ORF Radio-Symphonieorchester Wien
Singverein der Gesellschaft der Musikfreunde in Wien
指揮 Vladimir Fedosejev
コントラ・テノール Matthias Rexroth
アルト Elisabeth Kulman
テノール Steve Davislim
バス Adrian Eröd
Dmitrij Schostakowitsch (1906-1975)
Symphonie Nr. 6 h-Moll, op. 54
Alfred Schnittke (1934-1998)
“Seid nüchtern und wachet …” Historia von D.Johann Fausten
Kantate für Contratenor, Alt, Tenor, Bass, gemischten Chor und Orchester
ウィーンは正に舞踏会シーズンのど真ん中で
コンサート全然ない週の水曜日に
ウィーン放送交響楽団とマイケル・パドモワのリサイタルが
同じ時間に重なるという
ファンとしては苦渋の選択を迫られる日だったのだが
フェドセイエフさまが指揮台に立つなら
これを見逃しては一生後悔する。
今回はウィーン放送交響楽団で
プログラムがショスタコーヴィチの交響曲6番と
アルフレッド・シュニトケのドクター・ファウストのカンタータ。
何か異様にプログラム渋くない?
なのに、私の周辺は、み〜んな観光客で
キャピキャピ言いつつ写真撮ってるんだけど大丈夫だろうか?
(実際、あまり大丈夫ではなくて(笑)
結構、演奏途中で動かれたりして邪魔だったが)
さて、ショスタコーヴィチの交響曲6番。
第1楽章が・・・・ うわわ、重い。
テンポゆっくりで低音をガンガン効かせて
その上、なんか粗いぞ、と思わせる程
何の妥協もなく
スコアの音符をすべて出す(しかもフォルティッシモも)
容赦ない音楽。
妥協がない、むちゃくちゃマスクリンでマッチョで
途中の部分なんて
どう考えても、ロシアの凍った風景そのもので
それが、ほんの少し溶け出す部分の表現が
うわああああ、もうたまらない。
フェドセイエフって、やっぱり、芯のところで
徹底的にロシア人っぽくて
あんなに粗い演奏で、こんなに豊かな表情と
悲しみと鬱病を徹底的に憐憫で包んだような
あの暗い、場合によっては滑稽になりかけそうな
悲壮感と悲しみと叫びとを、よくぞここまで・・・
第1楽章があまりに重くて
もう仕事なんかどうでも良いわ(いや違うだろ)
人生もう捨てても良いわ(いやそれは全然違う)
という、無駄に感情的鬱病ニセロシア人と化していたら
周囲もそうだったらしく
第1楽章が終わった後の会場のザワザワが
いつまでも終わらなくて
フェドセイエフもしびれを切らしたらしく
第2楽章の指揮棒を振り下ろしたのは良いんだけど
第1楽章を引き摺っているのか
何か、最初、今一つテンポに乗り切れていなくて
しかも、快速フェドセイエフにしては珍しく
遅めのテンポ。
その分、オーケストラの解像度は良い。
木管のソロが絶妙だったりして
そこから続く第3楽章は
え〜っと、読者ご存知の通り
あの曲の第3楽章は、映画音楽に近いですから(笑)
ウィーン放送交響楽団のメンバーが
ちょっとマジメすぎて、爆発までは行かなかったし
どこかのオーケストラのように
やけっぱちのハチャメチャで
力一杯のとんでもない演奏を聴かせてくれるのとは違い
やっぱり、このオーケストラ、優等生だわ、わっはっは。
後半はアルフレッド・シュニトケの・・・
何だこれ、カンタータ???
プログラム読むとドクター・ファウストの話、と書いてある。
拡張された舞台にコーラスと
歌手4名が指揮者の横に並ぶ。
ううう、声って前に飛ぶから
実はこの席は最悪ではあるのだが
ティンパニの規則的なリズムに乗って
コーラスが(トナール)で入って来た、と思ったら
うわぁ、そこに入ってくるオーケストラが
完全なポリフォニーで入ってきたっ!!!
