Kasino am Schwarzenbergplatz (Volksoper)
2019年4月13日 20時〜22時20分
Thomas Adès (*1971)
Powder Her Face
Kammeroper in zwei Akten
Libretto von Philip Hensher
指揮 Wolfram-Maria Märtig
演出 Martin G. Berger
舞台 Sarah/Katharina Karl
衣装 Alexander Djurkov Hotter
ビデオ Anna Hirschmann
振付 Florian Hurtler
ドラマツルギー Magdalena Hoisbauer
Die Herzogin: Ursula Pfitzner
Zimmermädchen, Vertraute, Kellnerin, Geliebte,
Gafferin, Gesellschaftsjournalistin: Morgane Heyse
Elektriker, Salonlöwe, Kellner, Gaffer, Lieferjunge: David Sitka
Hotelmanager, der Herzog, Menschen im Hotel, Richter: Bart Driessen
Statisterie: Robin Koppensteiner, Bernadette Leitner,
Anna Barbara Banatto, Irina Mocnik, Katharina Schmirl
Orchester der Volksoper Wien
コンサート・ミストレス Vesna Stanković, Anne Harvey-Nagl
第二バイオリン Ursula Greif, Natalija Isakovic
ビオラ Aurore Nozomi Cany, Peter Sagaischek
チェロ Roland Lindenthal
コントラバス Gerhard Muthspiel
クラリネット・サクソフォン Barbara Brunner, Harald Haslinger, Hadi Nabavi
ホルン Raphael Stöffelmayr, Michael Stückler
トランペット Lorenz Raab, Michael Schwaighofer, Daniel Neumann,
Raphael Pouget
トロンボーン Christian Masser, Christian Eisenhut
パーカッション Manfred Redner, Lucal Salaun
ハープ Gabriela Mossyrsch
アコーデオン Ingrid Eder
ピアノ Chie Ishimoto
まずは一言。
スゴイです!!!!!
20代前半の若さで、こういう曲を作曲してしまう
トマス・アデスもスゴイが
今回の出演者、音楽、演出、舞台
ほとんどパーフェクトな出来の素晴らしいオペラ。
ショッキングでエロチックで直裁的で
ダブル・モラル、暴力、セクシャリティ
そして孤独と人生の破滅まで、まぁ、見事にキマって
最後なんか私、公爵夫人の孤独感に打ちのめされて
モロに感情移入してたもんなぁ・・・
会場はフォルクス・オーパーの建物ではなく
楽友協会とコンツェルトハウスの真ん中あたりにある
シュヴァルツェンベルク広場に面したカジノ。
もともとはフランツ・ヨゼフ皇帝の末の弟の
ルードヴィッヒ・ヴィクターの住居として作られた
ハインリッヒ・フォン・フェアステルの建築。
1910年にルードヴィッヒ・ヴィクターが
この建物を軍隊学術及びカジノ協会に寄贈した事による。
収容人数最高250人の小ぶりなホールで
舞台がコの字型になっていて
その中にオーケストラ(メンバー16名)が入る。
今日が初演なので批評家や関係者も多いのだろうが
現代オペラで、しかもチケット自由席で42ユーロという高めの設定なのに
会場にはギッチリと人が入っていて狭い。
(最初は多少余裕があったのだが、ギリギリに入って来た男性に割り込まれ
肩も足もくっつきそうで・・・)
この作品は実際にあったアーガイル公11代イアン・ダグラス・キャンベルと
その妻のマーガレット・キャンベル(ウィッガム)の離婚裁判と
そのスキャンダルに基づく作品。
歌手は4人(テノール、バス、ソプラノ、コロラチューラ・ソプラノ)
うち、ソプラノは最初から最後まで公爵夫人を演じるが
あとの3人は1人で何役も演じる。
最初の絡みのシーンからして
異様にリアルな動きをしていて
でもまた、それが意外にキレイでモダン・ダンスみたいだったので
これは俳優さんかバレエ・ダンサーだろうか、と思っていたら
絡んでいる4人が歌手だったのでビックリした。
4人とも、むちゃくちゃ優秀。
英語の発音(クィーンズ・イングリッシュだ!)も美しく
(後ろの壁にドイツ語の訳が出る・・・良かった(ほっ))
身体が柔らかく、バネがあって
激しい動きも美しくこなし
その上、演技が巧い。
主人公で唯一最初から最後まで変わらない公爵夫人の
ウルズラ・プフィッツナーが最高!!!
