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ピーター・グライムス ウィーン劇場

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    Theater an der Wien 2015年12月22日 19時〜22時10分


    PETER GRIMES

    Oper in einem Prolog und drei Akten (1945)

    音楽 Benjamin Britten

    台本 Montagu Slater 

     nach der Verseerzählung THE BOROUGH (1810) von George Crabbe


    指揮 Cornelius Meister

    演出 Christof Loy

    舞台 Johannes Leiacker

    衣装 Judith Weihrauch

    振付 Thomas Wilhelm

    照明 Bernd Purkrabek


    ピーター・グライムス Joseph Kaiser

    ジョン Gieorgij Puchalski

    エレン・オーフォード Agneta Eichenholz

    ボルストロード Andrew Foster-Williams

    おばさん Hanna Schwarz

    姪 Kiandra Howarth, Frederikke Kampmann

    ボブ・ボウルズ Andreas Conrad

    スワロー Stefan Cerny

    セドリー夫人 Rosalind Plowright

    ホレス・アダムス Erik Årman

    ネッド・キーン Tobias Greenhalgh

    ホブソン Lukas Jakobski


    オーケストラ ORF Radio-Symphonieorchester Wien

    コーラス Arnold Schoenberg Chor


    オペラ苦手

    ブリテンの音楽苦手

    長い演目(2時間半以上)苦手

    ウィーン劇場のチケット、高過ぎ


    ・・・なのに、友人の絶賛に加えて

    新聞評がめちゃ誉められていると

    人に感化されやすい私は

    ホイホイとチケット購入サイトに行ってしまう。


    46ユーロの席で

    舞台、全然見えません、というのも、ひどくないか?


    最終列が入手出来たので

    ほとんどずっと立ちっぱなしで

    何とか舞台が見えた、という有り様。


    だったら立ち見席でも、と思うところだが

    ウィーン劇場の立ち見席は、一番上の脇ギリギリにしかないのである。

    乗り出しても舞台はほとんど見えない筈だ。


    まぁ、ウィーン劇場のクローク・ルームが

    何と無料になっていた事は誉めてあげよう。


    あのクローク・ルーム、狭いし人は少ないし

    それで1ユーロ50セントとか取っていた時には

    人が溢れて大変だったのだ。

    (今だって人は溢れているが、少しはマシ)


    ベンジャミン・ブリテンの音楽が苦手な理由としては

    この人、どの伝統的な系列にも直接繋がっていない上に

    トナールなのに不思議な響きを持っていて

    どうも馴染みがない、というのがある。


    それでも、イアン・ボストリッジ博士のお陰で

    多少なりともブリテンを聴くようにはなって来ているが

    (焼け石に水、とも言う)


    最初の音楽から、うわ、これ、苦手かも・・・

    舞台は舞台装置がほとんどなくて

    全体が傾斜していて後ろの方がどんどん上がっていく方式で

    上手のオーケストラ・ピットに飛び出して

    ベッドが置いてある。

    床は、ビデオ投影だろうが、海か雲のような水色。


    ご存知の通り、このオペラは暗い話である。

    むちゃくちゃ暗い話である(強調)


    最初から、えらく声量のあるスワローがグライムスを責め立てる。

    うわわ、このスワロー、すごい存在感。

    このステファン・チェルニーという歌手は

    ずいぶん昔にフォルクス・オーパーで

    当時はテノールだったのだが、聴いてひっくり返った事があったが

    その後、バリトンに声域を変えてからも

    むちゃくちゃ声が出て、声が深くて美声で、存在感がタダモノではない。


    対するピーター・グライムスはテノールだが

    まだ最初は弱々しくて、大丈夫か、こいつ・・・


    エレンを歌ったソプラノが素晴らしい。

    清純な声で、本当にマジメな感じの歌にピッタリ合う。

    衣装もズボンを履いた灰色のビジネス・スーツで

    歌も演技も表情も、ともかくマジメで頑張り屋の女性教師(萌)


    ボルストロードは、グライムスと同じような位置で扱われていて

    この人も巧い。

    お友達、というよりも

    おほも達という立ち位置で扱われているので

    歌っていない時でも、さりげなく舞台上に居る。


    で、ピーター・グライムスだが

    話が進むと同時に、どんどん声が出て来て

    これは・・・ ううう、素晴らしい、スゴイ、凄まじい ♡


    しかもこの人、バレエとかやってなかった?

