ウィーン・フィル + オロスコ=エストラーダ

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    Schloss Grafenegg Wolkenturm 2019年9月8日 19時〜21時10分

    Wiener Philharmoniker
    バイオリン Leonidas Kavakos
    指揮 Andrés Orozco-Estrada

    Antonín Dvořák (1841-1904)
     «Die Mittagshexe»
       Symphonische Dichtung für großes Orchester op. 108 (1896)
    Erich Wolfgang Korngold (1897-1957)
     Konzert für Violine und Orchester D-Dur op. 35 (1937-39/1945)
    Antonín Dvořák
     Symphonie Nr. 9 e-Moll op. 95 «Aus der Neuen Welt» (1893)

    グラーフェネック夏の音楽祭の最終公演は
    ウィーン・フィルとオロスコ=エストラーダが
    ロンドンのプロムスで演奏したプログラムを持って来た。

    チケットも高い。
    悪天候でホールに席のある一番安いカテゴリーで45ユーロ。

    天候がここ数日不安定で、昨日は大雨。
    今日も日中は太陽が出たけれど
    夕方には雨の予報。

    17時過ぎにチェックしてみたら
    「本日は予定通り、野外音楽堂で行います」
    ・・・って、本気か???

    夕方の気温、20℃切ってるし、風も強い。
    グラーフェネックに到着したら、小雨がパラパラ。
    直前にホールに変更になるか、と思っていたら
    野外音楽堂でのコンサートを断行。

    案の定、最初のドボルジャークの「真昼の魔女」の途中で
    かなりの雨が降って来た。

    観客全員(1500人くらい?)が
    椅子の下のビニールの使い捨てレインコートを
    ガサガサと開けて着用し始める。

    ビニールですよ?
    レジ袋みたいなものですよ?
    それを1000人以上が一斉に開けて着込むんですよ?

    ・・・どういう激しい雑音が発生するか想像つきます???
    もちろん演奏中です!!!

    あまりの雑音の激しさに
    指揮者のオロスコ=エストラーダが振り返って観客を見る。

    観客は立ったり、座ったままだったりだが
    ともかく、みんなレインコートを袋から出して広げていて
    それだけなら良いけれど
    当然ながら「これ、どうやって着るの?」とか
    「雨ってイヤね」とか
    それを機会に嬉々として周囲とお喋りする人も多い。

    しつこいようだが、演奏中です。

    ほとんど全員が着用するのに、約10分くらい。
    この間、オーケストラは舞台上で演奏を続けている。
    フォルテのトゥッティはともかくとして
    中間部のピアノは、雑音に掻き消されて、ほとんど聴こえない。

    しかも、みんな着終わった後でも
    ビニール・コートに落ちる雨の音がバラバラバラ・・・

    ちょっとこれ、1曲めが終わったら
    屋内のホールに会場を移すケースじゃないのか???

    いえいえいえ・・・
    次のカヴァコスがソロを弾いた
    あの、限りなく美しいコルンゴルトのバイオリン協奏曲は
    そのまま続けて野外で演奏。

    周囲はみんなビニールのレインコートを着用しているので
    ちょっと動くとレジ袋のガサガサ

    動かなくても、ちょっと風が吹いたりすると
    風で動いたビニールが衣装と擦れてガサガサ

    絶え間ないレジ袋のガサガサ音を背景に
    あんなに美しいコルンゴルトのバイオリン協奏曲を聴く羽目になるなんて。

    もちろん、いつもの付属品である
    外からの車の騒音や
    上空からの飛行機の騒音にも不足はない。

    耳元で隣の人のビニールがガサガサ音を出している状態で
    クラシック音楽を聴くというのが好きな人が居たらお目にかかりたいものだ(怒)

    この曲だって
    ホール内で聴いたら、妙なるバイオリンの美しい音に
    ブラボー・コールの嵐になったと思うのだが
    (最初の曲の時は、どうも指揮者が振り向いてイヤな顔をしたらしく
     珍しく客席の一部からブーが出た)
    小雨になったとは言え、レジ袋の雑音と一緒に聴いていたら
    バイオリンの音だって楽しくない(断言)

    なんだか、えらくヒステリックな硬質な音に聴こえて来て
    コルンゴルトに必要な甘さに欠けている。
    (あくまでも雑音が混ざった状態での個人的印象)

    アンコールにアルハンブラ。
    これ、カヴァコスの定番の一つだけれど
    この曲、ギターで聴いた方がずっと良いのに
    ただ超絶技巧だけ見せたいがために
    こんなバイオリンではムリムリな曲をムリに演奏するって
    何か意味があるのかしら・・・