役は変わらないのだが
1930年代の若い頃から1990年の晩年まで
シーンが変わるごとに演じ分けなければならず
スタイルも衣装も、その時々の雰囲気も全く違うのを
見事に演じ分けていて
同一人物でありながら、絶頂の時と破滅の時の違いが凄い。
「役になりきる」ってこういう事なのか、と思わせる。
登場人物が憑依しているみたい。
(だから、カーテン・コールで見せた輝く笑顔が
舞台での役柄と全く違うので、これもビックリした。チャーミングだった。)
第一幕は・・・
あ〜、すごいハード・コア・・・
まさに、そのままズバリというか・・・
性欲の塊りみたいにエネルギッシュで
生命力を撒き散らす公爵夫人は
みだら、というよりは
満たされないものをセッ○スで満たそうとしている
涙ぐましいキャラクターという印象。
金でホテルのボーイを買うとか
あ〜、金があったら私も(あっ、いやいやいやいや 汗)
ただ、金で買ったボーイの最後のセリフがかなりキツイ。
「私を知ってるの?」というのに対し
「この間の4月も全く同じでしたね」って
セッ○スしているのに、この、何にも繋がってない感に
めちゃくちゃゾクゾクした。
これじゃ、公爵夫人も満たされない孤独感に悩むでしょう、うん。
この第一幕、来ている男性の90%は
間違いなく○ってただろうなぁ。
お気の毒と言えばお気の毒で
あ〜、女性で良かった、と本気で考えたもん。
私だって、あんなにあからさまに
他人の性欲を見せつけられると、かなりドキドキする。
面白いのは、時代や状況に沿って
アデスが繰り出す音楽の引用。
もちろん、ワルツやタンゴ、ジャズとか
当時世間的に流行したポピュラー音楽のメロディもあるが
途中で(ホテルの女性スタッフの場面で)
ツェルビネッタまで登場するのには、ちょっと笑った。
主人公の公爵夫人の演技の巧さに加えて
もう1人のコロラチューラ・ソプラノの様々な役柄も素晴らしい。
小柄な歌手なんだけど
(舞台外で一度会ってるので、
私と同じくらいか私より背が低いのは知っている)
舞台で見ると、存在感あって大きく見える。
コロラチューラの安定ぶりが素晴らしいし
動きや演技がむちゃくちゃ巧くて、目と耳を奪う。
建物の壁に映されるビデオや照明の工夫も
この作品の重要なポイントになっている。
雰囲気に合っていて、空間の広がりが出来るので
小さな舞台で小さな劇場というのを、すっかり忘れてしまう。
テノールも良かったけれど
バスの声も素晴らしかったなぁ。
公爵役や裁判官役など、堂々としていて
それぞれの役のキャラクラーの割り振りも出来ていて魅力的。
第二部の裁判のシーンでは
ライブ・ビデオを使ったシーンもあり
これがちょっと面白い工夫がされている。
よく観光地で、パネルの顔のところが開いていて
そこに顔入れて、お姫様だかお殿様の写真を撮るじゃないですか。
あれの応用版で、かなり面白かった。
最終シーンは、晩年で、お金もなくなって
住居を追い出されるシーンだが
このシーンの公爵夫人の孤独感の表出って
本当に心にジンジン突き刺さってくる。
(自分に模してるワケではありません、というか、あるかも・・・)
奔放な、人並み外れた性欲で
人生を狂わせた女の末路・・・と言っても良いのだろうが
ただ、それだけで片付けられるものではない。
資本主義、金、孤独感、疎外感
上流階級のダブル・モラルや
抑制されて来た女性のセクシャリティなど
様々な問題を抱えながら
そして、その全体を、遊びとして
ちょっと斜めな視線からからかい倒しているような
トマス・アデスの音楽とで
複雑な世界を作り出している。
私ももう1回観に行く予定だが
ウィーン在住の方、チャンスがあれば是非ご覧下さい。
久々のヒット作だと思う。
幕間の後で、前の2列が舞台の関係でなくなって
全員、2列後に移動するので、それだけご注意を。
歌手や役者の人たちが観客席にも入っているので
通路側の人は驚かないように。
それから、子供は絶対に連れて行かない事。
(始まる前に私の後ろで
男の子が「オペラを観に行くって行ったら
学校の先生が褒めてくれた」とお父さんに言っていたが
お父さん、何考えてるの?とギョッとした(笑))
いやいや、久し振りに興奮したぞ(こらこらこら)
とは言え、夫もいないし
男を買うだけの気力も体力も、資金もない私に
どうぞ1クリックをお恵み下さい。
2019年4月13日 20時〜22時20分
Thomas Adès (*1971)
Powder Her Face
Kammeroper in zwei Akten
Libretto von Philip Hensher
指揮 Wolfram-Maria Märtig
演出 Martin G. Berger
