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マーク・パドモア + ティル・フェルナー

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    Musikverein Brahms Saal 2014年11月27日 19時30分〜21時30分


    テノール Mark Padmore

    ピアノ Till Fellner


    Joseph Haydn (1732-1809)

     She never told her lov, Hob. XXVIa:34

     The Spirits’s Song, Hob. XXVIa:41

     Antwort auf die Frage eines Mädchens, Hob. XXVIa:46

    Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)

     Das Veilchen, KV 476

     Abendempfindung am Laura, KV 523

    Ludwig van Beethoven (1770-1827)

     Adelaide, op. 46

     Selbstgespräch, Wo0 114

     An die Hoffnung, op. 94

     Abendlied unterm gestrirnten Himmel, Wo0 150

    Robert Schumann (1810-1856)

     Mârzveilchen, op. 40/1

     Muttertraum, op. 40/2

     Der Soldat, op. 40/3

     Der Spielmann, op. 40/4

     Liederkreis, op. 39, nach Gedichten von Joseph von Eichendorff

      In der Fremde

      Intermezzo

      Waldesgespräch

      Die Stille

      Mondnacht

      Schöne Fremde

      Auf einer Burg

      In der Fremde

      Wehmut

      Zwielicht

      Im Walde

      Frühlingsnacht


    この日はフォルクス・オーパーで

    モーツァルト ア デュ とドン・ホワンのバレエを

    もう一度鑑賞する予定でチケットも買っていたのだが


    その後、楽友協会でマーク・パドモアのリサイタルがあるのを知って

    まずはチケット確保の後

    フォルクス・オーパーのチケットを押し付ける人間を何とか見つけて

    ウキウキと楽友協会に走る私 ♡


    記憶力ゼロのくせに

    かなりしつこい私は

    2011年6月のこのコンサートで聴いた

    マーク・パドモアの声が忘れられなかったのである。

    (インターネットで調べたらパッドモアと出てきたが

     やっぱり日本でもパドモアで良いらしいので再度訂正しておく)


    ハイドンの英語のリートからどっか〜ん。

    何とも繊細で細やかで、しかも甘く

    温かくて、味があるハイテノール。


    ハイドンがロンドン向けに作った歌だなぁ、というのがよくわかる。

    イタズラ心とかではなくて

    もっと真摯な、愛と死を細やかに歌ってくれて


    Antwort auf die Frage eines Mâdchens からドイツ語。

    いや、この歌カワイイ。

    そりゃ、当時の歌だから

    死んでも僕の心臓から花が咲くよ

    その花の名前は「忘れな草」と言うんだよ

    ・・・という、まぁ、キライな人から歌われたら

    ただのストーカーだが(爆笑)


    ハイドンで一区切りかと思いきや

    ハイドンの歌からアタッカで(!)続けた

    モーツァルトの「スミレ」


    これがもう、何かもう、あのあのもう(興奮し過ぎて言葉にならん)

    あの繊細なティル・フェルナーのピアノと

    これも繊細で細やかなパドモアのテノールで

    劇的に、でも、ドイツ・リート的に抑えた距離感で

    ただ、絶対に冷たくも冷静にもならず

    なのに感情に溺れずに歌われると


    あ、涙腺決壊しそう・・・


    (いや、ただのマゾヒストの歌だ、という解釈もあろうが、うん・・・)


    Abendempfindung の美しさはまるで天国の美しさ。

    これも、死んだら墓にスミレを摘んでおくれ

    という、まぁ、当時は死がもっと身近にあったとは理解しているが

    辛気くさい歌なのだが

    長いボーゲンで、急かさず焦らず

    この上もなく優しく歌われると

    スミレくらい摘んであげるわ(あ、いえいえ、あの、その)


    こほん。本日は興奮し過ぎているらしい(反省)


    続くベートーベンの歌曲。

    アデライーデは中学高校時代から好きな曲で

    ベートーベンになると、パドモアも多少声量を上げて

    劇的な部分と強い部分を聴かせてくれる。


    Selbstgespräch が傑作で

    戯れ歌なのだが、早口で


    愛なんて敵でしかなかったし

    愛なんて揶揄いの対象でしかなかったのに

    何か気分の上下が激しいし

    あの子を見てから、他の子が目に入らないし

    どうも、どうも、僕は彼女を愛してるんじゃないか?


