ピッツバーグ交響楽団 + マンフレッド・ホーネック 1日目

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    Schloss Grafenegg Auditorium 2017年8月31日 19時30分〜22時

    Pittsburgh Symphony Orchestra
    バリトン Matthias Goerne
    指揮 Manfred Honeck

    Antonín Dvořák (1841-1904)
     “Rusalka Fantasy” Orchestersuite aus der Oper “Rusalka”
      (Zusammenstellung : Manfred Honeck, Bearbeitung : Tomás Ille)

    Gustav Mahler (1860-1911)
     Lieder aus “Des Knaben Wunderhorn” für Bariton und Orchester
      Rheinlegendchen
      Wo die schöne Trompeten blasen
      Das irdische Leben
      Urlicht
      Das Antonius von Padua Fischpredigt
      Revelge
      Der Tamboursg’sell

    Ludwig van Beethoven (1770-1827)
     Symphonie Nr. 7 A-Dur op 92 (1811-12)

    日中は気持ち良く晴れていて暑かったのに
    夕方グラーフェネックに到着する頃には
    怪しげな黒い雲が空に出て来ていて

    まだ降ってはいないのだけれど
    途中で会場を変えるリスクを避けたいと言う事で
    今回は最初からオーディトリウムでのコンサートになった。

    野外音楽堂ヴォルケントゥルムからの楽器の移動が大変そうで
    19時15分開始予定のコンサートは15分ほど遅れて開始。

    これ、来年のシーズンには申し込みの時に絶対に言うつもりだが
    外の会場の時に真っ正面でなくても全然構わないので
    屋内になった時に
    モロにオーケストラの上って席
    あと数回のコンサート、みんなそれなんだけど
    来シーズンは、もう絶対に「オーケストラの真上」はイヤ(涙)

    だいたい野外コンサート用の大編成オーケストラで
    しかも、もともと元気一杯で音量のあるアメリカのオーケストラが
    あの音響の良いホールで
    力一杯演奏したら、どんな音が出るか・・・

    最初のルサルカ・ファンタジーで
    耳塞いで出て行こうかと本気で思いました(涙)

    ルサルカ、美しいメロディがテンコ盛りだし
    ホーネックが選びに選んだナンバーのパレードは
    ドボルジャークってハリウッド映画の音楽家でも良かったんじゃないの
    と思わせるような、豪華絢爛、感情たっぷり
    メロドラマたっぷりの編成になっていて

    あの音響を吸収できる席だったら
    どんなに聴き映えがしたか(うううう、悔しい!!!)

    しかしまぁ、派手にアレンジしたわね、ホーネック弟は・・・

    マーラーの「子供の不思議な角笛」からのリートを歌ったのは
    マティアス・ゲルネ。

    ・・・涙

    だって、ゲルネの声って
    本当にあの人の身体の前面にしか飛ばないんだもん。

    というより、正確に言えば、顔の向きに飛ぶ声なので
    こんなオーケストラの真上の席だと
    ゲルネの頭の上の地肌だけ見えて
    声が聴こえにくい。

    顔の向きに声が飛ぶので
    まぁ、下向きに歌ったりすればもっと聴こえないけれど
    時々、ほんの少し、こちらサイドを見て
    ちょっと顔を上げると、むちゃくちゃ声が飛んでくる。

    何年か前から、もうバリトンというよりは
    ほとんどバス的な低音と声の色で(バリトン領域はもちろん出る)
    あまりに倍音たっぷりの深い美声なので
    ドイツ語そのもののテキストは、あまりクリアに聴こえて来ない
    ・・・けれど、あまりに美声だから許す(笑)

    最初の Rheinlegendchen の後に拍手が出てしまって
    かなりギョッとしたのだが
    次の Wo die schönen Trompeten blasen の後は
    拍手しだした人を、ゲルネが手をかざして「止めて」のサイン。
    (だいたい、Rheinlegendchen はともかくとして
     Wo die schönen Trompeten blasen の後に拍手できないと思うのだが)

    で、このトランペットの鳴り響く場所が
    ゲルネが、美声で情感籠めて
    しかも女の子のところは
    実に美しい弱音のファルセットで、すごく自然で
    ううううう、あまりに美し過ぎる。

    マーラーの曲って
    本当に時々、真剣に彼岸の世界へ飛ぶ。
    なにあの透明感と、リアルさを徹底的に排除した幽玄の世界は!!!

    ドラマツルギーとして
    トランペットの幽霊の後に
    子供を餓死させる母親の歌で
    その後に Urlicht というのは巧いなぁ。
    まぁ、愛があってもお腹は膨れないが(関係ない)

    Urlicht をじっくりと歌い上げた後
    (ちょっとオーケストラがアレ?って言うのはあったけど(しかもあの曲で!)
    本来、しっかりドイツ語で「語れる」歌手なら
    途中で、客席から笑い声が出るかもしれないアントニウスも
    歌詞は全く何を歌ってるのかわからなかったので
    (時々、単語らしきものは聞こえてくるし
     声は美しいし、ちゃんと音程もリズムも合っている)
    観客も、まぁ、内容分からず、笑いもせず
    シリアスに真面目に聴いていたので結果的には良かったかもしれない。

    ただ、その後の太鼓持ち(落語でも宴会でもありません)の歌2曲は
    ちょっと暗くて似ている歌が続いたって感じ。
    それでなくても声が低くて音質も暗いので
    異様に陰気になって終わったのも何かなぁ。

    他にも景気の良い曲は数曲あるので
    カッコウとナイチンゲールとかを歌ってくれたら良かったのに
    (というのは、私のただのワガママですが f^_^;

    顔の方向と一緒にあちこちに飛ぶ低音の美声も良かったけれど
    (席が後ろだったら、もっと良かったのに)
    ホーネックの指揮するオーケストラの伴奏が

    うわ〜っはっはっは
    ホーネックのマーラーって、確信犯的変態なのは良く知っているが
    まさか角笛のオーケストラで、ここまでやるとは・・・

    特にアントニウスの間奏が
    ひええええ、何ですかそれ、のレベルで
    リズムもアクセントも
    むちゃ皮肉に尖っていて

    ああいうのをウィーンっ子以外の指揮者がやったら
    モロにイヤミに聴こえるだろうが
    (同じオーストリアの指揮者でも
     あーいうのはフランツ・ヴェルザー=メストはやらない
     ・・・というより、(たぶん)できない)
    ホーネックがやるとヘン◯イでも説得力がある。

    さて、後半はベートーベンの交響曲7番。
    今日のコンサート、結構、空席があって
    貧民席の人も他のところに移動していたりしたので
    空いた貧民席の後ろの方に、私もお引越し。
    (さすがにカテゴリーの上の空席に移動するだけの勇気はない)

    で、ベートーベンの交響曲7番と言ったら
    のだめカンタービレだし
    聴き慣れている曲だし・・・・と思っていたら

    ぎょっ
    ホーネックのヘ◯タイって、マーラーだけじゃなくて
    ベートーベンでも出るのか・・・

    いわゆるカクカクした構成のしっかりしたベートーベンじゃなくて
    なんか緩いというか
    メロディックというか(7番でか?!)
    細かい音型の部分で
    音量落とし過ぎで、グニャっとしか聴こえて来ない部分もあるし

    巧く言えないのがもどかしいんだけど
    普段聴いている7番と、全然印象が違う。

    ただ元気に、浮かれて踊っている曲かと思ったら
    なんだか全然違った曲に聴こえて来て
    ちょっと1回では消化し切れないような気分。

    ううううん、こんな7番のアプローチあり?
    チアキ君もビックリじゃないのか
    (すみません、のだめに拘っていて)

    コンサート後、外はやっぱり雨になっていて
    8月の最終日の日中の「夏」(=28℃湿気なし)も終わり。
    明日9月からの天気予報は最高温度が20℃を切るようで

    本日を持って正式に会社を辞めて
    (オフィシャルには今まで休暇だった(笑))
    鍵もガレージも社員証も全部返して
    スッキリ、サッパリしている私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



    もっとも、仕事そのものはフリー・ランサーで続けるので
    時々はオフィスに行きます(爆笑)
    自分のガレージのスペースがなくなってビジター用になるのと
    会社のドアを開けてもらわなければならないので
    (もと)同僚たちには
    私を見たら、鍵開けてね、逃げないでね、と念を押して来ました。

    ベルリン・フィル + ラトル 2日目

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      Grosses Festspielhaus Salzburg 2017年8月28日 21時〜22時50分

