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ルドルフ・ブッフビンダー ピアノ・リサイタル

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    Musikverein Großer Saal 2020年6月15日 20時〜21時10分

    ピアノ Rudolf Buchbinder

    Ludwig van Beethoen (1770-1827)
     Sonate für Klavier d-Moll, op. 31/2 „Der Sturm“

    Franz Schubert (1797-1828)
     Sonate für Klavier B-Dur, D 960

    アンコール
    Franz Schubert
     Impromptu op. 90 (D 899) Nr. 4

    読者よ〜くご存知の通り
    私はオーケストラ(大人数)が好きなので
    ドイツ・リートを除けば、滅多にリサイタルには行かないので
    ピアニストのリサイタルなんて
    10年に1回くらいしか行っていないのだが

    なにせ、このご時世である。

    ブッフビンダーのベートーベンやシューベルトは
    定評のあるところだし
    100人限定で
    音響・・・は、まぁ、ともかく
    ヘンな席・・・もないわけではないが
    席指定が出来なかったので
    チケット、まだある、と取ったら
    平土間ロジェの席となった。

    ピアニストが顔を上げたら
    一番最初に私の顔が見えるところじゃん(汗)

    さて・・・
    ベートーベンのソナタ
    うわわわわ
    やっぱり音が響き過ぎ。
    スゴイ残響・・・

    なのに、音の濁りがないし
    右手の細かい音型も全く潰れずに
    クリアに聴こえてくる。

    ホールの残響のせいで
    どうしても音が引き摺るような感じになるけれど
    それを最小限に留めると同時に
    ベートーベンのダイナミックさと
    厚みのある和声を濁らずに観客に伝えてくる技術。

    17時に最初のコンサートをしていて
    2回目だから、と言うのもあるかもしれないけれど
    緻密な計算の上に積み上げた音響が圧倒的。

    計算だけじゃなくて
    音楽の流れとドラマチックなドラマを
    まぁ、ブッフビンダーって、よく「語る」人だ。
    本当に、この人、音楽が言葉なんだなぁ・・・

    ただ、私にとって圧巻だったのは
    シューベルトのピアノ・ソナタである。

    シューベルト、実は苦手だった。
    今でも苦手である(断言)

    血液型A型(かどうかは不明だが)的な
    神経質で、まっすぐで、融通の効かない感じで
    ベートーベンみたいにすっ飛んだところもない上
    ご本人があまりピアノを弾けなかったようで
    そのピアノ曲は
    時々、あまりに、人間の能力を考えてないよね、
    というものが結構ある。

    だいたい初期の作品の有名な歌曲「魔王」だって
    ピアニストっていうか、自分でピアノ弾く人は
    あのオクターブの情け容赦ない連続は書かないだろう、うん。

    後期作品というより
    シューベルト最後のピアノ・ソナタで
    死の2ヶ月前に作曲された曲。

    この曲の最初のモチーフだって
    アコードの塊なのだが

    何ですか、その透明感は・・・

    確かにピアニッシモなんだけど
    左手の奏でる分散和音の上のメロディが
    クリアなのに
    ポッと、そこだけ火が灯ったような暖かさを伝えて来る。

    残響の多い音響も、全く苦にならない。
    というより、シューベルトの和音が
    楽友協会大ホールの空気に優しく溶け込んでいる。

    なのに、あの例の左手での低音でのトリルが
    ピアニッシモ・・・で演奏されてはいるのに
    それまでの牧歌的メロディから
    突然、隠されたところに深淵が顔を覗かせるような感じ。

    これだけ細かい音符が16分音符で続くのに
    音の粒の一つ一つが見事に磨かれていて
    しかも、その流れのスムーズさと言ったら。

    フォルテになっても
    声を荒げる事がない。
    あくまでも暖かいのである。
    その中に、時々、深淵が見える。
    ・・・ちょっとコワイ。

    しかしまぁ、シューベルトの和声って凄い。
    私のピアノの先生が
    シューベルトの和声は完璧、と言っていたけれど
    バランスの良さと
    響きの完璧さから言えば
    シューベルトのピアノ曲というのは
    不思議なほどの透明感がある。

