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マリイインキー管弦楽団 + ゲルギエフ

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    Schloss Grafenegg Wolkenturm 2019年8月23日 19時30分〜22時10分

    Mariinsky Orchester St. Petersburg
    バイオリン Sergey Dogadin
    指揮 Valery Gergiev

    Claude Debussy (1862-1918)
     «Prélude à l’après-midi d’un faune» (1894)

    Pjotr Iljitsch Tschaikowski (1840-1893)
     Konzert für Violine und Orchester D-Dur op. 35 (1878)
     Symphonie Nr. 6 h-Moll op. 74 «Pathétique» (1893)

    2019年のチャイコフスキー・コンクールのバイオリン優勝者
    セルゲイ・ドガディンを迎えて
    ゲルギエフがマリイインスキー管弦楽団とのコンサート。
    チケットは芝生席に至るまで売り切れ。

    観客は・・・いや、本当に年配ばかり。
    正直、老人ホームの会合としか思えない様相を呈しているのだが
    私だって2年前からは、立派に、お達者倶楽部の会員資格を有したので
    あまり人の事は言えない(汗)

    マリイインスキー・オーケストラのメンバーの中で
    際立って目に飛び込んでくるコンサート・マスター。
    立派な二重アゴで
    ライオンの鬣というか
    ハイドン時代のカツラの 失敗作 特注品のような髪型で
    ニコニコしながら登場。
    携帯電話呼び出し音が会場に響くと(携帯電話切って下さいの合図)
    自分のポケットを探すというチャーミングさ(爆笑)

    ただ、このコンサート・マスター
    本当にゲルギエフの指揮を完璧に熟知しているというか
    こういう人が居てオーケストラを率いているというのは
    素晴らしい事なのではないか、と演奏聴きながら思ったりする。
    (シロウトなので、本当のところは不明)

    最初の曲がドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」で
    その後がチャイコフスキーというのは
    いったいどういうプログラム構成なのか、私にはよくわからんが

    広大な庭園の中の野外会場で
    夕暮れに聴く「牧神の午後への前奏曲」

    なんという遅いテンポ・・・(絶句)
    フルート大変、オーボエも大変、ホルンなんかもっと大変。
    ゲネラル・パウゼもむちゃくちゃ長い。
    外の道路から車の騒音が聞こえてくるが・・・

    本来であれば、大自然に囲まれて
    牧神の世界の優雅さを味わうべき曲なのだろうし
    ゲルギエフは、徹底的にテンポを落として
    しつこいくらいロマンティックに演奏しているのだが
    牧神の世界って、そう清潔に美しいものではなくて
    きっとゴミもあったし、獣の匂いなんかが凄かったんだろうな
    とか考えてしまうのは
    外から聞こえてくる車の爆音が悪い(断言)

    さて、今年のチャイコフスキー・コンクール
    バイオリン部門1位のセルゲイ・ドガディンは1988年生まれ。
    2011年22歳の時に、1位なしの2位に選ばれているのだが
    30歳にて、もう一度出て、念願の1位を射止めた人。
    (審査員の先生に師事したらしい。割にしつこいタイプか?(笑))

    真っ赤なほっぺたの、比較的がっしりした男性だが
    この人の音色の多彩さと言ったら(絶句)

    第1楽章のテクニックに、まずは唖然。
    カデンツァの高音の素晴らしさに息を飲んでいる時に
    芝生席にいる子供が泣き出して
    親があやしたりしている声が響き渡ったのも
    空の上で、小型飛行機が爆音を撒き散らしながら飛んでいったのも
    野外コンサートならではの醍醐味(やけっぱち)

    盛大な拍手が起こった後の
    第2楽章のバイオリンの音が
    第1楽章と全く違うので、椅子からずり落ちそうになった。
    音の色が全然違うのだ。
    ちょっと曇ったような、柔らかい音色で奏でられる
    この上なく甘美なメロディ。
    えええええっ、この人、同じバイオリンを弾いてるよね?
    何故、そんなに音が変わるんですか???

    第3楽章は音の明るさが戻って
    確実なテクニックに、クリアな音色で小気味良い演奏。

    アンコールがこれまた超絶技巧で
    ボウを動かしながら左指でのピチカートとか
    高音の澄んだフラジョレットとか
    度肝を抜かれるテクニック満載なのに
    ものすごく音楽的に響く。

    私はシロウトだから全くわからないけれど
    きっとボーイングのテクニックが卓越しているんだろうなぁ。
    たった1つのバイオリンで
    あれだけ多彩な色が出たら、面白いだろうなぁ・・・

    バイオリン協奏曲の第1楽章の後で
    盛大な拍手が起こったので
    後半のチャイコフスキーの「悲愴」での
    楽章間拍手は、まぁ、もう仕方ないわ、と
    最初から諦め切っていたのだが

    民族衣装ディルンドルやトラハテンをお召しになった
    オーストリアの年配の紳士淑女の皆さまを
    侮ってはいけなかった・・・
    第3楽章の後に
    芝生席から若い声でブラボー・コールに拍手があったけれど
    すぐに周囲からシッ!と窘められて
    客席からは楽章間拍手は全くなし(すごい)

