的な3曲。
                あの有名な旅人ではなく D649 はシュレーゲルの詩。

                何とまぁ、繊細な表現。
                次のザイドルの詩による D870 も
                ゲーテの月に寄せる D259 も
                無駄な力を一切省いて
                徹底的に優しい表現を使っているのに
                ヘンに甘くならず、禁欲的なまでにビーダーマイヤー的な内向性を出している。

                ところが、次のグスタフ・マーラーのさすらう若人になったとたん
                ベッシュは豹変した。
                とことんドラマチック。
                声量も極端なピアニッシモから
                圧倒的なフォルティッシモまでのバリエーションを使い分け
                ほとんど暴力的なまでの激しさを見せる。

                最初の曲で
                ああああ、この暴力男、振って他の男性と結婚したのは
                きっと間違いじゃないわよ・・・とか思ってしまった程である。
                心の中にナイフ持ってるというのも
                本気でイライラしながら叫びまくっているので
                あ、もちろん、音楽的表現というのは充分にわかってはいるけれど
                さっきまでの、とことん優しいシューベルトとの対比があまりに凄い。

                私の今回の目的は
                後半のエルンスト・クルシェネクの「オーストリア・アルプスからの旅日記」である。
                (クルシェネクは、本人もオーストリア人もクレネックと名前を呼んでいるが
                 日本のウィキだと、もともとチェコ語のエル・ハチェックがあるため
                 日本ではクルシェネクとかクジェーネックなどと読まれているらしい)

                この曲、クルシェネクが自分でテキストを書き
                シューベルト的な新ロマン派のトナール(一部例外あり)で作曲したもので
                テキストの皮肉が、むちゃくちゃ効いていて
                オーストリアあるあるの満載。

                ハイマートという言葉より
                ファーターラントという語を使っているのが
                シューベルトのビーダーマイヤー時代から
                第一次世界大戦後の、オーストリアのアイデンティティ・クライスを感じさせる。

                1929年あたりは第一次世界大戦の敗戦後
                ハプスブルクのドナウ帝国が崩壊して
                各地の民族が独立して主権国家が成立し
                ドイツはドイツでプロイセンが覇権を握ってしまって
                突然、自分たちが世界の中心から、放り出されたような
                アイデンティティの不安定感が強かったんだろうなぁ。

                当時の交通機関(2曲目、これ、笑える)から
                アルプスの修道院の偉そうな修道僧の話から
                セラーでワイン飲みながら、人生の無意味と向かい合ったり
                不安定な天気に一喜一憂したり(これも笑える)

                好き、と言ったら誤解されそうなのだが
                6曲目の山村の墓地という曲の
                ゾッとするような死と貧困への目線には圧倒される。
                8曲目のワインの歌はホイリゲで歌われるシュランメルを思い起こさせるし
                10曲目の Auf und ab なんて
                旅行を楽しむどころじゃなくて、あちこちでパンフレット搔き集め
                写真撮りまくって絵葉書を書きまくって
                まぁ、現在で言えば、スマホで写真やビデオを撮って
                インスタに載せるのに夢中になって
                本当に旅を楽しんでいるのかわからん、というのとよく似てる。

                かと思えば政治的アピールもして
                雷も落ちて、ホームシックにもかかり
                最後19曲目で、故国=ファーターラントに戻っては来るのだが

                クルシェネクのこの曲に背筋が凍るのは
                その後、最後の20曲目。
                アカペラで12音技法を使ったエピローグ。

                フローリアン・ベッシュはこの曲を完璧にレパートリーにしているので
                ドイツ語の発音のクリアさに加えて
                表現の幅が中途半端でないこの20曲を
                それぞれ見事に歌い上げる。

                ピアノのマルティヌーの演奏も抜群に素晴らしい。
                完璧だわ、もう、うっとりしてしまう・・・

                オーストリアに暮らしていると
                あるあるがクルシェネクの皮肉な目で余すところなく書かれている上
                当時の政治・経済状況まで手に取るようにわかって
                何ともやるせない思いに駆られるこのチクルス
                私はとても好きだ。

