Klosterneuburg 2015年7月11日 20時30分〜23時
RIGORETTO
Musik von Giuseppe Verdi
マントヴァ公爵 Arthur Espiritu
リゴレット Paolo Rumetz
ジルダ Daniela Fally
ジョバンナ Bettina Schweiger
モンテローネ伯爵 Ievgen Orlov
チェプラーノ伯爵 Sebastian Preissl
チェプラーノ伯爵夫人 Elisabeth Pratscher
マルッロ Thomas Weinhappel
ボルサ Gustavo Quaresma Ramos
スパラフチーレ Luciano Barinic
マッダレーナ Ilseyar Khayrullova
オーケストラ Siofonietta Baden
指揮 Christoph Campestrini
演出 Thomas Enzinger
長いお休みをいただいている・・・筈なのだが
音楽会とかなくなったので
少しは私生活もマトモになるかと思ったら
山のような仕事が(以下省略)
イタリア・オペラだし、どうしようかな、と思っていたのだが
やっぱり、かなりナマの音に飢えてしまっていたので
クロースターノイブルクのオペラに食指が動いた。
先々週の38℃とかに比べると
28℃前後の晴れた気持ちの良い土曜日。
朝から電話鳴りっぱなし(仕事です(涙))は別として
クロースターノイブルクまでは約30分で行けるから、と
車に乗り込んだ私は
ギュルテル橋のところで冷汗。
ウィーン夏の名物 ・・・・ 道路工事!!!!
クロースターノイブルクに行く出口が閉鎖されていて
ご丁寧にも、迂回路が何処だか全く書いていない。
え〜い、だったら市内からドナウ運河沿いに走って
途中でクロースターノイブルクに入る道路があった筈。
道路工事(唖然)
またここも入る道路が閉鎖されてる・・・
夏はクロースターノイブルクにウィーンから行くなって事かっ!!!(怒)
いやいやいや、どこかに道はあった筈、と
必死に考えると、ハンデルスケイから上がる道はあったような記憶が。
で、何とかハンデルスケイからよじ上って到着(冷汗)
チケット買ったのが1週間位前だったので
ピック・アップに行ったカウンターで
カップルが言い争いしている。
チケット・オフィスから買ったらしいのだが
金曜日にはチケットはないから売らないでくれ、という指示が
上手く伝わっていなかったらしく
カップルは納得していないのだが
主催者側としては、チケット・オフィスに文句を言え
こちらに責任はない。チケットもない。
・・・ううう、何か身に染みるシーンだ。
(私はしつこくパラノイアのごとく確認を取るが
システムだけで仕事しているチームでは
結構、頻繁にこういう事が起こる)
さて、クロースターノイブルクのオペラは
天気が良ければ、修道院の中庭で行われる。
(天気が悪いと公民館に場所が変わってしまい
公民館だと、何だか学芸会っぽくなる(笑))
周囲が全部建物なので、音響は悪くない。
オーケストラの音量は大きくはないが
汚れのない清らかな音で響いてくる。
最初に登場するマントヴァ公爵の歌が
うわわわわ、このテノール、美声だし、アジリタ完璧。
見せ場ではどうなるんだろう、と思ったら
このテノール、素晴らしいじゃないか!!!!!!