    まぁ、ゲルギエフが第3楽章と第4楽章を
    ほとんどアタッカで繋げた、というのはあるのだが。
    (舞台を見ていたら、指揮者がそのまま振り続けているのはわかる)

    で、このチャイコフスキーの交響曲6番。
    またもや、テンポが遅い。
    ものすごく遅い。
    気味が悪くなるほど遅い。

    その分、ロシアっぽい暗さに満ちた
    ドラマチックな要素が際立つ。
    丁寧に丁寧に描き出されるメロディ・ライン。

    クラリネットの消え入るようなソロの後の爆発は
    テンポを思い切り上げて対比を明確に打ち出してくる。

    遅いところは徹底的に遅く
    速いところは徹底的に速く、というのは
    指揮者あるあるネタだと思うのだが
    ことゲルギエフの手にかかると
    これがイヤミにならず
    しっとりさを保ちながら
    徹底的に雄弁に、劇的に語りかけて来るのは何故なんだ。

    あんなにゆっくりなテンポで演奏されているのに
    緊張感は増すだけで全く失われず
    中間部のドラマも相まって
    呼吸もできなくなりそうな緊迫感のある第1楽章の後

    第2楽章のワルツは
    今度は、まったくタメがなくて
    あっさりとインテンポで流すところが、これまたニクい演出。
    あのしつこい第1楽章と全く違うので、びっくりする。

    ワルツも、ウインナー・ワルツではない。
    では帝政ロシアのとことん優美なワルツかと言うと
    (ムーティさまとウィーン・フィルは正に優雅なワルツだった)
    ヨーロッパ的貴族社会の優雅さからは一歩離れて
    ちょっと田舎的な響きが聴こえてくるという芸の細かさ。

    第3楽章の盛り上げ方は、かなり華やかで
    リズムの乗り方が気持ち良いし
    オーケストラ・メンバーの音の刻みも
    揃っていて見事。

    野外だと、トロンボーンとかが咆哮しても
    まぁ、カッコいいというか
    シンバルを鳴らせた後に
    シンバルを上に移動させて、左右に開けるって
    何だか新興宗教の妖しげな儀式みたいに見えるけれど(笑)
    舞台上のパーフォーマンスとしては、かなり目立つ。
    音響的にもシンバルの響きが会場に満遍なく散って素晴らしい。

    最小の拍手のフライングでアタッカで続けた最終楽章。

    あ〜、もう、こういうロシア的な嘆きというか
    やるせない思いの泣き節って
    ロシアのオーケストラでなければ出ないわ(断言)

    特に、例のコンサート・マスターが率いる
    第1バイオリンの「泣き節」は
    もう、もう、見事すぎる。
    あそこまで、泣いて泣いて泣いて
    それでもイヤミにならないって
    ロシアのオーケストラしか出来ない芸当だろう、たぶん。

    第1楽章と同じく、いやそれ以上に遅いテンポで
    徹底的に泣かせるメロディ。
    途中の長調部分の透明な、まるで空想の中の
    儚い幸せみたいな部分の美しさって
    まるでこの世のものではないような印象。

    じっくり、じっくり、音の一つ一つを歌わせて
    泣かせて、嘆かせて、諦観に至って
    最後は・・・やっぱり「死」の静けさまで

    クラリネットとコントラバスの最後の音が消えてからも
    ゲルギエフ、感極まって固まってしまって

    指揮者が固まっているので
    観客も、周囲で小声で「終わったんだよね?」とかは言ってるけれど
    なかなか拍手しづらくて

    いったいゲルギエフ、いつまで固まってるんだ?
    ・・・と思ったのは
    聴衆だけではなかったようで

    指揮者じゃなくて、例のコンサート・マスターが
    まずは身体の緊張を解いた。
    これで、客席からは拍手の嵐(笑)
    (コンサート・マスター氏、ありがとう(爆笑))

    あまりに最初から最後までの緊張感が凄すぎて
    もうチャイコフスキーでお腹一杯・・・という感じ。
    ロシア的に「しつこい」ドラマチックな泣き節が
    最後は不気味な地下の深いところまで
    とんでもない世界に連れて行かれたという感じ。

    ゲルギエフの指揮棒は
    たぶん、絶対に「指揮棒」じゃないんだけど
    長さとしては
    今まで私が見たなかで最大の長さで
    日本で言えば菜箸くらい。
    普通の指揮者が普通に使っている指揮棒と
    長さはほとんど変わりない。
    (でも、あれ、絶対指揮棒じゃない。
     本当に菜箸だったりして(笑))

    どんなに指揮棒を持っても
    やっぱり、この人の指揮って、ま〜ったくわからないのだが
    (後ろから見ていてもアインザッツずれてるし)
    それでもああいう音楽が出来ちゃうって
    指揮者がすごいのかオーケストラがすごいのか
    両方ともすごいんだろうな、きっと(笑)

    このコンサート、シリーズの中でも
    最も高いチケットの一つだったのだが
    あれだけ密度の高いチャイコフスキーを聴かせてくれたら
    高いチケットもガソリン代も
    充分にペイした、と
    ものすごく満足している私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



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