                この曲、ベッシュが録音しないかなぁ、と長く希望していたのだが
                売店にあった!!!!!(狂喜)
                ちなみに、アマゾン(ドイツ)では、ほとんど出て来ない。
                ヘルマン・プライの録音がある筈なのだが
                全集の中で3曲しか歌ってない。
                (この曲は最初から最後まで聞いて、その良さがわかるのだ!(断言))

                ベッシュの録音のCDがあったなんて(感涙)
                イギリスの Hyperion から MP3 のダウンロードもある。→ ここ


                今までツェドネックのテノール版しか持っていなかったので
                これは嬉しい \(^o^)/

                1泊だけだが、明日の仕事とコンビネーションも出来て
                素晴らしい美声と表現力を楽しませてもらって
                すごく幸せになっている私に
                どうぞ1クリックをお恵み下さい。



                グシュタード祝祭オーケストラ + ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン

                0
                  Schloss Grafenegg Wolkenturm 2018年8月19日 19時30分〜21時50分

                  Gstaad Festival Orchestra
                  ジークリンデ(ソプラノ)Martina Serafin
                  ジークムント(テノール) Jonas Kaufmann
                  フンディング(バスバリトン)Falk Struckmann
                  指揮 Jaap van Zweden

                  Richard Wagner (1813-1883)
                   Vorspiel zum ersten Aufzug der Oper „Die Meistersinger von Nürnberg“ (1868)
                   Vorspiel und Liebestod aus der Oper „Tristan und Isolde“ (1865)
                   „Der Ritt der Walküren“ aus der Oper „Die Walküre“ (1870)
                   „Die Walküre“ Oper in drei Aufzügen (1870) Erster Aufzug

                  スイスのグシュタードで行われるメニューイン・フェスティバルのために
                  編成されるグシュタード祝祭オーケストラと
                  ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンのコンサートは
                  かなり以前から完全に売り切れだったのだが

                  それって、やっぱりヨナス・カウフマン人気ですか?(爆笑)

                  グシュタード祝祭オーケストラそのものは
                  2013年10月8日にクリスティアン・ヤルヴィの指揮で聞いていて
                  至極マジメな音を出すオーケストラ、という印象だったので

                  今回、まずは前半でひっくり返った。

                  ワーグナー代表作三連発(笑)
                  ニュールンベルクのマイスター・ジンガー序曲という
                  華やかな曲が、いやもう、実に見事に華やかで輝いているではないか。

                  オーケストラの編成が大きいというのはあるにしても
                  野外音楽堂でこんなに響いて来るなんて
                  あのホール、音響調整でもしたんだろうか?

                  例年、気になるコオロギの合唱も
                  今年はほとんど気にならない。
                  自然保護区域だから、ヘンな薬は撒いてないと思うのだが
                  あまりの暑さにコオロギがへばってるとか・・・(疑問)

                  圧倒的な音量で、朗々と響く輝かしいオーケストラの音。
                  しかも、このオーケストラの金管、むちゃくちゃ巧い。
                  音量が大きいのに、ニュアンスと解像度に欠けるところがないので
                  大味になっていないのは
                  指揮者の手腕かもしれない。

                  うわああ、気持ち良さ爆発。
                  すっきり爽やか、気分は高揚して
                  歌試合でも始めたくなる(こらこらこらっ)

                  指揮者はそのまま舞台に出ずっぱりで
                  トリスタンとイゾルデが
                  これまた、素晴らしいニュアンスの音色で
                  ワーグナーのあのミステリアスな雰囲気が
                  色っぽく響いて来て
                  うわあああ、スイス人ってひたすら勤勉でマジメと思っていたら
                  こんな背徳的な音も出せるのか(誤解があるが気にしないように)

                  ワルキューレの騎行も、ばっちりの解像度に
                  むちゃウマの金管が、もう体感的な快感で悶えてしまう。
                  終わった後に、若い女性がキャ〜ッと感激のあまり叫んでいたが
                  私も叫びたいくらい快感だった。

                  後半はワルキューレの第一幕だが
                  始まる前にブッフビンダーがマイクを持って登場。

                  ヨナス・カウフマンが
                  ・・・と言ったとたん、客席から、あああああ、というため息の合唱。
                  すわ、キャンセルか、調子が悪いのか、と思ったら
                  足の指を折ったとの事で(何やった、カウフマン?)
                  時々座る事をお許し下さい・・・って
                  あ〜、そりゃ、全然構いません。