      Berliner Philharmoniker
      指揮 Simon Rattle

      Dmitri Schostakowitch (1906-1975)
       Symphonie Nr. 1 f-Moll op. 10 (1925)
       Symphonie Nr. 15 A-Dur op. 141 (1971)

      コンサート開始が遅かったので
      その前に、結構な量のワインを飲んで
      かなり酔っぱらった状態で行ったコンサートなので
      冷静に聴けているかは自分でも自信が全くない (^^ゞ

      ショスタコーヴィチの交響曲はウィーンでも聴く機会はあるけれど
      1番と15番の組み合わせというのは初体験。

      で、ベルリン・フィルとラトルの1番の演奏
      速いテンポで、まぁ、すごい音量で
      すべての音を、これでもか!と出してくるのが凄まじい。

      普通、もう少しメロディ・ラインを出すなりする演奏が多いのだが
      まるで楽譜に書いてある音符を全部均等に演奏するぞ、という感じで
      ちょっとそのマッチョな筋肉にギョッとする。

      出てくる音の量が半端じゃないので
      聴衆に与えられる情報量も凄まじく
      頭の中で音楽についていくのに
      ほとんどない脳(本日は更にアルコール漬け)を総動員する有様。

      まぁ、凄いオーケストラだわ。

      最後の交響曲15番って
      正直言うと、私、この曲はちょっとコワイ。

      ド・シロートだからとんでもない事を正直に言っちゃうが
      (学問的云々は全く関係ない、個人の印象だけです!)
      この曲こそ、自分の人生を全部振り返った上で
      迫りくる死の意識化を硬質な音楽に包んで提示してあって

      これに比べたら、マーラーの9番が
      やりすぎで大袈裟で、お涙頂戴で甘いとか思われてしまう。
      (マーラー・ファンの皆さま、ごめんなさい!!!
       私、マーラーの交響曲好きだし、9番もすごく好きなので
       悪口ではございません)

      徹底的に甘さを排除した
      硬質な響きの精密な演奏は
      まるで鉄骨で出来た複雑な建築物でも見ているような気分。
      (たぶん、まだ酔ってます (;^_^A

      こういう、緩みがなくて技術的に完璧な演奏をしてしまう
      世界最高性能のスポーツカーみたいなオーケストラって
      実はものすごく好き。

      で、この高性能鉄骨構造の複雑な建築物は
      徹底的に無機質で、ドライで
      人間の甘い感傷なぞ、鼻で嗤って拒否しているような感じ。

      音楽を聴いた、というよりは
      一人の作曲家の人生、いや、人生観
      どこか突き抜けた
      諦めでもなく満足でもなく
      ひたすら透徹した目で
      容赦のない時の刻みを突き付けられているようで

      やっぱりこの15番、コワイです (-"-)
      特に、こんな完璧な透明さをもって
      感情的に大袈裟になるのを徹底的に避けて演奏されたら

      最後のチャカポコで
      すごく冷静に
      「はい、あなたの人生の時計はここで止まりました」
      とか言われているようで
      終わったとたんに腰が抜けて背筋がゾクッとした。

      恐怖感を与える意図は当然全くないわけで
      そんな人間的な操作をあっさりと越えてしまったところで
      容赦のない「時間の経過」という現実を突き付けてくる。

      ザルツブルクまでわざわざ聴きにくる価値は
      充分あったけれど
      時の流れの冷静な非人間的残酷さを
      音楽で突き付けられて

      あぁ、私も歳取ってババアになった、という現実に
      ちょっとショックを受けている私に
      どうぞ1クリックをお恵み下さい。



      ヨーロッパ芸術にはメメント・モリと言う伝統があるけれど
      冗談じゃなくて、それを意識せざるを得ない年代に
      私もなったんだなぁ、と思うと、ゾクッとする。
      ・・・もっとも、そういう事を言ってる奴に限って長生きするんだが。

      ベルリン・フィル + ラトル 1日目

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        Grosses Festspielhaus Salzburg 2017年8月27日 20時30分〜22時50分

        Berliner Philharmoniker
        指揮 Simon Rattle
        ソプラノ Elsa Dreisig
        テノール Mark Padmore
        バス Florian Boesch
        合唱団 Rundfunkchor Berlin

        Georg Friedrich Haas (*1953)
         ein kleines symphonisches Gedicht - fuer Wolfgang
          Auftragswerk der Berliner Philharmoniker

        Joseph Haydn (1732-1809)
         Die Schoepfung Hob. XXI:2
          Oratorium in drei Teilen fuer Soli, Chor und Orchester
          Deutscher Text von Gottfried van Swieten (1733-1803)
          nach einer anonymen englischen Dichtung

        やって来ましたザルツブルク。
        例年、音楽祭の最後の頃に来るベルリン・フィルが目的。
        2日続きのコンサートの1日目は
        ゲオルク・フリードリヒ・ハースのオーストリア初演曲と
        ハイドンの「天地創造」

        最初に演奏されたハースの曲のタイトルが
        小さな交響的詩 - ヴォルフガングのための
        ・・・というものなのだが

        ヴォルフガングっていったい誰?

        プログラムを読んでいるのだが
        まだ謎のヴォルフガングは見つかっていない(汗)

        それより、プログラムめくっていてひっくり返ったのは
        掲載されているハースとのインタビューの内容。

        ハース家の先祖がナチだったとか
        ハースそのものがセッ〇ス的にサディ〇トで
        今までの奥さまたちを幸せに出来なかったとか
        ちらっと読んだだけなのに、色々とヤバそうな事が書いてある。

        その「罪の意識」が音楽に関係してくる・・・らしいんだけど
        芸術家の内的宇宙なんていうのは
        私のような素人+感受性ゼロにはわかりませんってば(開き直り)

        というより、ヴォルフガングって誰なんだ?!(謎)

        曲そのものはハースらしい4分の1音が非常に巧く使われていて
        弦のアンサンブルの醸し出すクラスター的音響宇宙にクラクラくる。
        ううう、音響オタクとしてはたまらん (-_-)

        続けてハイドンの天地創造の第一部。
        マーク・パドモアとフローリアン・ベッシュは有名(だし私も好き)だが
        ソプラノの Elsa Dreisig は初聴き。
        友人からの情報だとキューマイヤーが出る予定だったのがキャンセルになったとか。

        でも、このソプラノが実に良かった ❤

        このハイドンのオラトリオ
        まさに音楽による「お芝居」で、大好きな曲。

        宇宙の混沌から、光が作られ、水が海になり川になり
        雨になり雪になり
        山が出来て、生き物が出来て

        このブログの読者はこの曲はご存知だと思うので
        あまりしつこくは書かないけれど
        音楽が、ここまで情景や光や生物を描写できるなんて
        しかも、それが、ちゃんと「クラシック」の枠内で収まっているというのも
        ベートーベンの交響曲6番や
        リヒャルト・シュトラウスが交響詩でやった事を
        すべて既にパパ・ハイドンがやってるじゃないの・・・という

        ああ、ハイドンって偉大だあああ!!!!(何をいまさら)

        ベルリン・フィルとラトルの演奏は
        モダン楽器による、現代演奏だから
        面白い事に、ブルゲンラント的ハイドンの緩さはない。
        天地創造は後期の作品なので
        既に世界に通じるものがあって
        オーストリアっぽい、ノンビリさは不要という事を考えても

        あのオラトリオを、あんなにマッチョに筋肉質に演奏されると
        なんかこれ、ハイドンに聴こえませんが(笑)
        バロック音楽というよりは近代音楽の交響詩みたい(爆笑)

        ベッシュならやるだろうなぁ、と思った通り
        ラファエルの語りが実にリアルで
        昆虫創造の時には客席から笑いが出たほど。

        パドモアのテノールは品があって
        天使ウリエル、むちゃくちゃチャーミングだし

        代役ソプラノのガブリエルは
        声量もたっぷりだけど、それ以上に声の質が明るくて
        ドラマチックなんだけどドラマに流れない抑制を持ち
        かと言って教会音楽みたいに純粋な「だけ」じゃない
        絶妙なバランスで歌っていた。これは凄いわ、伸びるよこのソプラノ(注目!)