    もちろん、シューベルトらしい転調も・・・

    楽章間をほとんど開けず
    まるでアタッカのように演奏される第2楽章の
    現世とは思えない崇高さ。

    対して第3楽章のスケルツォの軽やかさ。
    ここで、ピアノの高音の響きが
    突然変わったのには、椅子からずり落ちそうになった。
    どういうタッチの変え方をしたら
    あんなに透明な
    鋭いけれど観客の耳を刺してこない音が出るの?

    軽い、というと語弊があるけれど
    第1楽章、第2楽章で
    どこか現世じゃないところに連れて行かれた聴衆が
    第3楽章で、ウィーンの小洒落た酒場に誘い込まれたような印象。

    目まぐるしい転調なのに
    踊るわ踊るわ
    人生、楽しんだ方が良いよね、って語りかけられている感じから
    最終楽章へ。

    最終楽章も
    重くならず、アコードがホールの空気に溶ける。
    中間部の激しくなるオクターブの連打でも
    感情的にならず
    あくまでも語りかけてくる感じ。

    いやシューベルトって
    時々、激しくなる部分って
    自分で演奏しようとすると
    ついついイライラっぽいやるせなさが先に立つんだけど
    やるせなさとかイライラのないシューベルト、初めて聴いた。

    ・・・どんなに激しくなるフレーズでも
    とことん愛しさに満ちていると言うか(書いてて恥ずかしいが)

    だからシューベルトが好きになるかと言えば
    それはまた別問題なんだけど
    シューベルトって、ビーダーマイヤー時代のウィーンっ子だよなぁ、とか
    しょうもない事を考えてしまう。
    (ウィーンっ子は良い側面ばかりではない、念の為)

    しかし、この音響の難しいホールで
    よく、あの透明感を最初から最後までキープしたものだ。

    ブッフビンダー、通常はアンコールを聴いた事がないんだけど
    今日はシューベルトのアンプロンプチュ ♡
    先々学期の授業で宿題で分析した曲だ・・・って、それは関係ないが。
    (途中にジャーマン・シックスが隠されているのである。
     シューベルトって、ホントにいけずだと思う)

    なんかもう、この細かいアルペジオの動きに乗る左手のメロディ。
    どう考えても、現実逃避・・・じゃなかった
    この世のものとは思えない
    どこか別の世界に紛れ込んだような気がして仕方がない。

    音楽分析どうのこうので、ジャーマン・シックス探すより
    和声だの何だのは、あっちに行ってもらって
    そのまま、今、そこにある音波の流れに身体を任せたい・・・

    何という贅沢な時間なんだろう・・・

    それに、嬉しい事に
    ピアノ・リサイタルで
    客席がこんなに静かなのも初めて。

    ちょっと途中で小声で咳した人はいるけれど
    だいたい、あのホール、観客席の雑音を隅から隅まで拾ってしまうので
    ピアノ・リサイタルに行くと
    咳に加えて、誰かが必ずプログラムや携帯電話を落としたり
    席から立って舞台を見ようとして
    椅子が凄い音をたてたりするのだが

    そういう不要な障害要素が全くなくて
    正に、これこそストレスフリー。

    こんな素晴らしい客席を体験してしまうと
    またいつかは戻るかもしれない
    観光客満杯で、小声のお喋り、プログラム捲りの音満載で
    貧民席ではスマホでゲームしている観客のコンサートでは
    もう満足できないんじゃないか・・・

    いやいや、観客からの雑音が避けられなくても
    やっぱり70%以上の観客の入った
    ベストの音響の楽友協会で
    フルオーケストラのコンサートを
    いつものド貧民席で楽しむ日が
    秋には戻ってくるよう、祈るばかりの私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。


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      • 2020.07.09 Thursday
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