                  カウフマンは運動靴で
                  座った時には、左足を前の足置き台に上げて靴底を見せていたが
                  歌っている時には、ちゃんと立っていたし
                  声に影響はなかった(と思う)

                  しかしカウフマンの美声の質は
                  やっぱりテノールというよりバリトンだわ。
                  最初、少し高音が出にくそうだったけれど
                  途中からどんどん調子を上げて来て
                  後半の盛り上がりのところは、固唾を飲んで集中できる素晴らしさ。

                  思いがけず、ジークリンデを歌ったマルティナ・セラフィンが素晴らしかった。
                  いや、あの、わはは
                  ハラルド・セラフィンとミルヤーナ・イロッシュの娘だから
                  親の七光りかよ、とか思っていた時期もあったし
                  割にキンキンした硬質な声という記憶があったのだが

                  ドラマチック・ソプラノの面目躍如。
                  強い声で、ばっちり客席に飛んでくるし
                  ジークリンデの役柄にぴったり。
                  (ちょっと年増に見えるんだけど
                   実際は48歳で、カウフマンが49歳だから年下)

                  マルティナ・セラフィンだけが
                  全く譜面台を使わず、完璧に役が入っていた。
                  (カウフマンとシュトルックマンも、譜面は見ていないけれど
                   一応、念の為?に下に譜面台を置いていた)

                  シュトルックマンのフンディングも素晴らしい。
                  堂々としたバス・バリトンで
                  品はあるし、声量はあるし
                  しかも声のニュアンスが深くて
                  コンサート形式なのに、ばっちりフンディングの役が見えた。

                  オーケストラも素晴らしい。
                  指揮者のヤープ・ヴァン・ズヴェーデンって
                  もしかしたら、すごい指揮者かもしれない・・・(って今更何を?)
                  オーケストラのプレイヤーたち全員が
                  一瞬の緩みも見せず、指揮者と一体になって
                  見事なワーグナーの世界を創り出してくれた。

                  満足感一杯で、何だかもう、むちゃくちゃ幸せで
                  (ワルキューレ第一幕って、華やかに逃亡で終わるから)
                  気分良くなっていたら
                  オーケストラの後ろの方で、メンバーが動きを見せたので
                  まさか、このプログラムでアンコール?とドキドキしていたら

                  わ〜っはっは、やったよ、このオーケストラ
                  ローエングリンの第三幕への前奏曲 ♡

                  聴衆もみんな知っている曲だとは思うのだが
                  こういう曲って、あちこちで
                  「あれって何の曲?」というディスカッションが始まったりして
                  結構、演奏中にお喋りの声が聞こえて来たのは残念。
                  (前に座っていたブラヴィ叫びまくりの男性が怒ってた)

                  ローエングリン、ものすごく元気な演奏。
                  もちろん、解像度、ニュアンスも素晴らしかったのだが
                  それより、多少、大味になっても
                  大音量で、むちゃくちゃ元気に
                  景気良く演奏しちゃおうじゃないの、という感じで
                  その爽快感たるや・・・言葉に出来ない。

                  大ブラボーを叫ばれて、なかなか拍手も止まないのだが
                  オーケストラのメンバーが、あちこちで抱きついて
                  メンバー同士で挨拶して退場。
                  こういうのは許せる(笑)

                  ご存知、仕事している時には避けまくっていたワーグナーだが
                  やっぱり、ワーグナーの音楽って麻薬だわ。
                  劇伴というか、ゲーム音楽というか
                  映画音楽のハシリとか言うと
                  ワグネリアンから夜道でグサッと刺されそうだけど
                  感情への語りかけの力が、こんなに強い音楽って
                  他に例を見ない。

                  ワーグナーで満腹だけど
                  でも、もっと聴きたいなぁ、とか思いつつ
                  3日間連続のドライブを終えた私に
                  どうぞ1クリックをお恵み下さい。




                  NDRエルプフィルハーモニー + ウルバンスキ

                  0
                    Schloss Grafenegg Wolkenturm 2018年8月18日 19時30分〜22時

                    NDR Elbphilharmonie Orchester
                    ピアノ Hélène Grimaud
                    指揮 Krzysztof Urbański