        この曲の中で私が好きなのは
        最初のカオスから光と水が出来る部分とか
        ライオンやトラが作られたかと思うと
        牛が草を食んで(あああ、この音楽!!!)
        羊が地表を覆いつくしてという辺りの
        音楽による情景描写。

        神さまを讃えるアリアやコーラスは、まぁ、普通のミサっぽいから(笑)
        音楽として聴くには楽しいとは言え、ちょっと冗長。

        でも、このハイドンの曲の中の神さまって可愛いの。

        自分で作って、それを見て
        あぁ、良く出来たわ、うんうん、と一人でニヤニヤしていたのに

        自然や植物や動物だけじゃ
        このワタクシの偉業を褒めてくれないじゃないか
        褒めてくれる創造物が欲しいよ〜って
        自分に似せて人間を作っちゃうとか(爆笑)

        最後のアダムとイブのシーンは
        まぁ、あれはね、時代が時代だから
        今、あんなテキスト書いたら
        フェミニスト団体から大抗議が来るだろうが

        バリトンとソプラノのデュエットは
        奇を衒わず、何とも自然にキュートに歌われた。
        (いやぁ、ベッシュのファルセットでのピアニッシモ、背筋ゾクゾク)

        人間がキリスト教的見地から罪に堕ちる前の
        ほのぼのとした温かさが
        ベルリン・フィルのマッチョで筋肉質な硬さで語られて
        最後のコーラスは、バリバリ・ガリガリ・ガンガン的印象で
        モダン・オーケストラならではの締まり方のマッチョさ。

        のんびりしたオラトリオというよりは交響詩的アプローチ。
        こういう演奏は、やっぱりドイツのオーケストラだから出来るんだろうなぁ。
        オーストリアのオーケストラだと、もっと緩くなりそうだ(爆笑)

        その意味ではオーストリアのオーケストラでは聴けない
        ハイドンの後期交響詩だった・・・あっ、ちょっと違うけど (;^_^A

        楽しい楽しいコンサートの後に
        友人を捕まえてビールで酔っぱらっていた私に
        どうぞ1クリックをお恵み下さい。


        トーンキュンストラー + 佐渡裕

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          Schloss Grafenegg 2017年8月26日

          Prélude Schlosshof 16時30分〜17時30分
          テノール Alexander Kaimbacher
          ピアノ Jendrik Springer

          Ernst Krenek (1900-1991)
           “Reisebuch aus den österreichischen Alpen”
           Liederzyklus für mittlere Stimme und Klavier op. 62 (1929)

          Abendkonzert Wolkenturm 19時30分〜21時30分
          Tonkünstler-Orchester Niederösterreich
          ソプラノ Marlis Petersen
          指揮 Yutaka Sado

          Carl Maria von Weber (1786-1826)
           Ouvertüre zur Oper “Oberon” (1826)
          Alban Berg (1885-1935)
           Sieben frühe Lieder für Gesang und Orchester (1905-08/1928)
            Nacht - Schilflied - Die Nachtigall - Traumgekrönt - Im Zimmer
            - Liebesode - Sommertage
          Richard Strauss (1864-1949)
           “Eine Alpensinfonie” op. 64 (1911-15)

          猛暑が戻って来たとは言え、気温30℃前後で
          湿気が35%を切っていれば
          確かに暑いけれど
          頭を使う仕事とかしていなければ、全然平気だし
          晴れ上がった青空で
          もう、ああああ、ヨーロッパの夏!!!という
          (だいたい夏が短くて暗くて陰鬱な冬が長すぎる)
          野外コンサートにはうってつけの天気。

          で、すみません、本日のコンサートの勝手な印象記だが
          慣例に基づいてタイトルはオーケストラ+指揮者名にしてあるけれど
          メインの記事はプレリュードの方で (^^;;

          佐渡さんとトーンキュンストラーのファンの方は
          前半の3分の2くらいは飛ばして下さい(すみません)

          最近、プレリュードには行っていないのだが
          このプレリュードだけは逃してはならぬ、と固く決心。

          Ernst Krenek という作曲家は
          もともとチェコ系の r の上にハーチェクが付いている名前で
          日本ではクシェーネクとかクジェーネクとかクルシェネクとか読んでいるらしいが
          本人がドイツ語表記のクレネクという発音を使っていたらしい。

          ウィーンに生まれ、最終的にはアメリカ合衆国で活躍して
          それこそ、この時代の音楽様式、全てを使って作品を残した傑物で
          ウィーンの中央墓地の名誉市民のところに眠っている。

          オーストリア・アルプスの旅日記という
          20曲からなるチクルスは
          クレネクが自分で旅行した後、自分でテキストを書いて
          短期間で完成した約1時間の作品。

          様式としては、トナールに戻って(最後のエピローグは12音技法)
          シューベルトへのオマージュ的な要素が強い。

          で、このテキストも大傑作。
          いやもう、皮肉に満ちて、故郷への愛に満ちて
          どこか必ず斜に構えてクリティカルに物事を見ていて

          いや、本当にオーストリア人、特にウィーンの人たちって
          なんでこんなに屈折した愛憎感覚を自分の国に持っているんだろ?

          実はこのチクルス、私がひっくり返ったのは
          フローリアン・ベッシュが歌った時で
          その後、唯一あったツェドニクの歌った CD を入手したものの
          やっぱり、これ、ナマで聴かないと全然その良さがわからない(断言)

          今回はアレキサンダー・カイムバッハーが
          当初の予定だった Peter Sonn の代役で登場したが
          このカイムバッハーというテノール
          私、かなり何回か聴いていて、悪い印象がない、というより結構褒めている。
          (調べてみたらこのサイトに引っ越してからだけで7回)

          演技も完璧に出来るテノールなので
          ドイツ語のテキストは、これ以上ないほどハッキリと
          ディクテーションもイントネーションも完璧。

          表情は豊かだし、大袈裟にならない程度に身体も動くし
          しかも甘い声で、音程も、12音部分含めて安定感があって
          早いパッセージも見事に歌ってくれる。

          リートというよりは
          まるで一幕の演劇を鑑賞したような充実感。

          ・・・ただ、その充実感を無茶苦茶にしてくれたのが

          「鳥の鳴き声」!!!!!

          最初から、何羽もの鳥が
          ライバルが現れたと思ったのか
          お城の中庭の上をグルグル飛び回っては

          ギャー・ギャー・ギャー・ギャー・ギャー

          ・・・と、すごい音量で鳴いている中で

          ドイツ・リートを歌わせるなんて
          グラーフェネックは何を考えてるんだっ!!!!!(超怒)

          いつ鳥が大合唱するか予想がつかないので
          まるで突然鳴り出す携帯電話が30台くらいある会場で
          ドイツ・リートを聴かされる身にもなって欲しい。

          というより、あれは歌手が可哀想だった。
          (あれだけ、しかも音程のある鳥の鳴き声で
           いくらトナールとは言っても近代音楽のリートで
           内容までしっかりと伝えないと意味をなさないものを
           あの鳥の叫び声の真ん中でずっと歌ったのは凄い。
           ・・・途中で確かに「ああああ」という顔はしていたけれど
           それは実はよ〜〜〜くわかる。聴いている方にも拷問だった)

          ・・・あとでグラーフェネックにクレーム入れておこう(本気)

          この作品、音楽も素晴らしいが
          テキスト(やはりクレネクによるもの)が秀抜で感激する。
          ドイツ語の出来る方、ぜひ一度、目を通してみて下さい。
          特にお勧めは8番目の Unser Wein
          オーストリアのワイン産地のお勉強にもなります(ならんわ)
          全テキストは ここ に掲載されています。

          (4番目の Wetter の3行目で納得して苦笑できたら
           あなたもオーストリア人かもしれない・・・嬉しくないが。
           11番は、観光業に携わっていたものにはズキズキきます(笑))

          この皮肉に満ちたテキストに付けられた音楽が
          シューベルトっぽく、ドイツ・リートっぽいのに
          軽かったり、重かったり
          テキストと共に跳ねたり飛んだり
          落ち込んだり酔っ払ったりで
          ドイツ語の完璧なディクテーションに加えて
          それぞれのパッセージのブラック・ジョークを
          巧くプレゼンテーション出来る人が歌うと
          ああああ、これこそがドイツ・リートの楽しみなのよ、と悶えてしまう。

          この鳥の叫び声にずっと邪魔されながらも
          素晴らしい1時間の後は
          夕暮れから夜にかけて野外ホールでトーンキュンストラーのコンサート。

          オベロン序曲は自然の中で演奏されるにはピッタリな曲だし
          ベルクのリートで歌ったマーリス・ペーターソンも
          ドイツ語のディクションが完璧で
          しかも、キュートでチャーミングな声 ♡

