<< NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団 + トーマス・ヘンゲルブロック | main | ライモンダ ウィーン国立バレエ 1回目 >>

フローリアン・ベッシュ + マルコルム・マルティヌー

0
    Musikverein Brahmssaal 2018年3月7日 19時30分〜21時05分

    バリトン Florian Boesch
    ピアノ Malcolm Martineau

    Franz Schubert (1797-1828)

    Aus „Schwanengesang“, D 957
     Liebesbotschaft
     Frühlingssehnsucht
     Ständchen
     Abschied
     In der Ferne
     Aufenthalt
     Kriegers Ahnung

    Drei Lieder nach Texten von Johann Wolfgang von Goethe
     Grenzen der Menschheit, D 716
     Meeres Stille, D 216
     Der Fischer, D 225

    Aus „Schwanengesang“, D 957
     Das Fischersmädchen
     Am Meer
     Ihr Bild
     Die Stadt
     Der Doppelgänger
     Der Atlas

    アンコール
     Die Taubenpost

    ドイツ・リートというのは
    テキストと音楽の一体化と語り口と
    ドイツ語のディクションの美しさに
    如何に音楽性を乗せるか、という
    非常に難しい分野だと思う。
    (他の分野、オペラやマドリガルなどが簡単とは言ってません、念の為)

    よって、どんな美声の持ち主でも
    別にこの人でドイツ・リート聴かなくても良いわ、というケースもある。
    (具体的に何人もの歌手が思い浮かぶのだが
     名前を書くのは止めておく ^^;)

    つい数年前まで
    ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウという
    とんでもない巨匠がいて
    この人が居たからこそ、この芸術ジャンルが生き延びたと思うのだが

    ただ、あまりにこの歌手が偉大すぎて
    その後、フィッシャー=ディースカウにそっくりの歌手が続出。

    ああ、もう、ディースカウの遺産から離れられないのか・・・
    と思っていたら

    ここ数年、ディースカウのアプローチと
    全く違うドイツ・リートを聴かせてくれる歌手が出て来るようになった。

    聴き手としての自分自身も
    ディースカウの呪縛から
    やっと、逃れる事が出来てきたような気がする。

    ディースカウを継ぐ素晴らしいリート歌手も居るけれど
    フローリアン・ベッシュというバリトンは
    ディースカウとは全く違った局面から
    シューベルトのリートにアプローチしていて

    「冬の旅」や
    この間の非常に奇妙な「美しき水車小屋の娘」に続き
    今回は「白鳥の歌」を中心にプログラムを組んだ。

    地下鉄が遅れて
    ギリギリの時間にホールに入ったら
    係員が「プログラム売り切れ」・・・・・って
    ええええええっ、ドイツ・リートをテキストなしに聴くのっ!?
    (テキスト見るという前提なので
     舞台は全く見えない貧民席を確保している)

    その時はプログラム内容までチェックしていなかった。
    (シューベルトの歌曲という事はわかっていたが
     シューベルトのドイツ・リートって576曲ある・・・)

    手元のスマホで楽友協会のサイトに入って曲目だけ見たら
    前半は白鳥の歌からの歌曲だったので
    曲そのものを知っていたから良いんだけど。

    し・か・し!!!
    ベッシュはタダモノではないので、すごい曲の順番になってる。

    長調の「愛の使い」から「春の憧れ」
    短調の「セレナーデ」を挟んで、長調ながら悲しさの混じった「別れ」
    その後に「遠国にて」「住処」第1部の最後は「兵士の予感」と
    ど〜んどん暗くなって行く。

    最初の「愛の使い」でひっくり返りそうになったのだが
    極論っぽく言えば、この人、歌ってない。
    あくまでもテキストのドイツ語を
    音楽という第二義的補助を使って「語って」いる。

    続く「春の憧れ」も、徹底的にドイツ語の語りにしているので
    音楽的にものすごく不思議な部分が噴出する。

    驚くようなところでタメるとか、ほんの少しのテンポのズレとか
    更には音程の外れまで散見(散聴?)されて
    ものすごく奇妙なシューベルト。

    シューベルティアーデのイメージのような
    家庭的な温かさというのものが、すっぽり抜けて

    テキストを強調する歌い方だが
    激情に流されず
    ものすごく客観的に、ある意味、冷たい突き放しがあり
    ちょっとゾッとするような感じで鳥肌が立つ。

