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ウィーン・ピアノ・トリオとマーク・パドモア

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    Wiener Konzerthaus Mozart Saal 2017年6月20日 19時30分〜21時50分

    Wiener Klaviertrio
    バイオリン David McCaroll
    チェロ Matthias Gredler
    ピアノ Stefan Mendl

    テノール Mark Padmore

    Richard Rodney Bennetto (1936-2012)
     Tom O’Bedlam’s Song
    Franz Schubert (1797-1828)
     Harfenspieler I D 478 “Wer sich der Einsamkeit ergibt” (1816/22)
     Harfenspieler III D 480 “Wer nie sein Brot mit Tränen aß” (1816/22)
     Harfenspieler II D 479 “An die Türen will ich schleichen” (1816/22)
    Thomas Larcher (“1963)
     A Padmore Cycle.
      Lieder (Fassung für Tenor und Klaviertrio) (2010-11/2017)
    Franz Schubert
     Herbst D 945 (1828)
     Auf dem Strom D 943 (1828)
    Ludwig van Beethoven (1770-1827)
     Klaviertrio B-Dur op. 97 “Erzherzog Trio” (1811)

    日中の気温が30℃を越えた真夏日の夕方
    隣の大ホールではルドルフ・ブフビンダーのピアノ・リサイタル。

    もちろんチケットは持っていたし
    ブフビンダーは好きなので
    普通だったら、隣のホールの室内楽には行かないのだが

    ええええええっ?!
    何故にこんな目立たないところに
    テノールのマーク・パドモアの名前が・・・ (*_*)

    目がテンになって慌ててチケットを購入。
    だって、マーク・パドモアって
    滅多にウィーンに来ないし歌ってくれないし

    今回のコンサート、貧民席含めて
    結構、席が空いていた、というのは、どういう事なんだろ?
    同じテノールでもヨナスなんとか(商人)という
    チケットが全く手に入らない人もいるのに(関係ないか)
    オペラとかで華々しく歌わないからかな。

    パドモアのナマの声は
    2011年6月9日に初めて聴いて、えらくショックを受け
    その後、2014年11月27日にリサイタル聴いて
    もちろん、CD のマタイ受難曲も即購入してある。
    実際に聴く機会がないのは本当に残念だが。

    今回のコンサートは、現代音楽もテーマになっていて
    最初はリチャード・ロドニー・ベネットの歌(英語)
    1600年頃の無名の詩人の歌詞で
    精神的な患いを持っている乞食の語りかけという内容。

    伴奏は(珍しい事に)チェロのみ。
    最初から激しいチェロに
    声量最大限のテノールが入って来て
    僕が食物や餌や飲み物や服を乞うて歌っている時に
    どうぞ逃げないでおくれ
    哀れなトムは貴女がたに何もしないから
    というのがリフレインで入ってくる。

    どんなに声量が大きくなっても
    英語のテキストのクリアさに影響がなく
    はっきりと聞こえる上に
    リフレインの静かな語りかけが
    この上なく甘くて優しくて

    ああ、もう、本当にホロッとしちゃうんですけど
    しかも現代音楽で・・・

    チェロの響きが、また豊かで
    小さいホールの良さって、本当に素晴らしい。
    こういう曲って、大ホールで聴いたら台無しだと思う。

    シューベルトの「竪琴弾きの歌」は有名だけど
    ものすご〜く久し振りにナマで聴いたような気分。
    聴いてみれば歌詞もメロディも頭の中に入ってはいるのだが
    (子供の頃に聴いたものって、本当に忘れない、不思議な感じ)

    英語で現代曲を歌っていたパドモアが
    突然、完璧なドイツ語で歌い出すと
    イメージが全く違ってビックリする。

    しかしこの人のテキストって
    何てクリアで美しいのだろう。
    ドイツ語の発音の一つ一つが実に見事で美しく
    それが音楽として成り立っていて
    しかも正統派ドイツ・リートの抑制が効いていて
    端正で理性的で、感情任せにならないのに
    時折のぞかせる、その限りない甘い優しさって何なんですか。

    クール・ビューティで理性的でインテリジェンスを感じさせるのに
    それが冷たくならず
    信じられない程の温かみと人間の体温が伝わってきて
    抑えられた悲しみが大袈裟にならず
    心の深いところに、しっとりと届く。

    マーク・パドモアの声の質はハイ・テノールなのだが
    本当にこの人、何という美声なんだろう。
    低い部分もテノールの色のまま
    高音になると、何とも言えない甘さが加わって
    体感的にジンジンして来てしまう。

    ・・・こういう声を女殺しと言うんじゃないか(違!)