          後半のアルプス交響曲は
          野外ホールなので、もう音量の上限なしで
          パーカッションとかが非常に楽しそうだった(笑)

          こういう野外音楽堂なら
          何の抑制もなく、ガンガン、音量マックスで演奏できるし
          その意味では、指揮者もオーケストラも
          実にのびのびと、大自然に囲まれて
          (まぁ、ガルミッシュ・パルテンキルヒェンほどのアルプスはないが
           ここだって見えてる山脈はアルプスのなれの果て(斜面はワイン畑))
          雄大な演奏をエネルギッシュにガンガン聴かせてくれて

          ああ、この演奏、雨天の時のホールでなくて良かった、と
          ホッと胸を撫でおろして幸せな気分になった私に
          どうぞ1クリックをお恵み下さい。


          チェコ・フィル + トマーシュ・ネトピル

          0
            Schloss Grafenegg Wolkenturm 2017年8月25日 19時30分〜21時40分

            Tschchische Philharmonie
            チェロ Truls Mørk
            指揮 Tomáš Netopil

            Antonín Dvořák (1841-1904)
             Konzert für Violoncello und Orchester h-Moll, op. 104 (1894/95)
             Symphonie Nr. 8 G-Dur op. 88 (1889)

            今年5月31日にビエロフラーベックの訃報を聞いた時には
            本当にショックだった。
            このコンサートも、当初はビエロフラーベックの名前があった(涙)

            代役として立ったのは、彼の弟子の一人
            トマーシュ・ネトピル。

            猛暑から急激に寒くなった日が続いた後
            気持ち良く晴れて、気温は30℃を越えたけれど
            湿気が30%前後なので、実に爽やか、如何にもヨーロッパの夏。

            空気乾燥していてお肌にはよくないし
            日光が強いので、やっぱりお肌にはよくないんだけど
            でも、ものすごく気持ちが良い ♡♡♡

            早めに出発して、広大な庭のデッキ・チェアに寝そべりながら
            野外音楽堂から漏れ聴こえるリハーサルの音楽を聴いていると
            あぁ、この世の天国ってこれかも・・・(笑)

            でも、今日、オール・ドボルジャーク・プログラムだよね?
            何故、ブラームスのハンガリー舞曲5番が聴こえてくるんだろう?

            ・・・あ、これ、アンコール用か(そうでした(笑))

            私はチェコ・フィルのファン。
            世界中のオーケストラがグローバル化している中で
            ウィーン・フィルとチェコ・フィルだけは
            まだかろうじて、圧倒的なローカル色を残している
            (ような気がする)

            チェコ・フィルの音って
            特に弦の響きが
            本当にチェコ語の響きに似ている(ような気がする)

            どうせ偏見とか思い込みだろうと思うんだけど
            あの、柔らかい母音を持つチェコ語の不思議な響きに聴こえるのだ。

            ドボルジャークのチェロ協奏曲。
            オーケストラの音もきっちりと響いてくるし
            まだ太陽は完全に落ちていないので
            コオロギの合唱も始まっていない(時々、鳥がなくくらい)

            ノルウェーのチェリスト、トルルス・モルクは
            よくトーンキュンストラーと共演していて知ってる。
            テクニックは抜群だし
            また、この人の楽器(18世紀のヴェネツィア製だそうだ)が
            何とも美しい、厚みのある声で歌うのである。

            ドボルジャークのチェロ協奏曲って
            ドボルジャークらしいズブズブのロマンティックな曲で
            歌うメロディが多いので
            この、妙なる声で歌うチェロは聴いていて楽しい。

            しかも、これだけポピュラー的要素を含んで
            大袈裟に劇的に演奏しようと思えば
            制限なく大袈裟になりそうな曲なのに

            ちゃんと上品な抑制が効いていて
            ドラマチックなのに流されない、すごく良い感じ。

            トルルス・モルクって巧いだけに
            ちょっと理性が勝って、ツンデレになる感じがするんだけど
            それが今回は上手く活かされていた感じだわ。

            コンサート・マスターとの絡みも
            視線でコンタクトしながら実に良い感じ。

            ネトピルも、ヘンにオーケストラを大袈裟にせず
            どちらかと言うと、ちょっとあっさりし過ぎな位に抑えて
            それが中立的で気持ちが良い。

            けど・・・ビエロフラーベックだったら
            きっと、もう少しウエットで情緒的になっていたかもなぁ(あらぬ妄想)

            後半の交響曲8番は
            野外で演奏するには良い演目だと思う。
            ボヘミアの自然たっぷりの曲だし
            (ワタクシ的には5番の方が好きなんだけど
             誰か演奏してくれないですかね?)
            太陽が落ちてきた夕暮れから夕闇にかけて
            29℃で湿度30%だと、もう上着が必要なくらいの
            緑の多い澄んだ空気の中で聴くには最適。

            ・・・なんだけど
            もちろん野外で環境が悪いのはわかるけど
            えっ?というところが
            あ、まぁ、細かいミスだから別に構わないし
            良い演奏をしようと頑張っていたのは見えるし
            そりゃ、良いオーケストラだとは思うんだけど

            なんかちょっと・・・納得いかないと言うか
            このオーケストラ、もっと良かったような印象があるのだが
            どうも全体的に粗い印象が拭えない。
            (弦のアンサンブルは柔らかくて美しいけれど)

            ただ、アンコールに演奏した
            (リハーサルの時に通していた)
            ブラームスのハンガリー舞曲が
            リズム感があって、締まったシャッキリした演奏で
            意外に良かったのは
            若い指揮者のリズム感にオーケストラが巧く反応したからかな。

            今年はコオロギの合唱があまり目立って(耳立って)
            聞こえて来ないのは不思議だが
            (自然保護地区なので殺虫剤は撒いていないと思う)
            澄んだ空気の中での
            ものすごく気持ちの良い時間だった。

            まぁ、あまり額に皺寄せて真面目に聴くのが目的
            (そんな目的あるんかい?)
            というコンサートではない筈なので
            環境、空気、天気、そして良い音楽という事で
            至極満足の私に
            どうぞ1クリックをお恵み下さい。


            サンクトペテルブルク・フィルハーモニー + テミルカーノフ

            0
              Schloss Grafenegg Wolkenturm 2017年8月20日 19時30分〜21時35分

              St. Petersburger Philharmoniker
              ピアノ Nikolai Lugansky
              指揮 Yuri Temirkanov

              Nikolai Rimski-Korsakow (1844-1908)
              Suite aus der Oper “Die Legende von der unsichtbaren Stadt Kitesch
              und der Jungfrau Fewronija” (1903-04)
              (Konzertfassung : Maximilian Steinberg)
              Hochzeitszug. Überfall der Tataren
              Die Schlacht am Kerschenetz
              Vorspiel. Lob der Wildnis

              Sergej Prokofjew (1891-1953)
              Konzert für Klavier und Orchester Nr. 3 C-Dur op. 26 (1917-1921)

              Modest Mussorgskij (1839-1881)
              “Bilder einer Ausstellung” (1874)
              (Instrumentierung : Maurice Ravel, 1922)

              サンクトペテルブルク・フィルハーモニーとテミルカーノフの2日目。
              朝から晴れたり雨だったりと不安定な天候だが
              ウエブ・サイトでは野外音楽堂の告知があって
              到着してパーキングの指示をしてくれた男性が
              昨日と同じ人で
              「今日は外でコンサートだよ」とニコニコしながら教えてくれた。
              (あああ、やっぱり多分、毎回来ているアジア人女性一人って目立つんだわ)

              ドライブしている間も
              空に様々な形の雲が点在していて
              実はものすごく美しかった。
              ドライブ中に写真は撮れないので残念だが(笑)

              本日はオール・ロシア・プログラム。
              最初のリムスキー・コルサコフのオペラ
              「見えざる街キーテジと乙女フェヴォローニャの物語」というのは

              若い侯爵が森の中で自然と話しながら暮らしている
              敬虔な乙女フェヴォローニャに惚れる。
              が、周囲から(特にタタール人)から反対されて
              戦争を仕掛けられて
              フェヴォローニャは街を見えなくしてしまう。
              戦死した若い侯爵は
              敬虔な乙女フェヴォローニャと
              死者と聖人にしか見えない街へと去って行く

              ・・・とかいう話らしい(曲目解説うろ覚え)