    テンポの遅い「遠国にて」「住処」「兵士の予感」では
    その美声もたっぷり聴かせてくれたけれど
    ベッシュの暗めの低音で、こういう歌を聴くと
    シューベルト歌曲の持っている鬱な部分が強調されて
    ああああああ、暗い、暗い、暗いわ。

    幕間にやっとプログラムを入手。
    後半の最初の「人間の限界」って・・・
    このテキスト、良く知ってる。

    反射的にフーゴー・ヴォルフの音楽が頭の中に浮かんだのだが
    へええええ、シューベルトも作曲してたのか。

    聴いてみると
    テキストによるものなのだろうが
    メロディの扱い方がヴォルフにすごく似ている。
    (というより、ヴォルフが後だから反対か(苦笑))
    音そのものの動きが少なくて
    あくまでもテキスト重視の曲になっていて
    音楽的には・・・まぁ、あまり面白くはない(こらこらこら)

    「海の静寂」「漁師」と続けて
    その後は、また「白鳥の歌」に戻る。

    で、またこの組み方が
    「漁師の娘」「海辺にて」「彼女の肖像」「街」「ドッペルゲンガー」「アトラス」
    と、どんどん重くなり暗くなる編成。

    前半と同様に
    場合によっては音楽を多少なりとも無視しても
    テキストが前に出て来て
    明るい曲でも、ゾッとするような背景が見える。

    ドッペルゲンガーなんて・・・
    あああああ、あの表現をどう言語で表現すべきか。
    ともかくゾッとする。コワイ。
    存在感そのものを問うような恐ろしさがある。

    しかも最後がアトラスとはね。
    すごい声量の美声で
    どっしりした重さで
    全世界の苦しみを
    しかもオペラ的感情の噴出ではなく
    抑えて抑えて抑えたところで出してくるので
    ほとんど絶望感しか見えてこない。

    うううう、これでコンサートを終わりにするなんて・・・
    鳥肌立ちっぱなしだし
    精神的にむちゃ落ち込むし
    暗いし絶望するし、そりゃないだろ。

    でも、もちろん(!)リートのリサイタルだから
    アンコール曲がある訳で

    そうです、アンコールと言ったら、もうコレしかない、という選択で
    「鳩の便り」

    これ、シューベルトの最後の作品と言われていると思うのだが
    普通は聴いて、ちょっとホッコリする曲。

    でもベッシュが歌うと
    ホッコリというよりは、やっぱり奇妙なのだ。

    最後の
    Sie heißt - die Sehnsucht ! Kennt ihr sie ?
    それを「憧れ」と言う。君たち知ってるかい?(意訳)
    の部分の Sehensucht (憧れ)を
    極端な小声で、まるで囁くように歌われて
    「そんなモノ、実はないんだよ」と
    耳元でそっと言われている気分(妄想爆発中)

    この歌手の歌うシューベルトは
    ともかく奇妙で
    伝統的解釈の音楽的シューベルトが好きな人には
    かなり違和感があるだろう。

    自分自身も、ベッシュのシューベルトを欠かさず聴いて来て
    果たしてこれが自分の好きなアプローチか、と問えば
    自信を持って、大好き、とは言えないのだが

    じゃぁ、伝統無視の奇妙なだけのシューベルトか、と言われると
    ちゃんとドイツ・リートとしての
    端正な節度を持っているので
    奇妙とは言っても、不思議に人を離さない魅力があるのだ。

    ともあれ
    こういうアプローチが出来る歌手が居るというのは
    大事な事だし
    ドイツ・リートのファンとしても嬉しい、と
    これだけは確信持って言っちゃう私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



    気温はプラスまで上がったし
    多少なりとも太陽も出るようになったし
    でもベッシュのシューベルトを聴くと
    まだ冬の真っ只中のような気分になる。
    ・・・でも、実はそれも悪くないと思う今日この頃。

    スポンサーサイト

    0
      • 2018.07.15 Sunday
      • -
      • 23:30
      • -
      • -
      • by スポンサードリンク

      calendar
      1234567
      891011121314
      15161718192021
      22232425262728
      293031    
      << July 2018 >>
      PR
      ★コンタクト・メイル★
      メイルはこちらへ
      ブログランキングに1クリックお願いします
      selected entries
      categories
      archives
      recent comment
      recommend
      links
      profile
      search this site.
      others
      mobile
      qrcode
      powered
      無料ブログ作成サービス JUGEM