    しっとりして哀愁を帯びたシューベルトの後は
    オーストリアの作曲家、トーマス・ラルヒャーが
    オーストリアの詩人 ハンス・アッシェンヴァルトと
    アロイス・ホルシュニックのテキストに作曲したもの。
    (詩人は二人とも 1959年生まれ)
    パドモアの声と芸術性を視野に入れていて
    今回が初演になる。

    ピアノ・トリオとテノールの組み合わせで
    テキストは非常にフラグメンタルだけど

    うわあああ、こういう音響、好きですワタシ (*^^*)
    Sprechstimme と
    ピアノの弦を叩いたところが
    ぴったりと音響的に一致する部分には
    鳥肌がたった。

    アトナールとトナールの組み合わせが絶妙で
    テキスト(ドイツ語)の内容は
    ものすごく抽象的なんだけど
    単語の一つ一つが「立って」いて
    音響のバリエーションが豊かで
    演奏時間25分が、あっという間だった。

    ピアノの弦のいくつかを
    持続的に鳴らしてたけど
    あれはどうやったんだろう?

    途中で弦に貼ったテープを剥がすというのもあったけれど
    残念ながら、これはさすがに音が小さ過ぎて
    隣の年配ご婦人お二人が
    大きな音を立ててプログラムのページを捲っていた音に
    かき消されました(涙)

    最後にシューベルトの「秋」と
    ピアノ三重奏の伴奏での「流れの上で」
    これがまた何ともロマンチックで
    でもロマンチックになり過ぎない抑制があって

    あぁ、もう、このパドモアの歌って
    ツンデレからツンツンにはなるわ
    デレデレにもなるわ
    相反する要素を全て含めていて
    インテリジェンス溢れているのに甘くて切ない ♡

    前半のマーク・パドモアがお目当てで来たので
    後半のベートーベンのピアノ三重奏曲「大公」なんて
    何の期待もしていなかったのだが

    実はこれがむちゃくちゃ面白かった(笑)

    すご〜くマジメでシリアスで神経質そうで
    ちょっとおちょくったら、怒らせると恐そうな男性3人が
    恐るべきマジメさで演奏するのだが

    室内楽って、こんなに楽しかったっけ?
    というよりは
    ベートーベンの室内楽って
    こんなにぶっ飛んでるんかいっ?!

    オーケストラとバレエの追っかけをしている身としては
    室内楽まで手が回らないし
    室内楽って、オーケストラのような色彩感もないし、と思っていたけれど

    やっぱり音楽ってナマで聴かないとわからないですね。
    だってもう、何だかこのぶっ飛びベートーベン
    異様に可笑しいんですもん(ちょっと違うかもしれない)

    交響曲では整合性に命をかけているベートーベンが
    室内楽で、むちゃくちゃ遊んでいるのがわかる。
    おい、それやるか?みたいな部分が次から次に出てくるし
    ここでいっちょう、観客を驚かせたれ、としか思えないフレーズがあるし
    (第3楽章からアタッカの第4楽章。隣の老婦人は思わず笑ってた)

    とことんマジメに見える男性3人が
    それぞれに視線と体の動きでコンタクトしながら
    ひたすらマジメに演奏しているのが、また楽しくて
    いや、演奏している方々は、そりゃシリアスに演奏しているのはわかるけれど
    見ている側としては、そのシリアスさが
    まるで演劇のような感じになっていて、目が釘付け (・_・

    前半終わった後で帰らなくて良かった。
    室内楽のファンじゃないのに
    室内楽って、こんなに楽しいのか、と
    ちょっとビックリしてしまった。

    とは言え
    これ以上のコンサートに行くだけの
    お金も時間も体力もないので
    室内楽にハマるのは避けなければ、と
    今の時点では決心している私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。


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