アンタはチャールス・アイヴスだったのね・・・いやいや
アイヴスみたいな平和的なポリフォニーじゃない。
もっと徹底的に冷徹な徹底的なポリフォニー。
こういうの聴くと
「美」は簡単に出来るけれど(その美のクオリティは問わないとして)
「醜」というものを、ギリギリのところで「美」に転換する際の
実に微妙なバランスのセンスが、よくわかる。
まるでモビールのように、ギリギリのところでバランスを取ってる感じ。
テノールは「語り手」である。
声が後ろに来ないので、どうしてもセリフは聴こえ難いが
ダヴィスリムが澄んだテノールで歌っていると
あれ、なんだこれ、これもデジャブ??
あっ、これって、受難曲???
エファンゲリストのテノールと同じ様式じゃないか、おい。
エロードのバスは当然ながらドクター・ファウストである。
このモノローグが、また渋くて、ドキドキする。
ではコントラテノールとアルトは何かと言うと
メフィストなのよ、わっはっは。
2人で揃ってダブルの声で歌うフレーズは
まるで、ポピュラー音楽のチョコレートの宣伝みたいに
甘い誘惑的なメロディなのに
そこに絡まってくるオーケストラが
ずずずずずずっ、と崩れて
あああ、これ、私の大好きなシュニトケの作曲技法 ♡
無害に始まったトナールの可愛いロマンティックなメロディの隙間に
何か恐ろしいモノが登場する、という
音響オタクは、こういうのを聴くと身悶えしまくりの萌え萌え。
アルトのソロになると
何と何と何と・・・・ タンゴになっちゃうんですっ!!!
本当にタンゴのリズムで
クルマンなんか、マジに舞台で手あげて踊り出してたもん。
最後のコーラスのシュプレッヒ・シュティメの合唱も効果的。
宗教曲苦手で、しかもエファンゲリストじゃなくて
語り手とは言え、この様式を踏襲してどうなんだろう、と思っていたけれど
寝落ちどころの騒ぎじゃなくて
次はいったい、どんな音響が待ち構えているんだろう・・・
最初から最後までワクワクし通しで
もう、この音楽、いつまでも終わって欲しくないと
背筋ゾクゾク、鼻の穴は開きっぱなし(あらはしたない)
悶えて萌えて、いやもう、何という曲を聴いてしまったんだワタシ。
ファウスト博士の話なんて東洋人には所詮わからんが
このワケのわからん(笑)カンタータは
グレートヒェンも出て来ないし(苦手なんです女性による神の救済)
宗教的救済もないし
(だって最後が「気をしっかり持って注意してろ」という(笑))
メフィストの誘惑が色っぽいだけで
何故かメフィストの誘惑には負けず、ファウスト博士は死んでしまうみたいだし
受け入れられずに悶々とする内容ではなかったのも最高。
しかしまぁ、マエストロ・フェドセイエフ
よくぞこんな曲を見つけてきて舞台に乗せるわ。
しかも、このベストの歌手陣・・・
クルマンの低いアルトがあまりに良過ぎて
コントラテノールが引っ込んでしまい
あんた要らない、クルマンだけで良い(こらっ)という印象だったが
もともとコントラテノール、あまり聴かせどころないしな。
最近、マトモなコンサートに行っていなくて
飢えていた、というのはあるにしても
こんな音響オタクには最高の曲を聴けて
幸せ一杯 ♡
その後、気の合う友人とお喋りさせてもらって
ますます幸せ。
早く帰ってブログ書こうと決心していたのだが
人生も仕事もそう甘くはなくて(以下省略)
でもこの記事だけは
まだ興奮の残っている時にアップしておきたい。
真夜中過ぎにシュニトケで興奮している
アホな私に
どうぞ1クリックをお恵み下さい。
コンサート枯れの日々は
残念ながら、まだ続く(涙)