このオペラの主人公は
あくまでもリゴレットの筈なのだが
今回のオペラ、マントヴァ公爵が、あまりに魅力的過ぎる。
女が全員、メロメロになって
身を以て庇おうとする気持ちが
ものすごく良くわかるぞ。
何か、異様にリアルにわかるぞ。
こんなの初めて。
いったいどういうテノールなんだ?とプログラム読んだら
フィリピン生まれでアメリカで活躍して
ミラノ、サンクト・ガレン、ヴェルサイユ、オルレーン、ライプチヒにリンツ
う〜ん、このテノール、小柄なのだがスタイル良いし
確かにアジア系の顔立ちだが
マントヴァ公爵の、ちょいワルの感じにとても合ってる上に
テノールの声が無理なく美しく伸びて
ボーゲンが長くて息継ぎを全く感じさせなくて
高音もちゃんと出るのに、張り上げている印象が全くない。
しかも音程が正確でアジリタも全く問題なく
無理がかかっていない状態で伸びる声なので
むちゃ美声なのである ♡♡♡
ご本人のサイトは ここ
リゴレットを歌った Paolo Rumetz は国立オペラ座のアンサンブルで
今年がクロースターノイブルクのデビュー。
オペラ座の履歴書を読むとリゴレットはレパートリーにはないので
もしかしたら、これが初めて・・・なのかもしれない。
首のない歌手で(顎=首にしか見えない)
あの首にくっついた二重顎の太り方はスゴイけれど
リゴレットは、もともとセムシの役なので
あまりハンサムが歌うと良くない(はずだ)
上手いし、声は出るし
ちゃんと途中では、ただキレイというだけではない歌い方をして
演技も(身体が太い分、動きは鈍いが)出来てるけれど
今ひとつ、リゴレットにある暗さというか
歪んだ心理的な動きというものは感じられない。
いや、すみません、テノール良過ぎたので
リゴレットの迫真の演技に心を動かされなかったのかも。
何せ、マントヴァ公爵の(あの声の)ためだったら
ワタシも犠牲になっても良いかも・・・という位に
圧倒的に魅力的だったんだもん。
ジルダはダニエラ・ファリーで
このオペラ、ダニエラ・ファリーで毎年売ってるところがあるから
まぁ、ダニエラ・ファリーって
オーストリア人ソプラノで世界に撃って出た、という意味では
とても良い歌手なのだが
ファリーって、もともとコロラチューラ・ソプラノだから
ジルダって・・・(沈黙)
ちょっと声量足りないし
(それでも観客は息を飲んで聴いてるけど)
ドラマチックと言うよりは可憐で
ジルダは可憐な世間知らずという役柄だから
合ってない、という事はないのだが
う〜ん ・・・ (悩)
殺し屋スパラフチーレの Luciano Barinic は
グラーツのオペラ座で歌っていたみたいだが
背が高いスタイルの良いハンサム君で
舞台上に華があって目立つ魅力的なタイプ。
プログラムの説明にはレパートリーにメフィストとかあって
うははははは、メフィスト歌わせたらハマりそう。
機会があれば観たいものだ。
野外オペラだから仕方ないと言えば仕方ないのだけれど
第一幕のアリアの良いところで
(観客は非常に静かである)
上を飛行機が飛んでいったり
もっと凄かったのは
何回も何回も何回も
修道院の中で誤作動があったのだろうが
修道院内のサイレンが、むちゃくちゃ数多く鳴ったので
このサイレン、音楽と混じってしまい(汗)
いや、あれやられたら
絶対音感とかない人、歌の音程が狂うだろ・・・という状態で
全く音楽に乱れなく歌ったリゴレットは
やっぱり上手いんだよねぇ。
後半でマントヴァ公爵のアリアの
(ジルダを心配して歌う美しい(ちょっとウソっぽい)アリア)
最後の弱音で高音を出す直前に
パンッと音がして
舞台照明の電球の一部のフィラメントが飛んだのか
何処かの電気のブレーカーが外れたのか
凄い音だったので
客席がザワザワしてしまい
(何あれ?とか小声で喋る人が多数)
それでも音楽は中断せずに
マントヴァ公爵も
あの美声の長いボーゲンで息継ぎなしに歌っていたのだが
最後のあの部分に客席のザワザワが入ったのは非常に残念。
全体的に野外の舞台とは言え
音楽は、かなり繊細な作りで丁寧。
演出も不自然さがなくて
衣装は豪華だし、かなり魅せる舞台になっている。
そりゃ、このクロースターノイブルクのオペラに来る人って
ほとんどがウィーンから
しかも車持っているある程度の金のある層がほとんどだから
耳は肥えてる聴衆だ(断言)
拍手のフライングもゼロだったし
マナーは(ウィーンでも見かけないくらい)良くて
無駄な咳もなければ、携帯電話鳴らしもなし。
確かにウィーンの聴衆を唸らせるような出来でなかったら
いくら夏のシーズン・オフの時とは言え
耳の肥えた聴衆は二度と来ないだろう(笑)
その意味で、非常にレベルの高いパーフォーマンスなのだが
何故か日本の観光客は来ないんですよね(苦笑)
ザルツブルク音楽祭みたいに有名じゃないし
ものすごいスター歌手が出る訳でもないし
(あ、ダニエラ・ファリーはオーストリアでは名士です(笑))
でも若手のものすごく優秀な歌手を集めるので
このオペラに行くと
必ず唸らされる体験になる。
オペラ・ファンの究極の楽しみって
たぶん、知られていない歌手を発見する事だと思うので(偏見)
そういう意味では
こういうオペラって、ものすごく面白い、と
真剣に思う私に
久し振りの1クリックをお恵み下さい。
なお、この後は本当に8月初旬まで
長い夏休み(仕事はしてます(爆笑))に入ります。
8月8日くらいからの再開をお楽しみに ♡