              昨日は大編成で音量がホールを破壊しそうだったが
              本日は野外なので、どんなに音が大きくても大丈夫。

              コントラバスだけで10台あるけど
              野外音楽堂仕様のオーケストラ編成なのか
              それとも、オーケストラのメンバー
              みんなオーストリアに演奏旅行に来たかったとか?(笑)

              音が拡散してしまう分
              昨日のような繊細な音色の変化は追えないけれど
              ピアニッシモも充分な解像度で聴こえて来て
              メロディ・メーカーのリムスキー・コルサコフの音楽が美しい。

              ピアニストとして登場したのは
              ロシア人ピアニストのニコライ・ルガンスキー。
              ピアノはスタインウェイのグランド。
              (そう言えば、昨日のプログラムに
               スタインウェイ・ピアノの宣伝が入っていた(笑)
               買えないです(爆笑))

              プロコフィエフのピアノ協奏曲3番は
              プロコフィエフがアメリカ滞在中に作曲した最も有名な曲の一つだが

              わっはっは
              何回も聴いてるけど(ナマでも)
              そりゃ、ロシアっぽいウエットな部分もないわけではないが
              そのウエットなロシアのメロディは
              如何にもアメリカの聴衆に「ほらエキゾチックでしょ」程度にしか提示されず
              最初から最後まで

              ほら聴け、すごいだろ、もっと聴け
              え〜い、もっと叩いてやる、ほらほらほら

              と作曲家が考えたかどうかは知らないが
              これ、抒情的とか言う範疇から遥かに越えて

              はっきり言って、ピアノ=打楽器 だよね?(笑)

              ルガンスキーの超絶的なテクニックで
              最初から最後まで、ひたすら、すごいタッチと正確さで
              ガンガン・ガンガン叩いてる、という感じが
              ものすごい爽快感あるんですが(それで良いのかこの音楽?)

              気温が途中から急激に下がって来て
              管楽器にはかなりキツかったと思うのだが
              オーケストラも、あの複雑怪奇な曲をバッチリ決めて
              目を回して仰け反って、あれよあれよという間に終わっちゃったって感じ。

              正にアメリカの聴衆の度肝を抜いたんだろうなぁ、この曲。
              プロコフィエフの張り切り方とか
              むちゃくちゃ振り(だって何なのよあの不協和音と転調の連続は)が
              すごく面白いし
              ヘンに「深く」なったりせずに
              正確無比に強い打鍵でガンガン叩いた派手目の演奏が
              野外音楽堂から響くと、いや〜、気持ち良いです。

              オーケストラの音が拡散して
              昨日ほどの音色はないな、と思っていたら

              あらあらあら
              後半の「展覧会の絵」がすごく面白い解釈。

              昨日はロシアっぽいウエットさが、とか書いたけれど
              意外にあっさりと始めて
              最後の音を重く引きずらずに、淡白に収めているのだが

              時々、ぞっとするような
              原色とパステル色の混ざった、すごい音の色が出てくる。

              特にカタコンベが、凍りつくようで背筋がゾクッとした。

              思ったよりあっさり系の演奏かと考えていたら
              時々、とんでもない音が出てきて
              そのたびにギョッとしてしまう。

              良い意味で
              こちらの先入観を、すごい勢いで引っ叩かれて
              とんでもない音色の世界に引きずり込まれる部分が時々あって
              最初から最後まで油断できない演奏って

              こんな名曲アワーでは珍しいかもしれない。

              オーケストラが大編成で
              弦が対抗位置にあって
              私の席がほとんど正面だったので
              (ホールは最悪、野外最高の席なのである)
              音が左右に飛ぶ感じと、空間に散らばっていく拡大する大きさが
              すごく実感できたのは
              野外音楽堂の良さでもあるな。

              あまりに面白い演奏だったので
              たぶん、コオロギの合唱はあったと思うんだけど
              全然意識に上らなかった。

              あぁ、私も「雑音」を無視できる
              ヨーロピアンの耳になったのかしら

              ・・・とか思ったけれど
              こういう有名な曲だと
              知ったかぶりして奥さんに小声で解説する
              うざいセミ・クラオタ・オヤジがあちこちに出現していて
              (すごい言い方ですみません。でも怒ってますワタシ)

              ついでに、これは仕方ないんだけど
              風が強いので、オーケストラの楽譜を押さえるピンが
              楽譜をめくった後の固定の時に
              まるでコル・レーニョのような音をたてるので
              (曲の最中に、かなり何回もあちこちで聞こえて来た)
              それがちょっと気になったかな、という私に
              どうぞ1クリックをお恵み下さい。



              この音楽祭って
              この地域の人たちの社交界のような様相を呈していて
              みんなご夫婦で来て
              あちこちでお知り合いにご挨拶・・・なのは良いのだが
              そこで立って喋っていられると、私が外に出られないんだけど
              というのが頻繁にあって
              まぁ、田舎と言えば田舎ですね(笑)

              サンクトペテルブルク・フィルハーモニー + テミルカーノフ

              0
                Schloss Grafenegg Auditorium 2017年8月19日 19時30分〜21時25分

                St. Petersburger Philharmoniker
                ピアノ Rudolf Buchbinder
                指揮 Yuri Temirkanov

                Johannes Brahms (1833-1897)
                Konzert für Klavier und Orchester Nr. 1 d-Moll op. 15 (1854-59)

                Pjotr Iljitsch Tschaikowski (1840-1893)
                Suite aus dem Ballett “Schwanensee” op. 20 (1877)
                (Zusammenstellung : Yuri Temirkanov)
                Scène. Moderato
                Valse. Tempo di valse
                Danse des cygnes. Allegro Moderato
                Scène. Andante - Andante non troppo - Tempo I
                Danse hongroise (Czárdás). Moderato assai - Allegro moderato - Vivace
                Danse espagnole. Allegro non troppo (Tempo die Boléro)
                Danse napolitaine. Allegro moderato - Andantino quasi moderato - Presto
                Mazurka. Tempo di mazurka
                Scène fiinale. Allegro agitato - Alla breve. Moderato e maestoso

                昨日は日中が34℃。夜のコンサート終了時23時近くでも29℃。
                今日は朝から雨で、最高温度で22℃。

                だから
                「今度ヨーロッパに行くのですが、
                 服は何を持って行ったら良いですか」
                って聞かないで下さい。我々だってわからん。

                夕方、雨は上がって来たので、どうかな〜とは思ったけれど
                やっぱりコンサートはホールに決定(万歳)

                問題は私の持っている貧民席チケットは
                野外だったらベストのシートだけど
                ホールだったら最悪のシートという事なのだが
                まぁ、仕方ないです。
                高いチケットを買うだけの余裕はない。

                このところ、ナマのオーケストラ長く聴いてなかったし
                (まぁ、昨日はナマだったが、あれはオペラだったし)
                引退して貧乏生活に突入なんだから
                (今までだって貧乏だっただろ、というツッコミはなしで)
                コンサートの数も絞って、別にナマで聴かなくても生きていけるし

                ・・・と、多少やけっぱち?になっている状態で
                グラーフェネックまでドライブ。

                サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団というより
                私みたいな年寄りにはレニングラード・フィルというのがしっくり来るが

                来た、来た、キタ
                腹の底にズンと沈むような
                ものすごくマッチョなロシアの音。

                もともと野外ホール用の大編成というのもあるが
                音の強靭さ、底に響くどっしりした重さが
                無骨なブラームスのピアノ協奏曲1番で
                バリバリ音が登って来る。

                音響はゴージャスだが、大袈裟ではなく
                質実剛健で構築がよく見えて
                土臭いマッチョな筋肉質かな、と思っていたら

                チェロとビオラの音が突然変わって
                いや、もう、信じられないソフトな音色。
                なんなんですか、このオーケストラ。
                マッチョなのに、こんなに優しくなれるなんてルール違反だわ(褒めてます)

                ブッフビンダーのブラームスのピアノ協奏曲1番は
                何回も聴いているけれど
                ピアニストも指揮者も年配ペアなのに
                まだ、音楽に色気たっぷり残っていて(笑)
                でも、それを見せつけるような大袈裟感が全くない。
                (ただ、音楽の中で語られている恋は何故か現在進行形である)

                圧倒的なブラームスの和声の洪水に浸りながら
                もう、ひたすら身悶えしてしまう。
                (ただのヘンな人になってる事はわかってます)

                ブラームス好き ♡ 大好き ♡♡♡
                オーケストラの響きも好き ♡
                ピアノの響きとオーケストラとの絡みも好き ♡

                すみません、もう最初から最後まで悶え続けて
                酔ったようになってしまって
                自分でも抑制が効かなかったです(恥)

                後半はテミルカーノフが選んだ
                チャイコフスキーの「白鳥の湖」の組曲。

                こと、白鳥の湖に関しては
                私は何回も何回も何回も
                国立オペラ座のバレエの舞台を見ていて
                ウィーン国立オペラ座管弦楽団の名演奏を
                何回も何回も何回も聴いている。

                あ〜、ちょっと今、そこで笑った方
                それは言ったらイケナイので f^_^;)

                最初の序曲・・・というか
                オデット登場場面だったっけ。
                如何にも「白鳥登場!!!」という音楽だが

                ここって、こんなに音楽の表情が豊かで
                フレーズの中に膨らみがあったのか???

