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番外編 オーストリアを震撼させたイビサ事件

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    芸術を楽しむ云々の前に
    昨日、5月17日金曜日18時に
    ドイツのメディアが発表したビデオで
    オーストリアの政治に雪崩が起きた。

    これが、そこらへんのテレビ・ドラマよりずっと面白くて
    5月18日の夕方まで、ずっとメディアを追いかけていた。

    クルツ首相の記者会見が19時45分からだったので
    18日のダンス公演でも、前半が終わった20時には
    観客全員がスマホを取り出してニュースをチェックしていた、という状態。
    (何の公演に行ったのかは、別記事で書きます)

    オーストリアは小国だから
    日本のメディアは、かなり遅い時点で
    ほんの「ちらっ」と取り上げただけなので
    どの小説よりテレビ・ドラマよりドラマチックだったのに
    全くそれが伝わっていないので
    日本のマスコミより、少し詳しく記述しておく。

    まずは前知識。ご存知の方は飛ばして下さい。

    オーストリアの政党は

    国民党:保守系。実業家、教師、役人などが支持者に多い。
        長く振るわなかったが2017年に若くてイケメンなクルツが党首になって
        選挙で大勝利を収めた。

    社会党:労働者保護に力を入れている。伝統的に労働者層に支持者が多かったが
        難民問題でも積極的に難民を助ける政策を出しているため
        最近は、愛国主義を標榜する自由党に票が流れている。

    自由党:極右の愛国主義を主張する党。
        代々ナチスの党員だった人とその家族も多い。
        外国人は出ていけ、というのを堂々と主張する。
        党首イェルク・ハイダー (1950-2008) が
        1986年に36歳の若さで党首になってから
        その問題発言にもかかわらず、カリスマ的なオーラで支持者を増やしたが
        2008年に突然の交通事故のため急死(享年58歳)
        その後、ハインツ=クリスティアン・シュトラッへが党首になり
        同じようにカリスマとクリーンなイメージで
        社会党の難民政策に納得しない労働者や
        外国人反対運動の支持者を得て
        票を伸ばしている。いわゆるポピュリストである。

    他にも、緑の党や、リベラルのネオスなどがあるが、ここでは割愛する。    

    オーストリアの連邦政府は、2017年から国民党と自由党の連立政権。
    国民党はコンサバ保守だが
    当時31歳だったセバスティアン・クルツを党首にして
    選挙では大勝利を収めた。

    比較的厳しい難民政策を挙げたため
    社会党とは相入れず
    結局、自由党との連立政権が成立。
    (これは、自由党の極端な外国人排斥政策に対して
     正面から戦わず、うまくまとめて中庸政策にした上で
     外国人排斥には賛成だが、極右の自由党を選びたくない、という
     有権者を国民党に取り入れた、という側面があると思う)

    さて、ヨーロッパ連合へ出す議員の選挙も近づいた5月17日(金)の18時。
    金曜日だったし、普通なら、
    ジャーナリスト含めて、みんな帰宅への途中、という時間。

    南ドイツ新聞と、北ドイツのシュピーゲル誌が
    ウエブ上に、シュトラッへと、その腹心グデーヌスが
    ヨーロッパのリゾート地イビサで
    「ロシアの大富豪の姪」と
    2017年の選挙前に
    隠し財産の出資話に応じているビデオを発表。

    オーストリア全土が揺れた、政治的大爆弾が投下された。

    6時間以上、話をしていたらしいのだが
    公表されたのは、その中の一部。

    ただ、これがもう・・・絶句モノの政治家のホンネ。
    (いや、これを全部の政治家のホンネと言ってはいけないと思うが)

    ロシア大富豪の姪は、出資したいが
    公にできない金なので・・・・・と繰り返しているらしい。
    (そこはビデオに登場しない)

    それに対して、シュトラッへ曰く

    クローネ新聞を買いなさい
    (註 クローネ=オーストリア最大の日刊新聞の一つ)
    そしたら、3人か4人、ちょいちょい、と首を切って
    我々の支持者を5人ほど入社させて
    選挙の前にクローネ新聞が扇動したら
    27%じゃなくて34%は選挙で取れますよ。

    そうしたら、建築会社を設立して
    我々が政権に入ったら、
    今、公共事業を請け負っているS社のやってる仕事を
    全部、あなたの会社に発注しますから。

    党への寄付は、党に直接ではなく
    とある協会に寄付して下さい。
    協会への寄付なので、会計監査院は通りません。

    大きな会社(ここでいくつかの具体的な会社名が出てくる)は
    大金を(金額に関する言及あり)この協会に寄付してます。

    ちなみに、ここで出された具体的な会社は
    政治的寄付については否定している。

    ついでだが、その後に
    ジャーナリストなんて、みんな娼婦みたいなものだ、とかも言ってるらしい。

    大きな会社も敵に回したが
    それよりも、最大の日刊新聞の一つ、クローネを名指したので
    当該のクローネ紙は、もうカンカン(笑)