    前半終わって、さすがにホールに会場変更かと思ったら
    そのまま野外でコンサート続行。
    途中でまた雨が降って来たので
    コートでしのいでいた私も、幕間にビニールを被る事にした。

    後半の前に、音楽監督ブッフビンダーが舞台に登場。

    「天気予報官と電話で話したところ
     大雨になるのは22時くらいから、という事でした。
     ウィーン・フィルのメンバーは
     最終コンサートのドボルジャークを
     野外で演奏する事を快く承知してくれました。
     指揮者のオロスコ=エストラーダも野外で続行してくれるそうです。
     感謝します」

    ・・・ちょっと待て、聞き捨てならぬ失礼な発言じゃないか、これ!!!

    オーケストラは良いですよ、屋根の下で濡れる事はないんだから。
    ただ、こんな悪天候で、寒くて小雨の時に
    ビニールまで被って、コンサートを聴いている聴衆にこそ
    主催者は感謝すべきじゃないの?

    ウィーン・フィルさまさまが演奏なさってくれるから感謝で
    聴衆は畏まって、雨の中をウィーン・フィルさまさまの演奏を聞けってか??

    ちょっと私の怒りが爆発していたので
    冷静に演奏を聴いていられるような精神状態ではなかったのだが

    ホールだったらともかくとして
    ウィーン・フィルって、別にものすごく巧いオーケストラじゃないじゃん。
    (これ言うと、夜道でぐっさりかも・・・)

    アンサンブル揃ってないし
    アインザッツが時々ずれるし
    楽器のソロだって
    他のオーケストラに比べて
    名人がうおおおおおっ、というソロを聴かせてくれるワケでもないし。

    唯一、第2楽章の最後のあたりの
    弦楽の室内楽的な部分は、さすがに美しかったが。

    22時から雨とか言った(とブッフビンダーが主張していた)予報官は
    無能だったらしい(断言しちゃう)

    最終楽章の途中から大雨になった。

    ビニールは被っているから濡れはしないけれど
    ビニールに当たる雨音が、かなりスゴイ。

    雨のバラバラバラという音と
    ビニールのレインコートのガサガサ音を背景に
    クラシック音楽を聴くのが趣味という人が居たら
    お目にかかりたいものだ。

    グラーフェネックの最終日のコンサートは
    そんなワケで、最悪も最悪
    これで良く聴衆が我慢するな、とマジに思った。
    (私は怒り心頭に発していたが)

    こういう事をされるんだったら
    来年からもう行かないよ?(本気)

    ここ数日、車で到着する時に
    地元の人たちが
    「騒音反対、車の音反対」というデモをやっている。
    周囲何キロにもわたって、お城以外に建物は何もないし
    このお城でコンサートをする事による
    低地オーストリア州への経済効果は非常に大きいと思うのだが
    (お城内部には、地元のワインを集めたヴィノテークもある)

    騒音(どこで聴こえるの?)反対の人たちは
    この音楽祭がなくなった事による
    低地オーストリア州の税収の減少については
    自分たちでそれを補う代案はあるんでしょうね?
    (ほとんど八つ当たり・・・)

    あまりのひどい状況でのコンサートと
    雨とビニールの雑音で意識を持っていかれたにしても
    正直、演奏の水準として満足の行くものではなかったし
    あんな大雨と寒さの中で
    音楽を聴かされる、というのは

    全 く 楽 し く な い ! ! ! !

    とりあえず、今年のグラーフェネックは終わった。
    週末ごとに往復140キロのドライブをする必要もなくなった。

    来年、行くかどうかは未定。
    今日はブッフビンダーの発言に
    かなり怒っているので
    冷静になれない私に
    どうぞ1クリックをお恵み下さい。


    ムジカエテルナ + クルレンツィス「ドン・ジョバンニ」

    0
      Wiener Konzerthaus Großer Saal 2019年9月7日 19時〜22時35分

      musicAeterna Orchestra
      musicAeterna Choir
      Dimitris Tiliakos (Don Giovanni)
      Nadezhda Pavlova (Donna Anna)
      Kenneth Tarver (Don Ottavio)
      Federica Lombardi (Donna Elvira)
      Kyle Ketelson (Leporello)
      Robert Lloyd (Il Commendatore)
      Ruben Drole (Masetto)
      Christina Gansch (Zerlina)
      演出 Nina Vorobyova
      衣装 Svetlana Grischenkova
      照明 Alexey Khoroshev
      指揮 Teodor Currentzis

      Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
       Don Giobanni ossia il dissoluto punito
        Dramma giocoso in due atti K 527 (1787)
        Libretto: Lorenzo Da Ponte

      クルレンツィスの出世作というか
      ともかく、この指揮者、モーツァルトの
      ダ・ポンテ三部作のオペラの録音で
      華やかにクラシック音楽の世界に
      異端児として登場した過去があるので
      (今だって充分に異端児だけど)

      コンツェルトハウスで、ダ・ポンテ三部作を
      コンサート式(ちょっとだけ演出あり)で演奏するとなった時
      実はむちゃくちゃ迷ったのである。

      クルレンツィスのチクルスは
      チクルスが出来た時から購入しているのだが
      チクルスにはコジ・ファン・トゥッテが含まれていて
      (うわ、長いし、ストーリーなんかヘンなので苦手)
      フィガロの結婚は
      ロイヤル・コンセルトヘボウと重なった。
      (これはロイヤル・コンセルトヘボウにタベア・ツィンマーマンが勝った。
       もともとチケット持ってたし)

      ドン・ジョバンニも
      グラーフェネックのヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管弦楽団とバッティングしたのだが
      チケットのサイトを見てみたら
      まだ30ユーロ以下の席が残っていたので、即、1枚確保。
      (高い席しか残ってなかったら買ってません・・・超貧乏だから。
       ヘレヴェッヘは再販に出したが、売れていなければ丸損。まぁ仕方ない・・・)

      読者諸氏はご存知の通り
      モーツァルトは苦手で(条件反射的に寝落ちする)
      オペラが苦手で(長いしストーリーがだいたいヘン)
      よって、聴き込んでいないし
      細かい部分の詳しい事は
      ぜ〜んぜん書けませんので悪しからず(予防線)

      ドン・ジョバンニは
      実は何回か舞台で観た事はある。
      このブログ(パート3)の前の
      もともとのさるさる日記の時代か
      次のパート2の時代に
      (記録はすべて消えました・・・(涙))
      ウィーン劇場で何回か
      オペラ座で何回か
      そして忘れもしない
      とんでもないスペクタクルな演出だった
      クロースターノイブルクの夏のオペラ祭で2回。
      (あまりに素晴らしい演出だったので
       1回では物足りなくなって2回行った。
       当時は若かったので、気力も体力もあったのだ)

      ムジカ・エテルナのメンバーは
      いつもの通り、立っての演奏だが
      今回は椅子が用意されている。
      あ〜、長いオペラだから座って演奏するのか、と思ったら
      演奏する時には、やっぱり立ったまま。

      途中のレチタティーヴォの時だけ
      ちょっと座ったりしている。

      そのレチタティーヴォが奇妙で
      ピアノフォルテなんだけど
      こんなレチタティーヴォ、どの上演でも聞いた事ないぞ。

      オーケストラも、まぁ古楽器はともかくとして
      ピアノフォルテの横にはテオルベが・・・
      テオルベなんてオーケストラにあったんかい?(いや、普通はない)

      オーケストラが舞台に登場した後
      舞台も客席も真っ暗になる。

      真っ暗な中を指揮者が出て来て
      音楽が奏される、という趣向だったと思うのだが

      なにせ、こういう演目に来ているのは
      熱狂的なクルレンツィス・ファンばかりなので
      真っ暗な中でも指揮者が出てくると
      熱狂的な拍手が起こってしまうのは、まぁ、仕方ない。
      ・・・無粋だとは思うんですけどね(苦笑)

      オルガンの前に大きなディスプレイがあって
      ドイツ語の翻訳が出る。
      私の超貧乏天井桟敷席からだと
      視力が2くらいないと見えないので
      私はもっぱらオペラ・グラス(望遠鏡)でセリフを読んでいた。

      ドン・ジョバンニの音楽って・・・(絶句)
      あのあのあの
      オペラ座とかウィーン劇場で聴いたのと違う。
      レチタティーヴォが違うだけじゃなくて
      時々、絶対に普通に入って来ない音が混ざる。

      その分、むちゃくちゃドラマチック。
      クルレンツィスは、時々指揮台を降りてしまって
      オーケストラのプレイヤーや歌手のところまで
      出張して(笑)振ってる。

      歌手の衣装は、全員、黒。
      ドン・ジョバンニには赤のポケット・チーフ。
      (レポレロと役割交換時に、これをレポレロの胸に差し込む)