                    Johannes Brahms (1833-1897)
                     Konzert für Klavier und Orchester Nr. 1 d-Moll op. 15 (1854-59)

                    Ludwig van Beethoven (1770-1827)
                     Symphonie Nr. 3 Es-Dur op. 55 „Eroica“ (1802-05)

                    NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団は
                    本拠地のハンブルクでは、なかなかコンサートのチケットが入手できない。
                    まぁ、理由はオーケストラそのものと言うよりは
                    新しく建ったコンサート・ホールによるのだが(笑)

                    クシシュトフ・ウルバンスキの指揮で
                    まずはブラームスのピアノ協奏曲1番。

                    ウルバンスキの指揮もキレが良い。
                    あの曲はブラームスのオーケストレーションがあまり良くなくて
                    時々、オーケストラ・パートが薄くなったりするのだが
                    堂々とした出だしから、薄くなるところも巧く繋いで

                    グリモーのピアノ!!!!

                    いや、すごい、信じられない。
                    タッチの力強いクリアな音質が
                    野外音楽堂なのに、一点の曇りもなく響いて来て
                    何ともマッチョな、いや、イケメンで骨太な音楽。

                    音楽に男性的も女性的もないはずなんだけど
                    グリモーのピアノのキレのよさとクリアな感覚
                    ダイナミック・レンジの広さと
                    ピンと通った背骨の強さ(表現がヘンなのはお許し下さい)
                    いやもう、実にカッコイイ。

                    もうこれ聴いちゃったら、別に後半のベートーベンのエロイカ要らないかも
                    ・・・と思っていたら
                    後半のエロイカの演奏にひっくり返った。

                    オーケストラの編成は普通のモダン・オーケストラで
                    弦も結構な数を揃えていたのだが
                    あの大きさで

                    なに、このあっさり感・・・

                    ピリオド奏法ではないけれど
                    時々、ノンビブラートも混ぜて
                    音のキレが非常に良い。
                    音楽の輪郭がクリアで迷いがない。
                    エロイカに時々ありがちな、不要な重さがない。

                    いや、あまりに重力感がなくて
                    ヒーロー的な第一楽章というよりは
                    エロイカじゃなくて、ドン・キホーテかティル・オイゲンシュピーゲルか
                    堂々とした「英雄」像を期待していたら肩透かしかもしれない。

                    第二楽章埋葬行進曲は、ものすごく丁寧に歌わせた。
                    ウルバンスキーの語り口、非常に「聴かせる」
                    その意味で饒舌とも言えるのだろうが
                    気負いや無駄な力がなくて
                    語るべきところは、充分に物語性を演出するのが巧い。

                    第三楽章、例のホルンの超難しいパート。
                    ブラームスのピアノ協奏曲の最初のホルンのソロが
                    あまりに、ちょっと、え? だったので
                    心配していたのだが
                    いやもう、見事に細かい部分まで聴かせてくれました (^^)v

                    オーケストラのアンサンブルの揃い方がちょっと粗い部分があったし
                    出だしで全員が揃っていない、という箇所も見受けられたけれど

                    木管パートのコミュニケーションがとても良い。
                    オーボエ首席が、なかなか面白いオジサンで
                    あれはオーケストラのムード・メーカー的な人なんだろうなぁ。
                    (ウルバンスキが終演後、最初に立たせていた)

                    このオーボエ首席を中心に
                    木管パートがとてもよくまとまっていてバランスも見事。

                    ティンパニ担当のパーカッショニストが、これまた・・・すごい。
                    ティンパニ、暗譜で演奏しているプレイヤー、初めて見た。

                    しかもティンパニの音の表情が、これまた素晴らしい。
                    身体の動きも、まるでダンスを見ているようなのだが
                    無駄な動きがなくて、徹底的にしなやか。
                    こういう、良い意味での職人芸がオーケストラを作るのだなぁ。

                    グリモーのアンコールもなかったし
                    ゲスト・オーケストラって、時々アンコールしてくれるし、と
                    鳴り止まない拍手だったんだけど

                    サブ・コンミスが、コンマスの肩に抱きついて
                    コンマスの譜面台の楽譜を
                    すべて閉じて
                    しかも閉じた楽譜の譜面台を
                    観客に見せて
                    非常に不愉快な表情で
                    ほら、アンコールなんてないのよ、と不機嫌そうな顔を見せたのは
                    あれは、プロのオーケストラで
                    しかも他の国への客演で、やって良い事なんですか?