舞台 Sarah/Katharina Karl
衣装 Alexander Djurkov Hotter
ビデオ Anna Hirschmann
振付 Florian Hurtler
ドラマツルギー Magdalena Hoisbauer
Die Herzogin: Ursula Pfitzner
Zimmermädchen, Vertraute, Kellnerin, Geliebte,
Gafferin, Gesellschaftsjournalistin: Morgane Heyse
Elektriker, Salonlöwe, Kellner, Gaffer, Lieferjunge: David Sitka
Hotelmanager, der Herzog, Menschen im Hotel, Richter: Bart Driessen
Statisterie: Robin Koppensteiner, Bernadette Leitner,
Anna Barbara Banatto, Irina Mocnik, Katharina Schmirl
Orchester der Volksoper Wien
コンサート・ミストレス Vesna Stanković, Anne Harvey-Nagl
第二バイオリン Ursula Greif, Natalija Isakovic
ビオラ Aurore Nozomi Cany, Peter Sagaischek
チェロ Roland Lindenthal
コントラバス Gerhard Muthspiel
クラリネット・サクソフォン Barbara Brunner, Harald Haslinger, Hadi Nabavi
ホルン Raphael Stöffelmayr, Michael Stückler
トランペット Lorenz Raab, Michael Schwaighofer, Daniel Neumann,
Raphael Pouget
トロンボーン Christian Masser, Christian Eisenhut
パーカッション Manfred Redner, Lucal Salaun
ハープ Gabriela Mossyrsch
アコーデオン Ingrid Eder
ピアノ Chie Ishimoto
まずは一言。
スゴイです!!!!!
20代前半の若さで、こういう曲を作曲してしまう
トマス・アデスもスゴイが
今回の出演者、音楽、演出、舞台
ほとんどパーフェクトな出来の素晴らしいオペラ。
ショッキングでエロチックで直裁的で
ダブル・モラル、暴力、セクシャリティ
そして孤独と人生の破滅まで、まぁ、見事にキマって
最後なんか私、公爵夫人の孤独感に打ちのめされて
モロに感情移入してたもんなぁ・・・
会場はフォルクス・オーパーの建物ではなく
楽友協会とコンツェルトハウスの真ん中あたりにある
シュヴァルツェンベルク広場に面したカジノ。
もともとはフランツ・ヨゼフ皇帝の末の弟の
ルードヴィッヒ・ヴィクターの住居として作られた
ハインリッヒ・フォン・フェアステルの建築。
1910年にルードヴィッヒ・ヴィクターが
この建物を軍隊学術及びカジノ協会に寄贈した事による。
収容人数最高250人の小ぶりなホールで
舞台がコの字型になっていて
その中にオーケストラ(メンバー16名)が入る。
今日が初演なので批評家や関係者も多いのだろうが
現代オペラで、しかもチケット自由席で42ユーロという高めの設定なのに
会場にはギッチリと人が入っていて狭い。
(最初は多少余裕があったのだが、ギリギリに入って来た男性に割り込まれ
肩も足もくっつきそうで・・・)
この作品は実際にあったアーガイル公11代イアン・ダグラス・キャンベルと
その妻のマーガレット・キャンベル(ウィッガム)の離婚裁判と
そのスキャンダルに基づく作品。
歌手は4人(テノール、バス、ソプラノ、コロラチューラ・ソプラノ)
うち、ソプラノは最初から最後まで公爵夫人を演じるが
あとの3人は1人で何役も演じる。
最初の絡みのシーンからして
異様にリアルな動きをしていて
でもまた、それが意外にキレイでモダン・ダンスみたいだったので
これは俳優さんかバレエ・ダンサーだろうか、と思っていたら
絡んでいる4人が歌手だったのでビックリした。
4人とも、むちゃくちゃ優秀。
英語の発音(クィーンズ・イングリッシュだ!)も美しく
(後ろの壁にドイツ語の訳が出る・・・良かった(ほっ))
身体が柔らかく、バネがあって
激しい動きも美しくこなし
その上、演技が巧い。
主人公で唯一最初から最後まで変わらない公爵夫人の
ウルズラ・プフィッツナーが最高!!!