                ワルツは目の前にバレエの群舞のシーンが思い浮かぶなぁ。
                で、さすがに野外音楽堂仕様の大編成は
                真上で聴いていると、あまりに音響が爆発的(笑)

                オデット登場、コンサート・マスターのソロ ♡
                最初はちょっと奥ゆかしく
                ああ、この音楽のイメージだとニナ(ポラコヴァ)だなぁ、と思っていたら
                その後、王子さまと出会ったら
                オデットが変身してしまい(音色が喜びに満ちて明るくなる)
                あらま、これはリュドミラまではいかないけれど
                イメージとしてはマリアだわ
                (すみませんディープな話題で・・・)
                チェロとの絡みが、また見事で

                しかもここらへん
                もう、もう、ものすご〜〜〜くネットリしたロシア風の音楽になっていて
                ほとんど演歌だし、矛盾して相反する要素が絡み合ってるし
                ロマンティックだけどストーカーで依存症で
                ちょっとロシア、コワイかも・・・と妄想爆発。

                ヨーロピアンの仮面をつけながら
                中身はズブズブのロシアのロマンティックさがあるのは凄い。

                中間部はデヴェルティスメンの音楽で
                ハンガリー、スペイン、ナポリ、ポーランドの踊りを全部聴かせてくれて
                これはすごく楽しかった。
                バレエ団のメンバーの踊りが目に浮かぶし(笑)

                フィナーレは力強く
                というか、力強すぎて(席の位置が悪い)耳が痛くなりそうな音量。
                でも良いわ、すごくロマンティックでロシア的で
                ブラームスでまだ抑えていた
                ロシアの熱い血?がここで大爆発みたいな印象。

                で、何とアンコールが
                エルガーの「愛の挨拶」

                ひえええええ、テミルカーノフのイメージと全く違う・・・(偏見)

                で、こんなロシア涙の演歌たっぷりの
                ウエットな「愛の挨拶」聴いた事がない!!!

                ・・・いや、こういうの、ありですか(驚愕)
                ちょっと仰け反ってしまったけれど
                あの可愛いメロディがロシア民謡になっているのを聴くと
                ついつい顔がニヤニヤしてしまうじゃないの。

                いやぁ、むちゃくちゃ楽しかった。
                席が悪かったのは残念だが
                ダイレクトにオーケストラの音響が上がって来て
                音響のお風呂(時々ちょっと熱すぎたけど(笑))に
                首までどっぷり浸かって

                やっぱりナマのオーケストラの音響って
                私の精神安定剤として欠かせないわ、と
                確信してウィーンに大雨の中を戻ってきた私に
                どうぞ1クリックをお恵み下さい。


                トーンキュンストラー + 佐渡裕

                0
                  Schloss Grafenegg Wolkenturm 2017年8月18日 19時30分〜22時35分

                  Tonkünstler-Orchester Niederösterreich
                  指揮 Yutaka Sado
                  オットカール侯爵 Adrian Eröd
                  クーノー Sebastian Wartig
                  アガーテ Gal James
                  エンヒェン Daniela Fally
                  カスパール Tuomas Pursio
                  マックス Michael König
                  隠者 Albert Dohmen
                  キリアン Bernhard Hansky
                  ザミエルと語り手 Otto Schenk
                  コーラス Arnold Schoenberg Chor

                  Brad Lubman (*1962)
                  “Grafenegg Fanfare” für zehn Blechbläser (2017)
                  Uraufführung. Auftragswerk des Grafenegg Festivals

                  Carl Maria von Weber (1786-1826)
                  “Der Freischütz” Romantische Oper in drei Aufzügen op. 77 (1821)

                  グラーフェネック城の夏のフェスティバル
                  本日がオープニング・コンサート。

                  だいたいウィーンの夏のクラシックは、これしかなくて
                  毎年、土曜日・日曜日はプログラムもチェックせず
                  ともかく
                  一番安いカテゴリーで雨天の時にホールに席がある
                  ・・・という条件で
                  グラーフェネック・カード(有料で結構高い)を買って
                  一般発売前に全部買っている。

                  今年はこの時期、既に会社に行っていないのがわかっていたので
                  金曜日とか木曜日とかのチケットも全部買った。

                  2ヶ月振りのオーケストラ・コンサートなのだが
                  うううう〜ん、これ、普通に仕事していたら
                  私の好みとしては、買わなかっただろうなぁ。
                  (念の為ですが、あくまでも「好み」として、です)

                  だって、オペラ苦手なのに
                  モロに、カール・マリア・ウェーバーの「魔弾の射手」
                  しかもコンサート形式の上演。

                  その前に演奏された
                  アメリカの作曲家(兼 指揮者)のブラッド・ラブマンの
                  グラーフェネックのためのファンファーレ。

                  これは例年、コンポーザー・イン・レジデンスが作曲するので
                  ファンファーレでありながら
                  現代音楽としての要素を含んだものなのだが

                  後ろの人、ずっと大声で笑ってるの
                  何とかなりませんかね?

                  伝統的に聴きなれたファンファーレとは違って
                  変拍子や不協和音も出てくるので
                  不思議な響きになっていて面白いのはわかるのだが
                  あそこまで笑われると
                  微妙な和音が演奏されている時に邪魔なんですが。

                  まぁ、ファンファーレの時に遅れて入って来た客が
                  あちこちで、あら、いらしてたの?とか
                  音楽無視して喋りながら、という
                  典型的グラーフェネックのシーンもあちこちであったしなぁ(諦めムード)

                  さて無視されまくりのファンファーレの後は
                  ご存知、魔弾の射手・・・のコンサート形式で

                  え〜い、出演者の面々をご覧あれ。
                  有名な人を呼んで来て、客を呼ぼうという
                  涙ぐましい努力がミエミエ。

                  オットー・シェンクって、もう87歳だよ???
                  お元気だし、マイクつけてはいても
                  声に張りはあるし

                  しかも、投げやりっぽく力を抜いて語っているのに
                  もう、この語りに実に味があって、すごい、というか
                  やっぱり、モトは俳優さんなんだなぁ、と感激してしまう。

                  エレードは最後にチラッと出てくるだけ。
                  まぁ、エレードにカスパールなんか歌わせたら
                  ギャラがどの位跳ね上がるかわからんだろう(邪推)

                  もう一人のアイキャッチャーのダニエラ・ファリーだが
                  エンヒェン役で
                  シルバーのレースの美しいドレスを着て、目立ちまくり。
                  ついでに声も目立ちまくり・・・というより
                  声量あって、強い声で
                  えええ?この歌手、何年か前まで
                  コロラチューラで、もう少し、声、細くなかったっけ?

                  テクニックはある人だから、転がる時の音程はしっかりキープしているのだが
                  コロラチューラの声質じゃなくなってるなぁ。
                  ちょっと残念かも。
                  明るいエンヒェン役には合ってるが

                  アガーテ役のソプラノ歌手が
                  上から下までブラックの、装飾がほとんどない簡素なドレスで
                  ちょっと見たら、ア◯ブのおばさまが着用しているドレスの
                  上の部分だけカットしました、みたいな地味なドレスだったのは何故だ?

                  まぁ、アガーテは不安に満ちた細い声で
                  幸せな婚約中のはずなのに、心配だわ、心配だわ、と
                  ピアニッシモの高音で悲しげに歌うナンバーが多いから
                  黒い地味なドレスでも良いのかもしれないが。
                  (しかし、アガーテって、オペラでもこんな地味な役だったっけか?)