                    ウルバンスキはエロイカのリピートを全部演奏させたし
                    確かに夜の10時になってしまって
                    オーケストラが帰りたいのもわかるんだけど

                    あのサブ・コンミスの態度で
                    それまで、うわ〜、良いコンサートだったわね、と思っていた観客の
                    30%くらいは
                    やっぱり北ドイツって、なんて失礼で無愛想なドイツ人だわ
                    と、思ったに違いない(断定)

                    (ああいう失礼な態度を取らなくても
                     他のオーケストラなんかは、指揮者からの許可を得て
                     団員同士が握手して、解散すれば、それで済む。
                     どこのオーケストラだったかは
                     鳴り止まない拍手の時に、指揮者に許可を得た上で
                     全員が揃って客席にお辞儀して解散した事もある。
                     そちらの方が、ずっとマナーに叶っているし、好感が持てる)

                    楽章間拍手もなく
                    非常にマナーの良い観客だったのに
                    オーケストラ・メンバーのマナーの悪さで大きなマイナス。

                    まぁ、北ドイツだし、ハンブルクだし(って意味わからんが)
                    どうせ、エルプ・フィルハーモニーの建物のコンサート・チケットは取れないし
                    (興味は建物だけよ、と、あのコンミスに言いたい(笑))

                    私がハンブルクに行くとしたら
                    ノイマイヤーのバレエを観に行くだけにして
                    オーケストラは別にどうでも、という気分になった私に
                    どうぞ1クリックをお恵み下さい。


                    トーンキュンストラー + 佐渡裕/齋藤有香理

                    0
                      Schloss Grafenegg Wolkenturm 2018年8月17日 19時30分〜21時

                      Tonkünstler-Orchester Niederösterreich
                      ソプラノ Anna Samuil
                      テノール Christian Elsner
                      バリトン Lucas Meachem
                      少年合唱 Wiener Sängerknaben
                      コーラス Wiener Singverein
                      指揮 Yutaka Sado
                      指揮 Yukari Saito

                      Benjamin Britten (1913-1976)
                      „War Requiem“ für Sopran, Tenor, Bariton, Chor, Knabenchor,
                      Ensemble und Orchester op. 66 (1961/62)

                      2018年グラーフェネック・フェスティバルのオープニングは
                      ブリテンの戦争レクイエム。

                      コンサート前の18時からライトシューレで
                      シューベルトの弦楽五重奏(D956) 2. Satz Adagio を
                      Atalante Quartett が演奏し
                      ブッフビンダーの挨拶
                      低地オーストリア州州知事のミクル・ライトナーのスピーチ
                      俳優のヨゼフ・ローレンツがウィルフレッド・オーエンの詩をドイツ語で朗読
                      その後、フランツ・フラニツキー、アンドレアス・コール
                      メルセデス・エッヘラーとマルレーネ・ストレールヴィッツでの
                      公開討論会という催物。

                      2018年は、第一次世界大戦終焉の1918年と
                      オーストリアがドイツ・ナチスに併合された1938年の記念の年だから。

                      ブッフビンダーが
                      音楽家として、平和のために何ができるか
                      音楽は感情と知識で演奏するものであって
                      感情だけでは良い音楽にならない
                      と、淡々と語ったのが非常に印象的。

                      フランツ・フラニツキーは1986年から1997年まで
                      オーストリア連邦の首相で、社会党の党首だった事もある。
                      私の記憶には非常に強く残っている人で
                      オーストリア自由党との確執や
                      ベルリンの壁崩壊後のオーストリアの舵取りを見事にした政治家だった。

                      アンドレアス・コールも国民党の政治家として長く活躍した人。
                      エッヘラーは緑の党でヨーロッパ議会議員の過去を持つ女優さんで
                      ストレールヴィッツはフェミニストの立場で著作や映画監督として活躍。