      見た目の事を言ってはいけないのは承知の上だが
      ドン・ジョバンニとレポレロは
      見た目は、そこら辺で朝からビール飲んでるおっちゃんに見えるし
      ドン・オッターヴィオは細身のネクタイしめて背広なので
      おどおどしたサラリーマンにしか見えない。
      マゼットも田舎のお兄ちゃんにしか見えないけれど
      これはまぁ、もともとが農夫の役だから
      垢抜けない風貌が合っている。

      見た目が優秀だったのは女性陣である。
      ドンナ・エルヴィーラは大柄で黒いロング・ドレスに気品があって
      ドンナ・アンナも黒のドレスだが、スタイル良くてキュートだし
      ツェルリーナの膝丈ワンピースの可愛さったら
      マゼットでなくても惚れちゃうわ(ドン・ジョバンニも口説いてたしね(笑))

      見た目はともかくとして
      歌は、きゃあああああああ!!!!! と叫びたくなる素晴らしさ。
      何が素晴らしいかと言って
      張り上げた声が出る、とかいうんじゃなくて(出てるけど)
      歌手とオーケストラが作り出す
      表現力の発露が凄まじいのである。

      オペラ座ではなくて
      コンツェルトハウスだから
      音響の良さもあるんだけど
      それでも、あのホールで
      あれだけピアニッシモからフォルティッシモまで
      ダイナミック・レンジの信じられない振幅で
      しかもピアニッシモの声が
      透き通って天井桟敷まで、ばっちり届くのだ。

      さらに
      モーツァルトの楽譜にはそういうのないよね、という
      装飾と超絶技巧が惜しみなく披露されて
      (いや〜、もう、腰が抜けます)

      それが、装飾や超絶技巧を聴かせる事が目的ではなくて
      オペラのドラマチックなストーリーとドラマに
      見事にハマっている。

      ピチカートだけのアリアの時には
      バイオリンとビオラだけじゃなく
      チェロまで、ウクレレ抱えで弾いていたのには
      かなり笑えたし

      ツェルリーナの薬屋のアリアでは
      ツェルリーナがチェロの首席2人の後ろで
      チェリストをど突いたり(笑)絡まったりしていて
      それでもめげずにチェロを演奏していた首席も偉い(爆笑)

      限られた空間での演出もよく考えられていたし
      音楽的には、もう、本当に今まで聴いた事がない、という
      新鮮な驚きに満ちていて
      長いオペラなのに、寝落ちもせずに聴いてしまった。

      ドン・ジョバンニの地獄落ちの後
      ドン・ジョバンニも騎士団管区長も、指揮者も
      小走りで退場して

      あれ? これ、じゃぁ、ウィーン版なんだわ、と
      観客から、ちょっと戸惑った拍手が起こる。
      (ウィーンの国立オペラ座では、プラハ版の演出なのだ)
      客席もちょっと明るくなったので
      そうか、ウィーン版か、と納得した聴衆が
      大歓声とブラボー・コール。

      オペラのように
      歌手が一人一人出てきて挨拶して
      最後にクルレンツィスが登場(客席大歓声、一部スタンディング・オベーション)

      長いオペラなので、帰る人もかなり居たのだが
      舞台上に全員揃ったところで

      プラハ版の最後の全員のアンサンブルのナンバーが・・・
      きゃ〜〜〜っ、ここで、この曲を演奏するかっ!!!

      急いで帰らなくて良かった・・・・(冷汗)

      こんなのルール違反だわ、とか思うけれど
      確かに、いったんウィーン版で地獄落ちで終わって
      すべてが終了した後で
      あのアンサンブルの最終シーンが歌われると
      不自然さはないし
      続けて演奏される時に有り勝ちな冗長性もなくなる。

      クルレンツィスの追い掛けをやって来て
      最近は、ちょっと、その異端児的なところが
      鼻について来た、というのが実はあったのだけれど

      やっぱりクルレンツィスって・・・スゴイわ。
      奇抜な事をやっている、というのはあるのだけれど
      その奇抜さが、まだ新鮮だし
      ストンと納得できるだけの説得力がある。

      さて、今シーズンのクルレンツィスのチクルスは既に確保済み。
      2020年にはベートーベンの交響曲全曲の演奏もあるし
      これから、クルレンツィスがどうなって行くのか
      (あるいは、自分のクルレンツィスに対する印象がどう変わって行くか)
      ちょっとワクワクしている私に
      どうぞ1クリックをお恵み下さい。


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