                  このオペラの中で私が最も魅力的と思うのは
                  カスパールなのだが
                  (悪魔に魂を売るだけの思い切りがあって
                   契約終了前に策略を巡らす事前の危機管理能力があって
                   うまくアホなマックスをノセるだけの説得力と
                   悪魔と堂々と渡り合える交渉力・・・・)

                  このヘルシンキ出身のバリトン
                  ドイツ語がクリアで
                  途中のセリフ部分もわかりやすく
                  スタイル良いし、舞台で動いていたら、かなり映えそう。

                  かわいそうだなぁ、と思ったのが
                  最終シーンで、カスパール、撃たれて死ぬじゃないですか。
                  あそこで、各バリトン歌手が如何に巧く死ぬかっていうのは
                  見ている方にも楽しみなのだが(ヘ◯タイと言うなら言え)

                  今回はコンサート形式だから
                  カスパール、死んだ後も、ずっと舞台に立ちっぱなしで・・・

                  マックス役のミヒャエル・ケーニヒは
                  ちょっと太めのお腹の出た立派な「如何にも歌手」的風貌で
                  細めのリリック・テノールが
                  あのアホ役のマックスとぴったり合っていて、聴かせる。

                  隠者を歌ったアルベルト・ドーメンの低音にはゾクゾクした。
                  まぁ、この人の出番もエロードと同様、少しだけなのだが
                  最後にちょっと長めのアリアがある。

                  何が良かったって
                  一応、これ、オペラだから
                  出演の歌手全員が暗譜で歌っていて
                  (ほら、たまにコンサート形式だと楽譜みて歌う人もいるじゃないですか)
                  まぁ、演技ってほどではないにせよ
                  きちんと客席に向かって声が飛んでいた事。

                  オーケストラの音楽も躍動的でイキイキしていて
                  コーラスはプロで定評のあるアーノルド・シェーンベルク合唱団だし

                  オーケストラは
                  あの難しいホルンが、ものすごく大張り切りで
                  いやもう、見事にパッセージを吹いてくれて
                  このオーケストラのホルン軍団、こんなに巧かったっけ(笑)
                  ・・・夏中、ずっと練習してたりして(爆笑)素晴らしかったですホント。

                  久し振りのコンサートだったし
                  苦手な「オペラ」だし(言い訳)
                  ついつい、音楽以外の事(衣装とか)に気が向いて
                  出演者の中の力関係とかに思いを馳せてしまっていた私に
                  どうぞ1クリックをお恵み下さい。



                  これから週末は(一部除く)グラーフェネック通い。
                  明日・明後日はサンクト・ペテルブルクのテミルカーノフ。
                  この間の楽友協会を聞き逃したので
                  (確かバレエと重なった)
                  楽しみ 🎵

                  ウィーンは本日、日中はまた34℃で
                  夜のコンサート終わっても郊外でも29℃あったけれど
                  今(夜中)外は嵐で風が吹きまくっていて
                  明日は最高温度で22℃とかの予想。なんかよくわからん気候ではある。

                  川口隆夫「大野一雄について」2回目

                  0
                    Odeon 2017年8月12日 21時30分〜23時40分

                    Takao Kawaguchi
                    About Kazuo Ohno

                    振付 Kazuo Ohno, Tatsumi Hijikata
                    ダンス Takao Kawaguchi
                    ドラマツルギー Naoto Iina
                    写真 Teijiro Kamiyama, Takuya Matsui
                    翻訳 Naoko Nakajima

                    The Portrait of Mr. O (ein Film von Chiaki Nagano von 1969)

                    Admiring La Argentina (1977)
                    Death and Birth, The Daily Bread, Marriage of Heaven and Earth
                    zwei Tangos, Klaviermusik von Frédérik Chopin (Etüden Op. 10, Nr. 9 & 10)

                    My Mother (1981)
                    The Embryo’s Dream, Dreams of Love

                    The Dead Sea : Viennese Waltz and Ghost (1985)
                    The Gypsy Baron’s March
                    The Episode in the Creation of Heaven and Earth

                    8月10日に鑑賞したパーフォーマンスの2回目。
                    最初のロビーで繰り広げられる
                    ガラクタを多用したバタバタは
                    (すみません、でもそれ以外に何と言えば良いのかわからない)
                    映画「O氏の肖像」の模写なのだそうだ。

                    この間はソロ・パーフォーマンスだったが
                    何故か今日は女性ダンサー1名が
                    ちょっとチョッカイ出したり、床に転がっていたり。

                    あれはパーフォーマーからの依頼のサクラなのか
                    勝手に飛び込んで勝手に絡まっていたのか
                    よくわからない(けれど、まぁ、それもアリですかね(笑))

                    最初が死と誕生
                    その後、胎児の夢、萬人の踊り、天地創造の発端、愛の夢
                    メイク・アップのシーンの後
                    後ろのスクリーンに人形を操る映画が映されて5分の休憩。
                    休憩後は
                    日々の糧、天と地の結婚、
                    タンゴ「花」、タンゴ「鳥」と続いて
                    最後にショパンの曲2曲でフィナーレ。

                    大野一雄なんだか川口隆夫なんだか
                    誰がいつ踊っているのかわからなくなる現象については
                    この間の1回目の時に書いたけれど

                    日本の伝統芸術は
                    師匠の技を模倣する事から始まるので
                    その意味では
                    意外に伝統的なアプローチなのかもしれない

                    と思いつつ、鑑賞していたのだが

                    だんだん、不思議な気分になってきた。
                    パーフォーマーの川口隆夫に
                    大野一雄が乗り移ってるような
                    そこに居る人、いったい誰ですか?

                    最後のタンゴあたりになると
                    すごく奇妙なのだが
                    時間が巻き戻って、大野一雄その人が
                    舞台に立っているような感覚に囚われてしまう。

                    複雑に二重に絡まったパーソナリティと
                    それによる不思議なパーフォーマンスの効果はさて置いて

                    大野一雄のダンスそのものを見ると
                    能や歌舞伎からの影響が時々見えて面白い。

                    胎児の夢の「静」と「動」の対比は
                    能楽の動きを思い起こさせる。
                    オリジナルは探してみたら
                    三味線の音楽が入っているようだが
                    (三味線奏者は舞台に立つ)
                    今回は、三味線なし
                    BGM は、ホール内でのホワイトノイズと
                    観客の咳の混ざった音だけ。
                    (「観客の咳」はテープに入っているもので
                     ImPulsTanz は若い観客が多いので
                     ほとんど「無駄咳」はない(笑))

                    後半の「日々の糧」も同じように BGM なし
                    (というよりホールの雑音の録音によるホワイト・ノイズ)
                    この2つのダンスは、比較的、時間として長いので
                    ますます能表現を連想してしまったのかもしれない。

                    天地創造の発端というダンスは
                    ピエロのような、神父さんのパロディのような
                    バレエで言うならドン・キホーテのサンチョ・パンサみたい。
                    流れる音楽は日本語だけどグレゴリオ聖歌のようで
                    日本人でも天地創造と言うと
                    キリスト教なんだろうか、とちょっと笑った。
                    (イザナミとイザナギじゃなかったんだ(爆笑))

                    サラリーマンのむちゃくちゃキュートな愛の夢の後
                    パーフォーマーが舞台の真ん中で
                    スポット照明を浴びつつ
                    ドーランの白塗り、目の辺りに真っ青な色を入れて
                    リップに真っ赤な色を塗って
                    鏡に向かって、ものすごく楽しそうな
                    満面の笑顔を見せる。

                    ダンスじゃないんだけど
                    この満面の笑顔が、何と魅力的な事。
                    (パーフォーマーがイケメンとか言う意味ではありません)
                    人間って、こんな幸せそうな表情が出来るのか、と思ってしまう。

                    この笑顔は大野一雄のものなのか
                    川口隆夫のものなのか

                    それとも芸術に身を捧げて
                    苦労を苦労とも思わずに
                    多大な喜びを持って幸福を感じる
                    芸術家の最も深いところにある邪気のない「喜び」なんだろうか。

                    画像で投影される
                    人形を使ったシーンは
                    ほとんど文楽の世界。
                    人形が、まるで生きているかのように
                    表情や仕草で愛を語るのだ(表情ない筈なのに)
                    これも、文楽、能面の伝統を踏まえての芸術だなぁ。

                    日々の糧は、オレンジ色のへんな仮面を付けて
                    その後、天と地の結婚はその扮装のまま
                    グランド・ピアノに寄りかかったパーフォーマーの姿が
                    照明によって、後ろに影絵みたいに映されるのが
                    これがまた、二重性の複雑さがあって
                    あまり動きがないのに、現実と影絵の狭間にすっぽり嵌ってしまう。