    クローネの競争相手のスタンダード紙なんか
    すぐに「うちの新聞はロシア人なしでもお買い求めになれます」
    なんて言う宣伝を打ってくるし(爆笑)

    昨日金曜日の夜
    当該のシュトラッへには、マスコミは連絡がつかず
    自由党事務官のコメントは唯一

    「シュトラッへは法律に触れる事は言っていない。
     このビデオは違法に撮影されたものなので訴える」

    ・・・もちろん、このビデオは偽物だ、とは言えない(本物だから)

    クリーンなイメージを出して
    オーストリア国民が一番です!!!みたいな事を
    堂々と言っていた党首が
    裏でロシア・マフィアと繋がりたがっていたとはね。
    (この会見そのものが、どうもフェイクらしい。
     隠しビデオも、しっかりとカメラを設置して撮影していた)

    しかしまぁ、ここまでホンネを言ったらヤバイわ。
    いくら酒が入っていたとは言え
    ヨーロッパ社会では、酔っ払っていた事は言い訳にならない。
    何せ、ワインの中に真実はある、と言う民族だし。

    一夜明けて土曜日。
    普通は週末で、誰も仕事していない筈だが
    首相官邸のあるホーフブルクの一角は
    物見高いオーストリア人で一杯。

    シュトラッへが12時に会見を開くというので
    ヒマな人たちが集まったらしい。
    (テレビのインタビューで「ヒマだから来てみた」と言ってる人がいた)

    自宅にはテレビ・・・はないので
    オーストリア国営放送のインターネット中継に齧り付く。

    12時少し遅れて登場したシュトラッへは
    最初に辞任云々は言わず

    国際的陰謀の犠牲になった哀れな自分を強調し
    国民党との連立政権で、すべてが上手く行っていた事を強調し
    私の人生で最も大切な妻に詫びなければならない、と強調し

    それからやっと
    首相に、副首相辞任を伝え、容認された。
    此れを以て自由党からも脱党し、党首はホーファーが継ぐ
    酒が入っていたとは言え、大きな間違いをしたのは認める、と言って

    マスコミに質問の時間も与えず
    さっさとホールを去っていった。

    いやもう、最後の最後に
    国際的陰謀論を強調し
    自分はちゃんと政治的業績を上げていたのに
    陰謀の犠牲になった、妻に申し訳ない
    昨日から激励してくれた支持者の皆さま、友人にも申し訳ない、と

    悲劇の主人公を演出するのを忘れないところは
    さすがに政治家(だった)というか
    ブレインの原稿が巧いのかもしれないが
    未練たらしいと言うか、しつこいと言うか(爆笑)

    同席していたグデーヌスも同様に政界から去った。
    (この人、お父さんも有名なナチスの政治家だった2代目議員である)

    いやしかし、この鮮明なビデオ
    しかも2017年の録画が
    どういうルートで
    しかもヨーロッパ連合選挙を直前にした
    このタイミングで
    ドイツのマスメディアが発表する事になったのか

    実際にシュトラッへは見事に嵌められたわけなのだが
    これは対立政党による陰謀なのか
    それとも、自由党内でシュトラッへの人気を羨んで
    自分がトップに登りたいという内部争いなのか
    あるいは、どこかの秘密団体が
    資金のネタになるように誘導したものなのか
    (だってこれ、情報提供者が無料で出したとは思えないでしょ?
     巨額の裏の資金が新聞社から放出されている筈だ)

    公表されていないビデオ部分には
    他の政治家の悪口とかも入っているらしい。
    現在では Spiegel の記事も有料会員限定になっているようだが
    金曜日の18時過ぎにすぐにニュースに飛びついて
    オペラ座のバレエから帰ってから、ずっと記事を追っていた私は
    シュトラッへのオリジナル・ビデオを
    (ちょっと、いや、かなり笑いながら)鑑賞する事が出来た。

    オーストリア首相、セバスティアン・クルツは
    この件に対し
    19時45分に記者会見を行い
    できるだけ早く総選挙をする、という意向を示し
    20時過ぎにオーストリア大統領から
    総選挙の認可を受けたとの事。

    発覚してから18時間で集結した
    政治的失脚劇は
    そこらへんのドラマより面白かった。

    オーストリアの選挙は党選挙であって
    各個人に票を入れる方式ではないので
    各党は、それぞれの政策を明確に打ち出して選挙に出てくる。
    その意味で、選挙の際にあまり迷う事がないのが楽。

    とは言え、オーストリア国籍を持っていない身としては
    自由党がどんどん票を伸ばして行くのが不安だったのだが
    (政治はこちらでは身近な問題に直結する!)
    自由党、ざまぁ見ろ、という感じだったな。

    という訳で、本日は番外編。
    夕方のダンス公演については、また後で書く予定だが
    このドラマをリアルで追えて
    結構、楽しんでしまった私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。


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