                      それぞれに、色々な立場の意見を述べて面白かったのだが
                      オーストリアの政治家として初めて
                      オーストリアのナチスだった過去と向き合わねばならない旨の発言をした
                      フラニツキーが、1918年から1938年までの間のオーストリアについて
                      あまりの経済的困窮状態で、1938年のナチスの併合を歓迎する他に
                      オーストリアが当時取る道はなかっただろう、と発言したのが印象的。

                      同時にエッヘラーからは
                      1920年代の女性事業家が書いた本の一部が提示された。
                      経済的な困窮は、何かが間違っているのではないか、という
                      非常に聡明な勇気のある発言を興味深く聞いた。

                      本当の討論になるためには
                      あまりに時間が足りなくて、かなり残念。

                      その後、本コンサートはブリテンの「戦争レクイエム」

                      実は、こういう作品があるのは知っていたのだが
                      ちょっと注意深く避けてまして(ごめんなさい)
                      まずは宗教曲だし
                      しかもレクイエムだし
                      (私はヴェルディのレクイエムがむちゃくちゃ苦手なのである)
                      その上、かなり長い曲で
                      比較的苦手なブリテンという
                      聴いておきたい、とか言う気が一切なかったんです(恥)

                      舞台一杯に詰め込まれた大編成オーケストラ
                      その後ろには100人以上のコーラス
                      下手(しもて)には、アンサンブル
                      そして、舞台下手(しもて)の観客席の横のところに
                      ウィーン少年合唱団。

                      手元のテキストが見えるように、という配慮か
                      今回は客席も比較的明るくなっている。

                      で・・・ちょっと思いがけなく感動してしまった。

                      大編成オーケストラは佐渡さんが指揮して
                      アンサンブルは齋藤有香理が指揮。
                      ウィーン少年合唱団のところには、別の指揮者が立つ。

                      齋藤有香理の指揮姿が美しい。
                      キビキビした動きで優雅で明確。
                      今回はアンサンブルだが
                      大編成オーケストラやウィーン少年合唱団との兼ね合い
                      アンサンブルで歌うバリトンとテノールとのバランスと絡みなど
                      見事に決めていて
                      これは、すごい指揮者が出て来たものだ。

                      ほとんど3箇所に分かれていて
                      しかもウィーン少年合唱団とは、かなりの距離があるので
                      指揮者同士の連携が巧く行かないとずれる可能性が大きいのだが
                      これが巧くハマっていて
                      あの長大な曲を最初から最後まで緊張感を持って聴かせたのは素晴らしい。

                      テノールは途中、ちょっと調子を崩したけれど
                      最後の、ほとんどアカペラのソロの時
                      上からヘリコプターの爆音が聞こえたのをものともせずに
                      正確な音程で歌ったのは・・・・うわああ、やっぱりプロってすごい。

                      バリトンが素晴らしかった。
                      英語のテキストのクリアさもさることながら
                      透明な美声で音楽の表情を
                      感情に溺れることなく歌って、ちょっと唸ったわ、私。

                      ウィーン楽友協会合唱団、今回は大人数で舞台に乗ったが
                      もともと巧いコーラスなのだが
                      今回も素晴らしい。
                      オーケストラに埋もれる事なく
                      ニュアンスを見事に出して
                      コーラスがこの曲を引っ張っていったような印象まで与える。

                      ブリテンらしい抑制の効いた音楽だが
                      音楽のニュアンスの多様さに圧倒される。

                      何となくエルガーのゲロンティアスの夢と雰囲気が似ていて
                      この上なくドラマチックなのに
                      レクイエムらしい慎ましさと敬虔さに満ち溢れていて

                      ・・・ちょっと涙出てきちゃった。

                      中に挟まるオーエンの詩が、これまた感動的、というより
                      考えさせられる内容が文学的に詰まっていて
                      特にオフェトリウムでのアブラハムの詩は
                      心をぐっさり刺す。

                      第一次大戦末期1918年に25歳の若さで
                      終戦の7日前に戦死したオーエンの
                      実体験に基づいた詩が
                      ブリテンのこの上なく繊細な音楽と一緒に歌われると
                      ヘンに感情的な叫びにならないだけに
                      ひときわ心を打つ。

                      喰わず嫌いしていてごめんなさい、と
                      本気で反省して
                      また機会があれば、ぜひ聴きたいと切望している私に
                      どうぞ1クリックをお恵み下さい。



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