    というのを、繰り返し繰り返し繰り返し

    小気味良いテンポで歌い尽くすのだ。


    あはははは、ベートーベンって可愛い(笑)

    それに、ベートーベンってしつこい(爆笑)


    テンポの小気味良さが気持ち良くて

    ドイツ語もはっきり聴こえてくるのに

    噛み付くような鋭い切れ味じゃなくて(ディースカウとは全く違う)

    ああ、この人、こういう明るい歌も歌えるんだなぁ。


    私が完全に椅子からずり落ちそうになったのは

    An die Hoffnung (希望へ)というベートーベンのリートである。

    今まで聴いた事がなかったのだが

    これ、何ですか?

    最初から、ほとんど無調のような不気味な咆哮から始まって

    最初のフレーズの終わりに、和音がいつものところに落ち着くかと思ったら

    途中で和音が終結せずに、そのまま不思議な変調をしてしまって

    暗い部分と、それに対する希望への輝くような部分が

    まるで現代音楽みたいに出てくるの・・・


    うわ、驚いた。

    しかもパドモアが

    声を張り上げる事なく

    抑制の効いた劇的表現で言葉を紡いでいくので

    その迫力たるや

    ははぁっ、神さま、アナタ様は偉大ですっ(違うかも)という気分。


    ドキドキしながら終わった前半の後

    後半はシューマン。


    3月のスミレ(スミレ好きだね、パドモワ(違!))はともかく

    その後の Muttertraum を聴いて

    あれ、この和音進行、どこかで聴いた事が???と思ったら

    アイヒェンドルフ歌曲集の Zwielicht とそっくり!!!

    (使い回しかよ!(誤解))


    この Muttertraum 母親の夢 という曲が

    ハンス・クリスティアン・アンデルセンの曲なのだが

    (最初の4曲はすべてアンデルセン)

    最初はまどろむ子供を愛しげに見て

    浮き世の苦労を忘れて子供にキスして・・・と

    平和そうに始まるのに

    カラスがやってきて、おお、僕らの天使だ、喰ってやる


    ここでパドモアが声の色を突然変えて

    カラスになってしまって

    ゾクッと寒気がしたのは私だけではなかったと思う。


    続く Der Soldat 兵隊 も暗い曲だし

    Der Spielmann も世の中の不幸を見ている音楽家、という暗い暗い歌・・・


    続くアイヒェンドルフ歌曲集が

    よく聴いてみると、これもまた・・・暗い・・・

    果てしなく暗くて孤独で

    冬の凍り付くような寒さを感じさせる。


    まぁ、途中に Intermezzo とか

    最後の Frühlingsnacht みたいな恋の歌もあるけれど


    パドモアは声を極限まで抑えて

    一点の曇りもない、この上なく美しい安定したテノールで

    ピアニッシモで、親密に語るようにドイツ語を紡いで行く。


    Waldgespräch では魔女まで登場したし

    (声の色を変えるのだ、あの人、何でああいう事ができるのだ???)


    Zwielicht は、聴いていて背筋がゾクゾクして鳥肌がたった。

    すごい内容だしね。

    逢魔が時には友人も信じるな

    夜には何人かが居なくなる


    低いピアニッシモで

    Hüte dich, sei wach und munter ! と歌われた時には

    心臓を掴まれるようなギリギリ感が胸に迫った。


    しかし、後半の曲の選択は何なんだ?!

    シューマンの歌曲の中でも

    特別、暗いものだけを厳選しました、とか言うポリシーか?


    熱い拍手に応えてパドモアは

    ハイドン、モーツァルト、ベートーベン、シューマンなので

    ウィーンらしく、ではシューベルトを、とアナウンスして歌ったのが

    白鳥の歌から「セレナーデ」


    ・・・暗いんだよっ!!!


    これも、他のリート歌手に比べると、ものすごい繊細さ。

    声を張り上げる事なく

    感情に溺れずに、ピアニッシモの長いボーゲンで歌い上げる見事さ。


    しかし正直言って

    これだけ暗いプログラム組まれると

    確かにこれからヨーロッパは暗い冬に突入で

    精神的に鬱に陥る前に、ど〜んと一回、落ち込んでおきましょうね

    とか言う準備なのかもしれないが(違うかも)

    かなり、天国と地獄の往復が激しかったと言うのも事実。


    パドモアの声は抑制が効いていて

    濁りも力任せも一切なくて

    そして、繊細で、限りなく甘く、温かい。

    ウィーンにはあまり来てくれないけれど

    またライブで聴く機会があれば絶対に逃したくない。


    できれば、椅子の軋みのスゴイ楽友協会ではなく

    せめてコンツェルトハウスのモーツァルト・ホール辺りで・・・と

    叶わぬ夢を抱く私に

    どうぞ1クリックをお恵み下さい。



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