    筋肉質の身体なのだが

    怒ってジャンプする時の高さが半端じゃないんだけど。


    声に色があって表情があって

    張り上げている感じは全くないのに

    あの、惨めでちょっと人格破綻か、というグライムスの

    ものすごく複雑な性格を、ちゃんと歌い分けてるよ、このテノール(驚愕)


    脇役も巧い人が揃っていて

    ホレス・アダムス司祭なんか、実に(演技含めて)巧かったし

    ボブソンの、ちょっと崩れた不良っぽい感じにもドキドキ。

    ボブ・ボウルズは高めのヒステリックな声が出るテノールで

    これも役柄にピッタリだし、ネッド・キーンの不良振りも良かった。


    ウィーン劇場って、本当にどのプロダクション取っても

    どこでこんな良い歌手を見つけてくるの?と思う。


    (というより、最初は、歌手の声がみんなでか過ぎて

     ちょっと吃驚した。あの劇場は狭いので声量があり過ぎると

     反ってうるさく響くのである)


    このプロダクション、最初はクルト・シュトライトが

    タイトル・ロールを歌う予定だったのだが

    キャスト変更で、ヨゼフ・カイザーになって

    これは本当に幸運なキャスト変更だったと思う。

    (クルト・シュトライトの声で、この役は難しいような気がする)


    加えて、オーケストラが巧い ♡♡♡

    あのブリテンの不思議な音楽を

    とことん繊細に、音響的に美しく演奏してくれて


    途中の間奏曲とパッサカリアの美しさは

    筆舌に尽くし難い。


    オペラの話を追っているより

    オーケストラの間奏曲を聴いている方が恍惚として

    ウットリして、ブリテンの音楽の世界に誘われてしまう。


    で、このウットリする美しい間奏曲の時に

    舞台では、ほもほもシーンが演じられるのだが


    あの、ほもほもシーン、全然要らないから(断言)


    同性愛に反感を持っている訳ではないから

    グライムスとボルストロードがイチャイチャしようが

    ボルストロードがジョンをレイプしようとしていても

    それはそれで演出だから良いのだけれど


    オーケストラ演奏によるあまりに美しい間奏曲に

    耳が集中している時に

    舞台で、ほとんど暴力的なレイプ・シーンみたいなのが

    嬉しそうに繰り広げられていても

    音楽との関連性が全く欠けているので、反って気が散る。


    友人も言っていたけれど

    唯一、何か無理があるよなぁ、と思ったのは

    この、ほもほも三角関係を

    無理やり、このオペラに突っ込んでしまったところ。


    ピーター・グライムスって

    別にあからさまに同性愛云々を演出で押し込まなくても

    社会と個人、噂と裁判、正義を振りかざす人間の醜さとか

    それに押しつぶされる社会的弱者のグライムス、という観点で

    充分オペラとして成立するじゃないの。


    いや、そりゃ、中年過ぎたオバサンでも

    ジョン(これは俳優さん)の、むちゃ細身の

    これはベニスに死すの大人版か、という

    しかも上着脱ぐと筋肉隆々という(脚はむちゃ細い)

    髪の毛ロンゲだけど考えられないほどにサラサラで

    更に、顔が本当に、これが美少年というのか、という

    日本ではあり得ない美しさで♡


    そういう青年が大人の男性の獣欲の的になるというシーンは

    ついつい涎が・・・・あっ、何を言わせるんだ、ワタシに(汗)


    そういうシーンはともかくとして

    長いよなぁ、苦手だなぁこの音楽、とか思っているうちに

    どんどん、どんどん、ブリテンの音楽の世界に

    どっぷり浸ってしまって

    ストーリーもワケわからんが

    何となく、グライムスの被害者意識に染まって来て


    最後のグライムスのモノローグが

    ああああああああっ、何でこんなに心に響いてくるのよ、もう。


    このモノローグで、完全に入り込んでしまった後に

    あの最後のシーンで

    最初に出てきた潮騒のメロディに包まれながら

    ボルストロードから離れて

    後ろの唯一のドアから射す光に向かって退場するグライムスのところで


    うわ、もうダメ、心の中が号泣で洪水になりそう・・・


    苦手な音楽の筈なのに

    何でこんなに音楽が美しいんですか?!


    暗いストーリーで

    しかも社会対個人の対立とか

    ピーター・グライムスの複雑な性格とか

    今回は無理やりだったものの、同性愛の抑圧とか

    (演出上は抑圧してなかったけど(笑))

    扱っているテーマが、えらく重いくせに

    何かもう、胸が一杯になってしまう切なさ。


    最初は、ちっ、人の噂(=新聞批評とも言う)に釣られて

    大枚46ユーロも出して

    舞台の見えない席買って、3時間ってバカバカしいな

    ・・・と思っていたのがウソのように

    最後の方は、むちゃくちゃ感激の嵐に浸っていた。


    ちなみに、劇場は満員(立ち見席も満杯)で

    最後は盛大なブラボー・コールが飛び交っていたが

    それに充分値するプロダクションだった。


    時間を何とか無理にでも見つけて

    行って良かった、と、つくづく思った私に

    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



    残念ながら、本日が千秋楽。

    ウィーン劇場って、本当にプロダクションが良いんですよね。

    昔は全プロダクションに行っていたが

    お財布の底が抜けたので、今はほとんど行ってません(笑)






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