                    その後のタンゴ(花と鳥)、ショパン(2曲)は
                    ドレスを着ての踊りだが

                    ・・・この表現力って圧倒的。
                    身体全体、特に手の動きの表現力といったら
                    手って、あんなに語るのか、と呆然としてしまう。

                    オリジナルの大野一雄のビデオとか見ると
                    本当はもっと深く理解出来るのかもしれないので
                    あくまでも、ド・シロートの表面的な感覚でしかないけれど

                    タンゴとショパンで表現された
                    あの幸福感って
                    観ている者にも伝わって来て
                    涙が出る程、幸せな気分になってしまうって
                    単純に考えても、すごい事かもしれない
                    と、しみじみ思っている私に
                    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



                    これにて私の今年の Im Puls Tanz は終わり。
                    かなり選んでパーフォーマンスに行っていたので
                    見逃したものもかなりあるとは思うのだが
                    過激なものも多いので、まぁ、こんなもんでしょう(笑)





                    Dada Masilo/The Dance Factory "Giselle" 2回目

                    0
                      Volkstheater 2017年8月11日 21時〜22時40分

                      Dada Masilo / The Dance Factory
                      Gisell

                      振付 Dada Masilo
                      音楽 Philip Miller
                      背景 William Kentridge
                      衣装 David Hutt on Donker Nag Helder Dag
                      Songezo Mcilizeli & Nonofo Olekeng of Those Two Lifestyle
                      パーフォーマンス
                      ジゼル Dada Masilo
                      アルブレヒト Thabani Ntuli
                      ヒラリオン Tshepo Zasekhaya
                      ミルタ Llewellyn Mnguni
                      バチルダ Liyabuya Gongo
                      ジゼルの母親 Khaya Ndlovu
                      男性たち Thami Tshabalala, Thabani Ntuli, Thami Majela
                      女性たち Nadine Buys, Zandile Costable, Ipeleng Merafe

                      ダダ・マシロのカンパニーによる
                      ジゼル公演は
                      当初2回の予定だったのがあっという間に売り切れたようで
                      実は追加公演も設定されたのだが

                      私がいつも買うパーフォーマンス・カードは
                      1公演につき、という割引ではなく
                      1演目について、最高2枚まで割引で
                      しかもプログラムは1部しかもらえないという
                      ちょっとケチくさいカードなので、2回(=2枚)で止めておく。

                      同じものを2回鑑賞すると
                      この間は目が行かなかった部分にも注目できる。

                      まずはミルタ、というより
                      この場合はアフリカのヒーラーという読み替えになっているダンサー。

                      第一幕でジゼルが倒れているところに(まだ失恋はしていない)
                      ウィリーと共にミルタが現れて
                      ジゼルに羽をかざして踊るシーンがあって

                      これは第二幕の悲劇的展開を
                      予想させるためのものかな、と思うのだが

                      このミルタのダンサーが魅力的。

                      男性なのだが、女性っぽいウィリーの衣装を着て
                      (ウィリーの衣装は白ではなく、深い濃いめの赤)
                      このダンサーの手の動きが実に美しい。

                      長い手にヒーラーのシンボルの羽を持ったまま踊るのだが
                      クラシックならボードブラと言っちゃうのだが
                      こういうダンスではどう表現すべきか不明でも
                      ともかく、この長い美しい腕の動きの美に目が釘付け。

                      ミルタを男性に踊らせるという発想で
                      ミルタとウィリーのシーンが
                      男女取り混ぜて
                      アンドロギュノスみたいな
                      一種の妖しげな不思議な雰囲気を醸し出す。

                      そりゃ、オリジナルのジゼルのミルタとウィリーのシーンって
                      古典バレエとしては最も静謐で美しいシーンだと思うのだが

                      同時に
                      「処女のまま死んだ乙女たちの幽霊」って
                      舞台の上のウィリーの年代というよりは

                      赤ちゃん+意外に多そうなハイミスのお婆ちゃん
                      の集まりではないかと
                      ついつい余計な事を考えてしまう(アホだから)

                      ダダ・マシロがリアリティ重視で
                      男女問わず、現世に恨みを残して死んだものの亡霊という
                      アンドロギュノス的ウィリーの集団を作ったのは納得できる。

                      第二幕は、第一幕より、音楽がずっとアフリカン・テイストになっていて
                      太鼓や鈴の音がリズミックに続いていく。

                      で、二幕の最初に花を持って
                      祈りに舞台に登場するのは

                      あれ??? 
                      このダンサー、ヒラリオンだ?!

                      アルブレヒトじゃなかったんかい???

                      ヒラリオンはミルタとウィリーに囲まれて
                      ウィリー3人に無駄な抵抗をしながら
                      たぶん死ぬ(舞台袖に引っ込むので本当のところは不明)

                      第一幕で、恋するあまりとは言え
                      ヒラリオンは、ジゼルにセクハラっぽい事をするので
                      セクハラ男性にはそれなりの罰を、という事かもしれないけれど

                      最初に舞台に花を持ってジゼルのための祈りで登場したのに
                      ちょっとしたセクハラで苦痛に満ちた死って
                      ・・・いや、はい、あの、その、セクハラは悪いです、ごめんなさい。

                      ところがヒラリオンに比べると
                      このパーフォーマンスの中のアルブレヒトは
                      実にイヤな奴なのである。

                      前半でバチルダの手を取って
                      ジゼルを絶望の死に追い込むところも

                      ごめん、悪かった、許せ
                      これが僕の人生で逆らえないけれど
                      愛したのは君だけだよ

                      ・・・というような不倫オトコの言い訳みたいなものは全くなく
                      急に冷静にバチルダとくっついてジゼルを見捨てるのだ。

                      でも、確かにオリジナルのジゼルでも
                      自分が婚約者の居る貴族だ、とバレた後のアルブレヒトって
                      不倫、浮気の言い訳も何もせず、突っ立ってるだけだわね(笑)
                      (観客の視線はジゼルの最後の激しい踊りに吸い付けられているから
                       その間、アルブレヒトがボケッと立っていても、誰も気にしない)

                      第二幕でヒラリオンが舞台の袖から消え
                      その後に現れるアルブレヒトは

                      ジゼルに許しを乞うのだけれど
                      どう見ても

                      ヒラリオンが死んじゃったよ
                      ヤバイわ、俺も危ないんじゃね?
                      もしかして俺ら、とんでもないオンナに手出しちゃった?
                      ひえええ、ここで謝ってご機嫌取っておかないと

                      という、ヤ◯ザの親分の娘に
                      知らずに手を出してしまって
                      保身に走るチンピラにしかみえない。

                      キスされて、ちょっとだけほだされそうになるジゼルにも
                      アルブレヒトのうさん臭さがわかったんだろうなぁ。
                      急にキリッとなって
                      ミルタから鞭をもらって打ち据えてアルブレヒトを殺してしまう。

                      もしかして、私が無駄な深読みしてるかもしれませんが。

                      私自身がウワキだのフリンだのに
                      全くビクともしない神経の持ち主なので
                      (来るもの拒まず去る者追わず(笑))
                      共感するのはジゼルよりマノンなのだが

                      ダダ・マシロのジゼルは
                      おとぎ話のような古典のジゼルよりも
                      ずっとダンサーの表現する感情が生々しくてリアル。

                      今日のリアルさに釣られてしまうと
                      アルブレヒトの表面的な自己保全に走った謝罪も白々しいけれど
                      それを蹴って、アルブレヒトを打ち据えて殺すジゼルも

                      え〜い、裏切ったオトコを殺してやる、うっはっは

                      というSっぽい要素より
                      自分自身が心を殺して
                      悲しみに満ちながら、殺さざるを得ない悲壮みたいなものが
                      そこはかとなく感じられて、ちょっといじらしすぎて・・・

                      こういう有害オトコが生きていても
                      女性みんなに迷惑をかけるから殺しちゃえ
                      という正義感に満ちた殺人では断じてない(笑)

                      色々な妄想を生む可能性がある、というのは
                      やっぱりジゼルという題材そのものの面白さなのかもしれない。

                      クラシックのコンサートも何もないのか、と
                      お怒りの読者の皆さま
                      私だってオーケストラのクラシック聴いていないので
                      ちょっともう、脳内が乾燥しきっているような渇望があるのだが
                      あと、もう、少しだけ我慢して下さい。

                      8月後半から始まるグラーフェネック音楽祭を
                      待ちかねている私に
                      どうぞ1クリックをお恵み下さい。


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