役は変わらないのだが
1930年代の若い頃から1990年の晩年まで
シーンが変わるごとに演じ分けなければならず
スタイルも衣装も、その時々の雰囲気も全く違うのを
見事に演じ分けていて
同一人物でありながら、絶頂の時と破滅の時の違いが凄い。
「役になりきる」ってこういう事なのか、と思わせる。
登場人物が憑依しているみたい。
(だから、カーテン・コールで見せた輝く笑顔が
舞台での役柄と全く違うので、これもビックリした。チャーミングだった。)
第一幕は・・・
あ〜、すごいハード・コア・・・
まさに、そのままズバリというか・・・
性欲の塊りみたいにエネルギッシュで
生命力を撒き散らす公爵夫人は
みだら、というよりは
満たされないものをセッ○スで満たそうとしている
涙ぐましいキャラクターという印象。
金でホテルのボーイを買うとか
あ〜、金があったら私も(あっ、いやいやいやいや 汗)
ただ、金で買ったボーイの最後のセリフがかなりキツイ。
「私を知ってるの?」というのに対し
「この間の4月も全く同じでしたね」って
セッ○スしているのに、この、何にも繋がってない感に
めちゃくちゃゾクゾクした。
これじゃ、公爵夫人も満たされない孤独感に悩むでしょう、うん。
この第一幕、来ている男性の90%は
間違いなく○ってただろうなぁ。
お気の毒と言えばお気の毒で
あ〜、女性で良かった、と本気で考えたもん。
私だって、あんなにあからさまに
他人の性欲を見せつけられると、かなりドキドキする。
面白いのは、時代や状況に沿って
アデスが繰り出す音楽の引用。
もちろん、ワルツやタンゴ、ジャズとか
当時世間的に流行したポピュラー音楽のメロディもあるが
途中で(ホテルの女性スタッフの場面で)
ツェルビネッタまで登場するのには、ちょっと笑った。
主人公の公爵夫人の演技の巧さに加えて
もう1人のコロラチューラ・ソプラノの様々な役柄も素晴らしい。
小柄な歌手なんだけど
(舞台外で一度会ってるので、
私と同じくらいか私より背が低いのは知っている)
舞台で見ると、存在感あって大きく見える。
コロラチューラの安定ぶりが素晴らしいし
動きや演技がむちゃくちゃ巧くて、目と耳を奪う。
建物の壁に映されるビデオや照明の工夫も
この作品の重要なポイントになっている。
雰囲気に合っていて、空間の広がりが出来るので
小さな舞台で小さな劇場というのを、すっかり忘れてしまう。
テノールも良かったけれど
バスの声も素晴らしかったなぁ。
公爵役や裁判官役など、堂々としていて
それぞれの役のキャラクラーの割り振りも出来ていて魅力的。
第二部の裁判のシーンでは
ライブ・ビデオを使ったシーンもあり
これがちょっと面白い工夫がされている。
よく観光地で、パネルの顔のところが開いていて
そこに顔入れて、お姫様だかお殿様の写真を撮るじゃないですか。
あれの応用版で、かなり面白かった。
最終シーンは、晩年で、お金もなくなって
住居を追い出されるシーンだが
このシーンの公爵夫人の孤独感の表出って
本当に心にジンジン突き刺さってくる。
(自分に模してるワケではありません、というか、あるかも・・・)
奔放な、人並み外れた性欲で
人生を狂わせた女の末路・・・と言っても良いのだろうが
ただ、それだけで片付けられるものではない。
資本主義、金、孤独感、疎外感
上流階級のダブル・モラルや
抑制されて来た女性のセクシャリティなど
様々な問題を抱えながら
そして、その全体を、遊びとして
ちょっと斜めな視線からからかい倒しているような
トマス・アデスの音楽とで
複雑な世界を作り出している。
私ももう1回観に行く予定だが
ウィーン在住の方、チャンスがあれば是非ご覧下さい。
久々のヒット作だと思う。
幕間の後で、前の2列が舞台の関係でなくなって
全員、2列後に移動するので、それだけご注意を。
歌手や役者の人たちが観客席にも入っているので
通路側の人は驚かないように。
それから、子供は絶対に連れて行かない事。
(始まる前に私の後ろで
男の子が「オペラを観に行くって行ったら
学校の先生が褒めてくれた」とお父さんに言っていたが
お父さん、何考えてるの?とギョッとした(笑))
いやいや、久し振りに興奮したぞ(こらこらこら)
とは言え、夫もいないし
男を買うだけの気力も体力も、資金もない私に
どうぞ1クリックをお恵み下さい。